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スーパーフォーミュラ、新アプリ「SFgo」などのネクスト・ゴー施策発表 東京大学との共同研究も
2022年1月31日 21:57
- 2022年1月31日 開催
日本のフォーミュラカーレースの最高峰「全日本スーパーフォーミュラ選手権」の運営を行なっているJRP(日本レースプロモーション)は1月31日に記者会見を開催した。会見では同社が「SUPER FORMULA NEXT 50」(スーパーフォーミュラ・ネクスト・ゴー)として実施しているスーパーフォーミュラ活性化プロジェクトに関しての進展状況や、2022年のスーパーフォーミュラの開催概要などを明らかにした。
2022年のスーパーフォーミュラは、7大会・10戦という形で開催され、1大会で2戦行なわれる大会を3大会実施する形となる。また、レースはすべて14時30分にスタートする形となり、シリーズとしてスケジュールに統一感を持たせる。従来はQ3まで実施していた予選はQ2までの開催となり、1大会・2戦の場合は土日それぞれに予選とレースが行なわれる。
デジタルトランスフォーメーションの一環としては、「SFgo」(エスエフゴー)と呼ばれるAndroid/iOS向けのスマートフォンアプリが導入され、2022年はテスト期間として開発サポーターによる試験導入が行なわれる。正式導入は2023年。
会見にはスキンヘッドにタンクトップ、そして鍛えた体というプロレスラー風の男性が参入し、スーパーフォーミュラとの新しい取り組みに関する発表を行なった。
50年後にも持続成長しているスーパーフォーミュラを目指してSF NEXT50の取り組みを推進
日本レースプロモーション 代表取締役社長 上野禎久氏は「50年後でも持続成長が可能になるための施策というコンセプトでSF Next 50プロジェクトを始めた。その目的は3つあり、ドライバーファーストを実現すること、そしてモビリティとエンタテイメントとの両面での技術開発、そしてファンのみなさまに向けてデジタルシフトを加速していくこと」と述べ、2021年に発表した「SF Next 50」のコンセプトを元にして、よりドライバーにとって参戦してうれしいレース、そしてカーボンニュートラルをはじめとした自動車業界の課題に向けた技術開発を行なうレース、そしてさまざまな形でDX(デジタルトランスフォーメーション)を行なっていくことで、ファンが楽しめるコンテンツをデジタルで提供していきたいと強調した。
その上で、「オートサロンでは各自動車メーカーのトップの方々がメッセージのバトンをつないでいくというシーンを見ることができた。モータースポーツ業界もそうした動きに貢献していきたい」と述べ、しっかりとした感染対策を引き続き続けながらリアルイベントを開催していくことなどを通じて、モータースポーツとして自動車メーカーがさまざまな課題を解決していくことに役立っていきたいと強調した。
ホンダ 三部社長、2022年モータースポーツ参戦計画発表 HRCブランドの市販車計画も
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1380780.html
JRPが運営するスーパーフォーミュラだが、今シーズンの開催概要について上野氏は、3つの大会が2レース制となることで7大会、10戦となり、第3戦と第4戦に関しては2&4として2輪レースとの併催になると発表した。
スーパーフォーミュラ 2022年開催概要
Round | 日程 | 開催サーキット | レース距離 | 決勝スタート時刻 |
---|---|---|---|---|
第1戦 | 4月9日(土) | 富士スピードウェイ | 187.083km | 14時30分 |
第2戦 | 4月10日(日) | 富士スピードウェイ | 187.083km | 14時30分 |
第3戦 | 4月23日(土)・24日(日) | 鈴鹿サーキット | 180.017km | 14時30分 |
第4戦 | 5月21日(土)・22日(日) | オートポリス | 196.308km | 14時30分 |
第5戦 | 6月18日(土)・19日(日) | スポーツランドSUGO | 190.058km | 14時30分 |
第6戦 | 7月16日(土)・17日(日) | 富士スピードウェイ | 187.083km | 14時30分 |
第7戦 | 8月20日(土) | モビリティリゾートもてぎ | 177.637km | 14時30分 |
第8戦 | 8月21日(日) | モビリティリゾートもてぎ | 177.637km | 14時30分 |
第9戦 | 10月29日(土) | 鈴鹿サーキット | 180.017km | 14時30分 |
第10戦 | 10月30日(日) | 鈴鹿サーキット | 180.017km | 14時30分 |
上野氏は「いずれもスタート時間は14時30分となる。プロスポーツの興行として開演時間も分からないままお客さまにチケットを買っていただくというのは課題があると長年考えてきた」と述べ、すべてのレースを14時30分スタートにすると明らかにした。
そして2レース時には金曜日の占有走行が復活し、予選に関してはノックアウト予選を継続するが、従来はQ3まで行なわれていたのをQ2までとし、1大会2戦が3大会あることで3レース分増える。しかし、使用するタイヤの本数を制限することでトータルではチームが負担するコストは2021年とトントンになる程度だと説明した。
なお、従来の1大会2レースでは1レースあたりのポイントが半分になる(レースによってはボーナス付き)となっていたが、2022年の1大会2レースではいずれのレースもフルポイントで開催される。また、2020年、2021年とコロナ禍で入国制限などが課せられていた影響を考慮して有効ポイント制となっていたが、今シーズンは有効ポイント制を廃止すると明らかにした。
