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アカザーのホンダ次世代パーソナルモビリティ「UNI-ONE」に乗ってみた 車いすユーザーもハンズフリーで移動できる日が来た!

2022年3月9日~12日 開催

ホンダの次世代パーソナルモビリティ「UNI-ONE」に乗ってみました!

 どうも車いすに乗って21年になるアカザーっす。最初は数か月でもつらいな~と思っていた車いす生活も気付けは21年。時がたつのはあっという間すね~。

 俺が毎日乗っている車いすはOXエンジニアリング製のオーダーメード車いすこと「RC」。カーボンホイールや航空機にも使われる超軽量アルミフレームなど最新マテリアルで構成され、現代ふうの車いすに仕上がっています。しかし、実はこの“4輪ボックスタイプ”の車いすの形って、この90年ほど基本構造が変わっていないんですよ! 1932年にアメリカの鉱山技師で障がい者のハーバート・A・エベレスト氏と、医療技術者ハリー・C.ジェニングズ氏が発明したものが今の車いすのルーツだったりします。

2代目の愛車であるOXエンジニアリング製のオーダーメード車いすこと「RC」。秒でクルマに積み込めるコト、コンビニ棚の上まで届くシート高、狭い改札でも通れるような車幅、の3点に特化して製作

 そんなとき、2017年の「国際福祉機器展」で、90年以上変わっていない車いすの常識を覆す、次世代の車いすのひとつの完成形ともいえるものに出会いました。「UNI-CUB βをベースとした障がい者向け1人乗りパーソナルモビリティ試作機」です。ていうかちょっと名前が長すぎなので、“障がい者向けUNI-CUB β”で!

アカザーの「国際福祉機器展」をユーザー視点でチェックしてきました!

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1083881.html

ホンダがつくる次世代の車いすとは?

 2017年10月に国際福祉機器展で発表された「UNI-CUB βをベースとした障がい者向け1人乗りパーソナルモビリティ試作機」。これは「UNI-CUB β」に転倒防止アダプターが装着され、従来の車いすでは難しいとされた真横への移動も可能にしたパーソナルモビリティ。

 このとき体験した障がい者向けUNI-CUB βは、スタンダードなUNI-CUB βに転倒防止用のフレームを取り付けた感じのもの。取材に行った国際福祉機器展で偶然遭遇し、体験させていただいたのですが、自分が車いすユーザーというコトを忘れてしまうような“歩いていた頃”を思い出させる使用感に驚愕! だって、車いすだと不可能な横移動とかまで、簡単にできちゃうんですよ! しかも一切手を使わずに!

【動画】足の不自由な車いすユーザーでも乗れるようにしたUNI-CUB β

 特に、少し慣れた頃に体験させてもらったアタッチメントを外した状態の機動力がヤバかった!

【動画】転倒防止アタッチメント無しのUNI-CUB βに挑戦!

 このとき車いすユーザーになってすでに17年がたっていたんですが、17年前の歩いていた頃を思い出させてくれるような“自由な移動”をずっと忘れられずにいました。

「UNI-CUB βをベースとした障がい者向け1人乗りパーソナルモビリティ試作機」体験試乗に笑いが止まらないワイです

 しかし、その後毎年のように国際福祉機器展に通うも、障がい者向けUNI-CUB βの後継機とは出会えずじまい……。「あの歩くように、自由自在に移動できる感覚はもう体験できないのかな~?」と、半ば諦めていた矢先。3月9~12日に東京ビッグサイトで開催された「2022国際ロボット展」でまさかの出会いが!

車いすユーザーでも“歩くように”移動できるUNI-ONE

「2022国際ロボット展」で障がい者向けUNI-CUB βの後継機とも言える「UNI-ONE」を発見!

 通りがかったホンダブースの前に「UNI-ONE体験開催中」のボードが! そしてその奥には、見覚えがあるような、ないような機体が! 「マジか~! ワレ生きとったんか!」と思わず脳内で叫び、ワクテカ状態で吸い込まれるようにブース内へ!

4年半ほど前に体験させてもらった、障がい者向けUNI-CUB βよりも格段に洗練されたデザインながら見覚えのある動き!

