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アイシン、新型バッテリEV「bZ4X」のバッテリ保護材やカーナビを開発

2022年4月13日 開催

アイシンはトヨタの新型バッテリEV(電気自動車)「bZ4X」に搭載された新製品についてのオンライン発表会を開催した

 アイシンは4月13日、トヨタ自動車が発売する新型バッテリEV(電気自動車)「bZ4X」に搭載される新たな製品についての説明会をオンラインにて開催した。

 この新製品説明会で取り上げられたのは以下の2製品だ。

 まず、1つめは車体の底面の両サイドに配置する「ロッカーEA材」というもの。これは車体底面(フロアの部分)のドア下になるロッカー(別名サイドシル)の真下に配置するエネルギー吸収部材だ。用途は事故などで車体側面から衝突があった際の乗員保護に加えてフロアに配置されるバッテリの保護をするものだ。

 そして、2つめはbZ4XはBEVということでBEV向けのカーナビゲーション機能をアイシンが開発した。内容は「充電施設の提案」「充電施設の表示」「航続可能エリアの表示」となっている。さらに従来からのコネクティッドナビ機能では「最新の地図データ、交通情報、施設情報」に「対話型音声認識」「フリーワード検索」の機能である。

トヨタの新型BEV「bZ4X」に搭載されたアイシンの新製品が発表された
BEVは大きな電池を積んでいるのでこれが衝突時に破損などすると発火や感電といった危険が生じることも考えられるので、これを防ぐための新たな対策が必要とされた。そこでアイシンが開発したのがロッカーEA材だ
bZ4Xのカーナビゲーションシステムでは、BEVにとって重要な情報である充電設備の場所、利用状況などが検索できるようになっている

バッテリを保護する「ロッカーEA材」について

 ここからは発表された製品を個別に紹介していこう。ロッカーEA材についてはアイシン 第2車体技術部 グループ長の北恭一氏が説明をした。

 今回のロッカーEA材は「ロッカーEnergy Absorption」から来た名称で、装着位置は前記のとおりロッカーの下になり、左右それぞれに付き、側面からフロアに搭載しているバッテリまでつながる衝突エネルギー吸収用部材となっている。

 ロッカーEA材の内部は資料画像にあるように空洞の中に柱を設けた素材がつながったパネル構造となっていて、衝突時にはロッカーEA材の「断面がキレイに折りたたまれるようつぶれる」ようになっている。このことにより衝突時のエネルギーを吸収してバッテリを保護するのだ。

ロッカーEA材に関しては株式会社アイシン 第2車体技術部 グループ長の北恭一氏が説明
従来のガソリン車は衝突安全性能として乗員を保護する機能が用いられていたが、BEVでは乗員に加えて電池を保護する機能が必要になってきたため、要求される安全性が、より厳しくなっている。ただ、BEVの電池保護に関しては国際的な安全基準がないので、このロッカーEA材はアイシンが独自の視点で開発し、それをトヨタがbZ4Xに採用したものだ

 衝突のエネルギーを受けたロッカーEA材がキレイに折りたたまれることについては「断面の最適化」や「材料の選定」が重要な課題となった。

 開発では最初のステップとして実際の素材のつぶれ方とシミュレーションでの変形度合いが一致するように合わせ込みを行なってから、狙いどおりにつぶれるための形状や素材の肉厚などを検討。シミュレーションでの結果が出たあとに実際の素材で試作品を作り試験を重ねた。なお、素材は車両重量の軽量化のことを考慮してアルミニウムが採用されている。

ロッカーEA材がつぶれる様子を表したものが資料の下側にある。単につぶれるのではなくてキレイに折りたたまれるようにつぶれていくのが特徴

 こうして作られたロッカーEA材。アイシンとしても初めて作るものであり、すでに発売されているトヨタのEV車にロッカーEA材は使用されていないという。とはいえ、車両ごとに電池の搭載法や衝突安全への考え方が違うので「ほかのEV車と比べて」という表現は、いまはできないようだ。

