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パナソニック、AIによる“5M”制御でオートノマスファクトリー実現を目指す新製品「NPM Gシリーズ」オンライン説明会
2022年2月15日 05:00
- 2022年2月14日 開催
新製品「NPM Gシリーズ」を2月16日から順次発売
パナソニック スマートファクトリーソリューションズは2月14日、自律的に進化し続ける工場「Autonomous Factory(オートノマスファクトリー)」の実現に向けた電子部品実装プロセス事業の新製品「NPM Gシリーズ」を発表。オンライン説明会を開催した。
2月16日から順次発売となるNPM Gシリーズでは、モジュラーマウンターの「NPM-GH」、スクリーン印刷機の「NPM-GP/L」、実装部品を自動供給する「Auto Setting Feeder」、プロセスコントロールAIの「APC-5M」という4製品をラインアップ。4製品を核とする新プラットフォームによってオートノマスファクトリーを実現していくという。
自律的なサプライチェーンの実現を目指す
説明会の冒頭では、パナソニック 代表取締役 専務執行役員 コネクティッドソリューションズ社 社長 樋口泰行氏から、同社を取り巻く事業環境について解説。
樋口氏は現在、製造業を取り巻く環境が大きく変化しており、デジタル社会の進展、経済活動の変化によって同社顧客のニーズが多種多様化し、ビジネスがボーダレス化しているほか、地球環境や自然災害への対応などが求められるようになっていると説明。
これにより、小型化や微細化といった計画可能なニーズ変化に加え、パンデミックやそれに伴う需給の急変、サプライチェーンのひっ迫など、計画を立てにくい予測不能な変化の波が押し寄せていることから、設備の増強だけでは対応しきれなくなってきており、製造業ではこういった急変にも対応できる機動力や柔軟性が求められているとした。
これに対して同社では、製造、物流、流通などの分野で発生する「現場の困りごと」を、自分たちの強みであるテクノロジー、エッジデバイスを使って解決する「現場プロセスイノベーション」の取り組みを進めており、米ブルーヨンダーの獲得で手にしたサプライチェーンソフトウェアプラットフォームや従来から持つインダストリアルエンジニアリング、エッジデバイス、IoTを融合させて自律的なサプライチェーンの実現を目指しているという。
このような事業環境において、同社は新たな価値を提供するため、ユーザーの要望や供給の変化などに即応可能で自立的に進化し続ける工場を「オートノマスファクトリー」と定義。工場にある「ラインフロア」「工場全体」「経営」という3つのレイヤーを、フィジカルな現場改善とサイバー領域におけるマネジメントをキーに、「製造計画」「材料準備」「製造実行」「保守管理」という製造のサイクル全体に関与。フィジカル領域ではファインプロセスを追求したエッジ設備や人に頼ってきた作業の自動化、生産実行をコントロールするソフトウェア、サイバー領域では計画立案を行なう管理システムなど、トータルソリューションでの提供を実施していく。
製造分野にフォーカスした今回の新製品を使って新プラットフォームを導入した場合、ラインそのものを自動化することが可能となり、将来的には生産フロア全体の自動化を図り、工場そのものが自律的に稼働できるようになると説明。自律的に稼働する工場の生産データを物流にも連動させて、生産と物流の計画を同期させたり、生産品の種類に応じて工場を使い分けたりと、サプライチェーン全体の自律化を視野に入れることができるとの将来像を紹介した。
トラブルの原因である「5M」のばらつきをAIで自立的に制御
樋口氏に続き、パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務 プロセスオートメーション事業部 事業部長 秋山昭博氏がオートノマスファクトリー実現に向けた取り組みと新製品の内容について説明した。
現在、同社が製品を提供している顧客企業では、生産実行を行なうフィジカル領域で、日々の業務で発生する稼働状況や品質などのトラブル対応についてはノウハウを持つ技術者の知見に頼っているため、人のスキルに頼ることなくトラブルに対応したり、トラブルの発生自体を減らしたりすることが課題になっている。