 これは! この感じは4年半前に体験させてもらった「UNI-CUB βをベースとした障がい者向け1人乗りパーソナルモビリティ試作機」の後継機に間違いねぇ! このちょこっと四方に出た脚は、以前体験させてもらった補助アダプターが進化したものとみた!

「ASIMO」や「UNI-CUB β」で培われてきたホンダのロボティクスが詰め込まれた最新機体こと、パーソナルモビリティ「UNI-ONE」

 あれ? UNI-CUB βは駆動輪が1輪の一輪車タイプだったのに、このUNI-ONEは駆動輪が左右に2輪ある感じか~。この辺の制御はセグウェイ的なのかな?と、いろいろと脳内で想像を巡らしつつ熱視線を送っていると、担当者の方が「乗ってみますか? 車いすからご自身で乗り移れるなら体験可能ですよ」と声をかけてくれました。

もちろん乗ります! 乗ります! 乗りますよ! というワケでいきなり搭乗!

駆動輪2輪、アダプター4輪の計6輪。車いすユーザーでも自力で車いすへ移乗ができるなら、たぶん数分で乗りこなせると思います

 乗った感じは背もたれが低く、フットレストもちょっと短い感じで、見た目ほど安心感はないかも~。と思っていると担当者さんから、「安全のために脚と腰にベルトを装着させていただきます」とのこと。「脚と腰のベルトのおかげでたいぶ安心感が出ました」と応えると「じゃあ上げますんで、左右のグリップをつかんでください」と担当者さん。

 え? え? これシートが上がるんですか!?

【動画】UNI-ONE搭乗からハイモードに変形!

 まじか~まじなのか~! これコケない大丈夫!? とドキドキしていたのがアホらしく思えるほどあっけなく、無振動で機体が15cmほど上昇! おおお! 視界が広い! 普段この視点でまわりを見渡すコトがないので、めっちゃ新鮮! 担当者さんによれば「たぶん身長150cmくらいの方の目線です」とのこと。たった15cm上がるだけでこんなにも違うのか~。

 なんて感動に浸る間もなく、すでにUNI-ONEがちょこちょこと体重移動に反応して動いてるんですけど! どうやら担当者さんの方を向いての会話中、身ぶり手ぶりの動きに反応しているっぽい。

「じゃあ進んでみたい方向に視線を向けてください」

 おおお! 動く動くぞ! そうそう障がい者向けUNI-CUB βを体験したときも確かこんな感じだったわ~! あの安定感ある感じで、150cm相当の目線で移動とか! 新鮮な体験すぎる! と、ヨロヨロと動き出す。そんな俺にさらに担当者さんからのアドバイス。

「上体が不安定な場合は膝に手を置いてみてください。そして左右のお尻で操作するイメージでやってみてください」

 おおう! 上体が安定したからか、UNI-ONEとの一体感が格段にアップ! そしてその状態でのケツコントロールが最高! それまで少しブレのあった移動が、シャッキリと進みたい方向に向かう感じに! クルマで例えるとミニバンのフワフワしたハンドリングから、スポーツカー的なシャキッとしたハンドリングに変わった感じ。

 コレは楽しい! 思わず笑いが出ちゃうほど。このときの動画を見るとあまりにスムーズ過ぎて、第三者がラジコン的に他から操作してる感じに見える!

 これマジで俺の目線とケツによるわずかな体重移動だけで、行きたい方向に動いているんですよ! Uターンも首をひねり少し頭を入れるとイメージ通りの細かいターンが可能。この辺の感覚はバイクでのコーナリングっぽいかも!?

 ていうか、わずか3分とかでフツーに乗れるUNI-ONEの操作系インターフェースヤバくね!? いきなり乗っても恐怖心はゼロで、コントロールする楽しさだけがある! どうやらこの技術の裏にはホンダがASIMOなどで培った、自立移動技術があるみたいです。

【動画】車いすユーザーがUNI-ONEに乗ってみた!

