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ホンダ 三部社長、2022年モータースポーツ参戦計画発表 HRCブランドの市販車計画も

2022年1月14日 公開

HRCブランドを説明する本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏

 本田技研工業は1月14日、本社において記者会見を開催し2022年のモータースポーツ参戦計画を発表した。本田技研工業 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏は、カーボンニュートラルフューエルへの対応など、モータースポーツの世界でも積極的にカーボンニュートラルの取り組みを行なっていくと強調した。

 すでに発表されているとおり、ホンダのモータースポーツ活動は2輪、4輪ともに4月から正式に発足するHRC(株式会社ホンダレーシング)に統合され、モータースポーツ活動はすべて移管される形となる。会見では、2022年からホンダF1のパワーユニットが移管されてレッドブル系の2チーム(レッドブル・レーシング、アルファタウリ)に供給するレッドブル・パワートレインズに対して、HRCがサポートすることが明らかにされた。

モータースポーツでもカーボンニュートラルに取り組んで行くと強調、F1のバッテリー技術はeVTOLに応用

本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏

 会見の冒頭、三部社長が登壇し、ホンダのモータースポーツ活動にかける想いが語られた。「2021年はホンダのモータースポーツ活動に世界中のファンから注目していただいた。F1でのアブダビGPでの劇的な勝利、ホンダとして30年ぶりのドライバーチャンピオン獲得。すでに発表していたとおりホンダはF1活動を終了したが、最高の形で終えることができた。そのほかのカテゴリーでも素晴らしい結果を収めることができ、ファンのみなさまの応援に感謝したい」と述べ、第4期F1参戦最終年をドライバーチャンピオン獲得で終えることができたことに対するファンの応援に感謝した。

2021年はF1ドライバーチャンピオンを獲得

 その上で「ホンダは創業期からレースに参戦してきて、F1参戦を終えてもそのスピリットは変わることはない。創業者が1959年にマン島TTに参戦して以来、さまざまな2輪、4輪のレースに参戦してきた。そうした勝利を積み重ねてきた先人に敬意を払い、チャレンジし続けることを受け継いでいくことが企業の原動力だ。そして世界で勝つためには最高の技術が必要で、その技術を生み出すことが重要だ。その意味で、F1参戦を終えても、モータースポーツの重要性は何1つ変わらない。ホンダにとって重要なのは創業者に始まる勝ちにこだわるレーシングスピリットで、それはわれわれにも伝承されている。モータースポーツはホンダカルチャーの大きな結晶の1つであり、それを忘れずにチャレンジし続けていく」と述べ、F1参戦は終了したが、モータースポーツで技術を開発していくというホンダの姿勢には何1つ変わりがないと語った。

 さらに三部氏は、「昨年4月の会見で、2040年にグローバルの市販車販売比率でFCVやBEVで100%を目指すと明らかにした。こうしたカーボンニュートラルの取り組みはモータースポーツにおいても不可避だが、その取り組み方は市販車とは異なる形になる。例えば、F1参戦で培ったレース用の高出力バッテリはeVTOL(electrical Vertical Take Off and Landing、電動垂直離着陸機)に使っているし、カーボンニュートラル燃料は電動化が難しいモビリティに使っていくことができ、将来のホンダを支えていく技術になると考えている」と述べ、モータースポーツ活動においてもカーボンニュートラルを推進していくという姿勢を明確にした。

F1ではレッドブル・パワートレインズをHRCがサポートする、将来的にはHRCブランドの市販車もある

本田技研工業株式会社 執行職 ブランド・コミュニケーション本部長 渡辺康治氏

 続いて登壇した本田技研工業株式会社 執行職 ブランド・コミュニケーション本部長 渡辺康治氏が、2輪、4輪の2021年の活動の振り返りと2022年の参戦体制の概要などを説明した。

 渡辺氏は2022年シーズンの活動について「モータースポーツ活動はすべてHRCに集約する。本年4月から正式な体制としてスタートするが、4輪はさくら市に、2輪は朝霞市に拠点を置いて活動し、カーボンニュートラルなどの新たなチャレンジをしていく」と述べ、HRC(株式会社ホンダ・レーシング)へのモータースポーツ活動の集約を再び説明した。

HRC

 そしてF1からはブランドとしては撤退するが、引き続きホンダはレッドブルのパートナーとして活動し、レッドブルが設立したパワーユニットサプライヤーの「レッドブル・パワートレインズ」に対してサポートを提供して技術で支えていくと説明した。また、ホンダはHRCをブランドとしても活用していく方針で、今後レース車両の販売だけでなく、HRCブランドの市販車の販売も計画していくと明らかにした。