また、生産計画を行なうサイバー領域では、日々変化するユーザーニーズやもの作りの“見える化”を推進しつつ、その結果をどのように今後の計画に生かして無駄のない生産につなげていくかが課題となっており、同社では工場での生産に影響する変動要素を「huMan」「Machine」「Material」「Method」「Measurement」の5Mとして整理。トラブルの多くが5Mのばらつきによって発生している点に着目し、この5MをAI(人工知能)で自立的に制御することによって、生産計画の立案まで含めてマネジメント可能にするアイデアが生み出された。
生産現場のフィジカル領域、サイバー領域のそれぞれに適した知能化を図り、サイバー領域で立案した最適な生産計画をもとに、フィジカル領域で5Mのばらつきを抑制して設備停止時間を短縮。計画どおりの生産を続けられるようにして日々の経営数値の改善、新規ビジネスの効率的な受注判断が可能になるとした。
このコンセプトを実現する新プラットフォームの核として開発されたNPM Gシリーズ4製品についても詳しい説明を実施。NPMシリーズとして14年ぶりの新製品となるモジュラーマウンターのNPM-GHでは、小型・軽量化した実装ヘッドなどを使い、業界初という±10μmの超高精度仕様を実現し、同時に±15μmで最大4万1000cphの高生産性も発揮する。また、操作画面の大型化によるユーザーインターフェースの改善、前後同時操作などによって操作性も大幅に向上させている。このほか、5Mプロセスコントロールのベースとなるノウハウデータのセンシング、IoT機能も搭載している。
スクリーン印刷機のNPM-GP/Lでは、はんだ印刷性能で世界トップレベルとなる繰り返し位置決め精度±3.8μm、サイクルタイム12秒を実現。また、オプションとして印刷工程の完全自動化機能を用意。印刷用マスクを最大10品種までストック可能な「マスクチェンジャー」、はんだの自動供給&回収機能、基板を支える下受けピンの自動交換などの実現により、長時間の多品種生産に対応する。
実装部品を自動供給するAuto Setting Feederは、生産現場で使用されているすべての幅(4mm~104mm)の表面実装部品供給テープを対象に、カバーテープの自動剥離を実現。スキルレスでの実装部品の自動供給が可能となり、ローディングユニットで次のテープが自動的に補給される。また、専用台車の使用によって現行モデルのNPMシリーズ、NPM-Xシリーズでも本体を改造することなくAuto Setting Feederが利用できるという。
5Mプロセスコントロールを行なうAIのAPC-5Mでは、5Mのばらつきをリアルタイムで監視してラインの変化を検出。蓄積されたデータを活用して分析を行ない、トラブルの要因を特定して自律的に課題を解決する。経験は蓄積され、稼働時間が長くなるほど精度の高いシステムに成長するという。また、5Mのリアルタイム監視ではユニットの状態をチェックしており、是正が必要となる時期を判断。ラインの稼働に影響しないタイミングで設備のメンテナンス機能を実行できるほか、交換指示を行なう上位システムとの連携で予知保全も実現する。
NPM Gシリーズでは同日発表の4製品のほかにも、オートノマスファクトリー実現に向けた製品開発が行なわれており、2023年以降の発売を予定する「多目的AMR」は、実装フロアで必要とされるさまざまな部材の移動を自動化する自立搬送ロボット。共通するAMRに用途に応じた自動化ユニットを組み合わせ、さまざまな部材の移動を可能にするという。
このほかにも5Mの変化に追従し、無駄のない計画立案を進化させ続ける知能化システムの開発も行なわれている。今後も同社では半導体、フラットパネル製造装置、溶接・レーザー加工の分野で、オートノマスファクトリー実現に向けた取り組みを進め、2030年には販売金額4000億円を目指しているという。
【訂正】記事初出時、「Auto Setting Feeder」の発売予定を2022年上期としていましたが、2022年下期に変更されたので該当部分の記述などを訂正させていただきました。