 なお、衝突時は側突だけでなくほかの向きからの衝突もあるが、試験の段階ではそういった面も含めて行なっているので、多面からの衝突に関しての性能となっているとのことだった。

 最後にこのロッカーEA材はアイシンの技術であるので、今回はbZ4Xに採用されたがほかの自動車メーカーへの納入も視野に入れているという。それにロッカーEA材に使用する材料の開発もアイシンのグループ会社で行なえるので、さらに軽いものとしつつ、価格を下げることの努力もしていくという。そういったことから、設計面だけでなく、素材の部分から優位性を保っていけると考えているようだ。

ロッカーEA材の開発の進め方の解説。CAE解析の結果が重要になるため、最初は実機の変形の仕方とCAE上での変形の仕方が一致するように設定することから始めた。解析の後半では約2000パターンの形状を用意し、そのなかから最適な形状を選び、実物の試作品を製造。実機での評価をしていった
ロッカーEA材、発表のまとめ

バッテリEV向けカーナビゲーションシステムについて

 続いて発表されたのはトヨタbZ4Xに搭載されるカーナビゲーションシステムについて。こちらはアイシン 第1システムデザイン部 車載LBSデザイン室の小酒井洋行氏が説明を行なった。

トヨタbZ4Xに搭載されるカーナビゲーションシステムについては株式会社アイシン 第1システムデザイン部 車載LBSデザイン室の小酒井洋行氏が説明
bZ4Xのナビゲーションシステムに搭載された機能の紹介

 bZ4Xのカーナビゲーションシステムに採用されたのは「充電施設の提案」「充電施設の表示」「航続可能エリアの表示」である。電池を充電できる施設数がまだ少ないBEVにとっては、自車がいるエリアにある充電施設の場所が調べられることはとても重要なことだ。

 そこでアイシンはルート案内のなかに、立ち寄れる充電施設の案内をしてくれる機能を盛りこんだ。例として挙げられたのが東京~金沢へのロングドライブ。この距離になると途中で充電が必要になるが、bZ4Xのナビゲーションシステムでは航続可能距離を考慮し、適切な場所での充電込みのルート案内を提案してくれる。

充電施設込みのルート案内をしてくれる。施設の詳細も表示する

 また、ふだんの走行では電池残量が減ってきた際、近くにある充電施設を画面に表示する機能もあり、表示された情報に対して画面操作で個別に選択すれば充電施設の詳細(場所、料金、利用状況など)が表示されるというもの。BEVに乗るうえで一番の心配が電池切れだと思うが、充電施設込みのルート案内や充電施設の詳細まで含んだ情報表示は、BEVオーナーのストレスを大幅に減らす機能と言えるだろう。

電池残量が減ってきたときには近くのある充電施設を表示してくれる
施設を選択すると場所の詳細、金額、設備の使用状況などがでる

 こういったBEV向けの機能だけでなくコネクティッドナビ機能も充実されている。まずは検索などで便利な音声認識だが、これが「対話型音声認識」となっている。これまでの音声認識は決まった文言で発話しないと機会が認識しなかったが、今回のナビはサーバーとつながっていてサーバー側に音声処理認識機能を持たせている。「ヘイトヨタ」の呼び出しからあとは対話形式で話す言葉の自由度も広がった。そのためより気軽に音声での検索が行なえる。また、人の発話の認識率も高められているので機械側の認識間違いが起こりにくく対話がスムーズになっている。

音声認識による検索が対話型音声認識となったので検索で使う言葉の自由度が広がった

 以上が今回の新製品発表会の内容だ。どちらもトヨタbZ4Xに採用されてはいるが、あくまでもアイシンの製品であるのでほかの自動車メーカーにも使われることは大いに有り得る。BEVの時代におけるBEV以外の技術というのも非常に興味深いものである。