Formula Dreamの新ロゴとHRSのロゴ
ホンダの若手育成プログラムの階層
レッドブルとの協力関係も続けていく

 さらに、若手育成プログラムを拡充する計画も明らかにし、従来SRS(スズカ・レーシング・スクール)として行なってきた若手ドライバー向けの育成、スカラシッププログラムをHRS(ホンダ・レーシング・スクール)と変更し、育成カテゴリーの拡充も行なっていくことを明らかにした。

 欧州に若手日本人ドライバーを派遣するプログラムに関しては、レッドブルとの関係を強化し、FIA F2、FIA F3、欧州のFIA F4などへドライバーを派遣する。その筆頭となるのが、FIA F2にDAMSチームから参戦する岩佐歩夢選手となる。岩佐選手が加入するDAMSチームは、FIA F2でも強豪チームの1つに位置づけられるチームで、2020年の角田裕毅選手のような活躍が岩佐選手には期待されるところだ。

角田裕毅選手
佐藤琢磨選手
岩佐歩夢選手

 今回の会見ではF1に引き続きアルファタウリから参戦する角田選手、そして岩佐選手からもビデオコメントが寄せられた。また、13年目のインディカーシリーズに移籍したデイル・コイン・レーシングから参戦する佐藤琢磨選手、また2021年のスーパーフォーミュラチャンピオンで、SUPER GTではランキング2位になった野尻智紀選手、同じくSUPER GTでランキング3位になった山本尚貴選手などの国内ドライバーは本社会見に参加し、2022年の両カテゴリー(スーパーフォーミュラ、SUPER GT)でのチャンピオン獲得を目指すコメントを残した。

野尻智紀選手
山本尚貴選手
SUPER GT、スーパーフォーミュラに参戦するドライバー

トヨタの豊田章男社長から渡されたバトンは日産、スバルを経てホンダへ。そして再びへTOYOTA GAZOO Racingへ

 会見の最後に渡辺氏は「スバルさんからメッセージのバトンを受け取った。今シーズンもモータースポーツで熱い戦いを繰り広げていきたいというメッセージとともに、次のTGR(TOYOTA GAZOO Racing)主催のモータースポーツ未来会議にバトンを渡していきたい」と述べた。

 これは、東京オートサロンでのTGRオンライン会見中でトヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏が「日産のみなさん、Zには負けませんから」という発言をしたのが、日産陣営に伝わり、その後行なわれた日産自動車の会見で日産自動車 CEO 内田誠氏が「いえいえい絶対に頑張りますね、われわれも負けないです」と発言したこと。

 そして、その後行なわれたスバルの会見でもSUBARU 常務執行役員 CTO 藤貫哲朗氏が「先ほど日産さんからいただいたバトンをホンダさんに渡したい。バトンと言えば今年のニューイヤー駅伝でわれわれは過去最高の2位だったが、1位がホンダさんだった。1位のホンダさんにバトンを渡すことは運命的なものを感じながら先ほどTYPE R(シビック TYPE R)を見せていただいたが、速そうでやばいなと思っているが、これ以上はやめておく(笑)」という形で発言したことに応えたもの。

 渡辺氏はその発言を受けて、バトンを再びTGRに戻した形になる。各社コメントはYouTubeなどで公開されている映像を参照いただきたい。

TOYOTA GAZOO Racing プレスカンファレンス
新型フェアレディZ発表披露イベント
TOKYO AUTO SALON 2022 SUBARU/STIブース ONLINE プレスカンファレンス

豊田章男社長、「Zには負けませんから」発言でオンライン会見を終えたあと東京オートサロン会場に突然登場 日産ブースで新型Zの説明を受ける

https://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/tokyoautosalon2022/1380747.html

日産、新型「フェアレディZ」(日本仕様)公開イベント “熱烈なZファン”内田社長「このワクワク感を多くの日産ファンに満喫してほしい」

https://car.watch.impress.co.jp/docs/event_repo/tokyoautosalon2022/1380517.html

SUPER GTで松下信治選手がホンダ陣営に復帰、スーパーフォーミュラでは福住選手がドラゴへ、大津選手がダンデへ

ホンダ陣営に復帰した松下信治選手

 ホンダのモータースポーツ参戦体制は、SUPER GTでは基本的には2021年の体制が維持されているが、大きな変化はAstemo REAL RACINGの17号車に松下信治選手が加わっていることだ。昨年まで17号車をドライブしていたベルトラン・バゲット選手は、ホンダを離脱することをすでに明らかにしていたため、その体制がどうなるのか注目が集まっていたが、2020年までホンダの傘下ドライバーとして欧州で活躍し、2021年に日本に帰ってきて日産陣営に電撃移籍した松下信治選手が、古巣のホンダ陣営に戻ってSUPER GTに参戦することになる。松下選手がどんな活躍をするかも注目になりそうだ。