 そういや確か4年半前の障がい者向けUNI-CUB β体験でも、こんな感じで調子に乗って、すぐにアダプターを外してもらったんだよな~。ていうかそのアダプターを外したときの起動性に比べれば、UNI-ONEの乗り心地はちょっと軽快感に欠ける感じかも。そんなことを担当者さんに伝えると……。

「ホンダとして製品化を考えたときに、やはり安全性を一番に考えないといけないので、こういった安定性重視の形になりました。でもここに行きつくまでこの4年間はいろいろとチャレンジもしてきて、SFアニメーションに出てくるメカ的なデザイン案なんかも出てたんですよ(笑)」

 マジすか! それもう完全にワクテカ不可避の未来の車いすじゃないすか!

「安全性という観点ではこのハイモード時にバッテリーが切れた場合も、速やかにローモードへ移動し、転倒を防ぎ安定性を確保できます。また、あくまでこの形はUNI-ONEのショーモデルとしての形で、使用者さんの状態や体形にあわせてカスタムが可能になる予定です。」

 搭乗時にオレが一番気になった、フットレストの浅さと背もたれの短さもあくまでショーモデルとしてのデザインを重視した結果らしく、今後の製品化に向けては車いすユーザー向けにフットレストを大きくしたり、背もたれを大きくしたり、ひじ掛けをつけたりということが可能になるとのこと。

車いすユーザー視点では使いにくいと感じた、フットレストや背もたれなども、今後は使用者にあわせたカスタマイスが可能になるとのこと

 ちなみにこのUNI-ONEはローモード状態では、体重移動ではなく従来の電動車いすと同じように、ジョイスティック操作での移動となる。このモードも試させていただいたのですが、ハイモードのあの自由な移動を体験した後ではぜんぜん物足りない! もうオレはこの従来のジョイスティック操作に戻れない! 戻りたくない! みたいな感じになっちゃいました。

右手側にはゲームコントローラーのような小さいジョイスティックがあり、ローモードではこれを操作して移動する

車いすユーザーの能力を拡張する次世代の車いす

 実はUNI-ONEのすごい点は、従来の車いすでは移動中に使えなかった手が使えるようになるというコト!

UNI-ONEは目線や体重移動で操作するので、移動中でも両手がフリーになるんですヨ! この新体験が最高!

 俺が使用している自走式車いすでは、移動中は両手で左右のハンドリムをつかんでタイヤを回転させる必要があります。電動式車いすの場合には、片手でジョイスティックを握り操作する必要があります。

 ですが、UNI-ONEの場合は移動中でも、両手がフリーになるんです! もちろん車いすを他人に押してもらえば移動中でも両手はフリーにできるのですが、介助者の方の両手をふさぐことに。ていうか、健常者みたいに両手フリーで移動できるってことが、車いすユーザーにとってはロマンあるコトなんですよ!

 とは言っても健常者の方にはイマイチピンとこないと思うので、こちらのUNI-ONEブースで見たイラストをどうぞ。

UNI-ONEだと車いすユーザーが無意識に諦めていたこれらのコトができるんです! つまり車いすユーザーの可能性が広がりまくるんですヨ

 UNI-ONEブースで見た、このボードに描かれたこちらのUNI-ONEの使用法のように、片手にホウキ、片手にちり取りみたいな、“車いすユーザーでも移動中に両手がフリーで自由に使える”ことでできることが格段に増えるんです! 今ふうに言えばQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が劇的に向上するってワケです!

 4年半前、車いすユーザーの俺が障がい者向けUNI-CUB βで感じた、“歩くように移動できる”というフィーリング。それがこのUNI-ONEではさらに進化して、“車いすユーザーでも移動しながら両手が使える”という、車いすユーザーの生活スタイルまで変えてくれる、うれしい車いすの未来へとつながりました。

 同じUNI-ONEボードに描いてあった以下の文字。車いすユーザーなら胸熱必至ですよね!

コレを見た瞬間、胸が熱くなりました

「単なる移動手段ではなく、仕事やレジャーに対して新たな選択肢を提供する歩行感覚モビリティ」

 障がい者向けUNI-CUB βのときにも感じたんですが、このUNI-ONEも車いすユーザーにこそ体験してほしいモビリティです! たぶんそこには、健常者が乗って感じるよりも格段に大きな喜びがあると思います!

 10年後には車いすといえば、この両手がフリーになるタイプがスタンダードになっているといいな~!