2023年に正式導入する「SFgo」の実証実験を行ない、今シーズンは300名の開発パートナーを募集
引き続き上野氏は「新しいアプリとしてSFgoを導入する。これによりドライバーごとの車両映像を見ることができ、SFに関わるさまざまなコンテンツを見ることができるようにする」と述べ、スーパーフォーミュラのDXの一環として新しいアプリとしてSFgo(エスエフゴー)を導入することを明らかにした。
ただし、このSFgoは2023年シーズンから正式に導入される計画で、2022年は開発期間と位置付けられた試験導入の年となる。このため、この開発に協力してくれるファンを募集する計画で、最大300名のファンを「SFgo開発サポーター」として募集する。募集は2022年1月31日~2月28日の約1か月にわたって行なわれる計画で、300名を超えた場合には抽選となる。抽選結果は3月中旬を予定しており、参加費として5000円(年間費用)がかかるとなっている。
なお、JRPのWebサイトを見ると、必須機器として通信環境にある(つまりは携帯電話回線やWi-Fiなどで通信できる状態にある)iOS14以上のiPhoneか、Android 10(つまり10、11、12)のAndroidスマートフォンを持っている必要があると書かれているので、アプリはiOS版とAndroid版が用意されているということになる。申し込みはスーパーフォーミュラの公式サイトから行なうことができる。
新デジタルプラットフォーム「SFgo開発サポーター」300名を募集開始
https://superformula.net/sf2/headline/33770
また、スーパーフォーミュラの公式YouTubeにも1月31日よりプレミアム会員の制度が導入される。エントリープランとプレミアムプランが用意されており、予選/レースLive中継を見ることができるエントリー会員は月額90円、そしてフルレースアーカイブ、F2000時代以来の過去シーズンのアーカイブや各種企画コンテンツを見ることができるプレミアム会員は月額490円と、安価な価格に設定されていることが大きな特徴となる。
レース開催中のグランドスタンド裏では、SF NEXT50 Village、Mobility Kids Park、Carbon Neutral Squareなどの取り組みを今シーズン行なっていく計画で、そこに参入するパートナー企業が現在募集中であるほか、新しく応援グッズ付きのチームファンシートを設定する計画があることなどが明らかにされた。サーキットに来るファンを増やすという地道にして最も重要な活動も行なっていくと説明した。
ディフェンディングチャンピオンとチームタイトルのドライバー3人が参加し、新しいアプリなどへの期待感を表明
会見後、今シーズンのスーパーフォーミュラの取り組みなどに関して座談会が行なわれた。ドライバーとして参加したのは2021年のスーパーフォーミュラチャンピオンで、今シーズンはディフェンディングチャンピオンとしてカーナンバー1をドライブする野尻智紀選手、そしてチームチャンピオンになるチーム・インパルからは関口雄飛選手と平川亮選手が参加した。平川選手は先日ポルトガルで行なわれたTGR WECチームのプライベートテストに参加してから帰国して、現在は待機期間中ということで、リモートでの参加となった。
野尻選手は「選手としてはもっと人気が出てほしいと思っている。チャンピオンになって取材されることも増えているが、もっともっとレースの知名度が上がってほしいので、SF NEXT50という取り組みに積極的に協力していきたい」と述べた。
関口雄飛選手は「今、子供たちにカートを教えたりしているが、子供たちにレーシングドライバーという職業は素晴らしいよと言えるようにモータースポーツの知名度をもっともっと上げていかないといけない。そうしたことをJRPさんが行なっているので全面的に協力していきたい」と述べ、ドライバーとしてもスーパーフォーミュラがもっともっと人気が出るような取り組みをしていきたいと述べた。
平川選手は「新しいアプリの登場などでレースを知らない人にも分かりやすくしてほしい。それにより海外も含めて新しいファンを獲得してもっともっと、スーパーフォーミュラがすごいレースをやっているということを知ってほしい」と述べ、2022年からTGR WECチームに加入したことで、海外を中心に活動することになる平川選手らしい視点でその期待を語ってくれた。
ディープラーニングベースのAIを活用して、マシン、ドライバー、ファンのシンクロ率を数値化する取り組みを東京大学などと共同で行なう
この座談会で注目を集めたのは、謎のスキンヘッドでタンクトップというひと目で目を奪われる風貌の男性。一見するとプロモーションで呼ばれたプロレスラーかという鍛えられた体をお持ちのこの男性、東京大学 大学院 工学系研究科 特任准教授 光吉俊二氏で、わが国の最高学府の中でもトップオブトップの大学院の准教授という研究者なのだ。
光吉氏は東京大学のWebサイトによれば、AIを利用したロボットの自我を持たせるという研究を行なっており、ロボットに人間が持つモラルや共感力をもたらす研究などを行なっているという研究者。
光吉氏によれば以前からマン島TTなどで、AIを利用してバイクの気持ちを表現する研究を行なっており、そのバイクからのCANデータを元に疑似的な整理指標に変換してそれを元に感情を生成するという仕組みで、機械の感情を表現するという研究を行なってきたという。
光吉氏によれば「これは言ってみればエヴァンゲリオンのシンクロ率のようなもので、人間と、マシン、そしてファンのシンクロ率として数値化することができる」と述べ、「逃げちゃだめだ」とか「笑えばいいと思うよ」などのコメントはなかったが将来的には研究を進めてアプリにそうした機能を実装するなどの形で新しいコンテンツとして提供できる可能性があるとした。
JRPの発表によれば、JRP、M-TEC(無限)、東京大学の3社で研究を行なっていき、近い将来メタバースと呼ばれる仮想空間向けのコンテンツとして提供していく。こちらの動向も期待したいところだ。