大津弘樹選手

 また、スーパーフォーミュラでは、2021年シーズンシリーズ2位となった福住仁嶺選手が、ThreeBond Drago CORSEへ移籍し、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた大津弘樹選手が、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGへ移籍する形になっている。大津選手は念願のトップチーム入りということで、その真価が問われる一年となるだろう。

 2021年はレッドブルと無限と一緒にスーパーフォーミュラに参戦する形になっていたTEAM GOHは独立したチームとなり、1台はホンダの若手ドライバーである佐藤連選手が乗り、もう1台は未定となっている。

FIAワールド・ツーリングカー・カップ<WTCR>

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
LIQUI MOLY Team Engstler9アッティラ・タッシ22ハンガリーWTCR 14位
18ティアゴ・モンテイロ45ポルトガルWTCR 17位
TBA29ネストール・ジロラミ32アルゼンチンWTCR 11位
86エステバン・グエリエリ36アルゼンチンWTCR 6位

全日本スーパーフォーミュラ選手権(SF)

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
TEAM MUGEN1野尻智紀32日本SF チャンピオン
DOCOMO TEAM DANDELION RACING5牧野任祐24日本SF 9位
6大津弘樹27日本SF 6位
ThreeBond Drago CORSE12福住仁嶺24日本SF 2位
B-Max Racing50松下信治28日本SF 8位
51TBA
TCS NAKAJIMA RACING64山本尚貴33日本SF 13位
65大湯都史樹23日本SF 5位
TEAM GOHTBA佐藤蓮20日本SFL 3位
TBATBA

SUPER GT<GT500クラス>

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
ARTA8野尻智紀32日本GT500 2位
福住仁嶺24日本
TEAM Red Bull MUGEN16笹原右京25日本GT500 16位
大湯都史樹23日本
Astemo REAL RACING17塚越広大35日本GT500 6位
松下信治28日本GT500 8位
Modulo Nakajima Racing64伊沢拓也37日本GT500 18位
大津弘樹27日本
TEAM KUNIMITSU100山本尚貴33日本GT500 3位
牧野任祐24日本GT500 4位

SUPER GT<GT300クラス>

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
TEAM UPGARAGE18小林崇志34日本GT300 25位
太田格之進22日本FIA-F4 5位
ARTA55武藤英紀39日本GT500 19位
木村偉織22日本FIA-F4 3位

インディカー・シリーズ

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
Meyer Shank Racing6エリオ・カストロネベス46ブラジルインディカー・シリーズ 22位
60シモン・パジェノー37フランスインディカー・シリーズ 8位
Chip Ganassi Racing8マーカス・エリクソン31スウェーデンインディカー・シリーズ 6位
9スコット・ディクソン41ニュージーインディカー・シリーズ 4位
10アレックス・パロウ24スペインインディカー・シリーズ チャンピオン
48ジェイミー・ジョンソン46米国インディカー・シリーズ 26位
TBATBA
Rahal Letterman Lanigan Racing15グレアム・レイホール33米国インディカー・シリーズ 7位
30クリスチャン・ルンガー20デンマークインディカー・シリーズ 37位
45ジャック・ハーヴィー28英国インディカー・シリーズ 13位
Dale Coyne Racing18デイビッド・マルカス20米国インディライツ 2位
51佐藤琢磨44日本インディカー・シリーズ 11位
Andretti Autosport26コルトン・ハータ21米国インディカー・シリーズ 5位
27アレクサンダー・ロッシ30米国インディカー・シリーズ 10位
28ロマン・グロージャン35スイスインディカー・シリーズ 15位
TBATBA
Andretti Steinbrenner Autosport29デブリン・デフランチェスコ21カナダインディライツ 6位

IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
Wayne Taylor Racing10リッキー・テイラー32米国IMSA 2位
フィリペ・アルバカーキ36ポルトガルIMSA 2位
ウィル・スティーブンス30イギリスELMS 3位
アレクサンダー・ロッシ30米国IMSA 10位
Meyer Shank Racing60トム・ブロンクビスト28英国WEC LMP2 2位
オリバー・ジャービス38英国IMSA 3位
エリオ・カストロネベス46ブラジルIMSA 22位
シモン・パジェノー37フランスIMSA 16位

FIA フォーミュラ・ツー選手権(F2)

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
DAMS17岩佐歩夢20日本FIA-F3 12位

フランスF4選手権

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
TBA荒尾創大16日本SRS-F スカラシップ
TBA野村勇斗16日本SRS-F スカラシップ

全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFL)

チーム名No.ドライバー年齢国籍2021年戦績
B-Max Racing1木村偉織22日本FIA-F4 3位
TODA RACING2太田格之進22日本FIA-F4 5位