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ホンダの新型「ZR-V」について開発責任者の小野修一氏が解説 「セダンに近い感覚の走りを実現したSUV」

2022年9月8日 先行予約開始

ホンダの新型SUV「ZR-V」について開発責任者の小野修一氏による解説が行なわれた

 本田技研工業は9月8日、新型SUV「ZR-V」の先行予約を開始した。当初は2022年秋の発表・発売予定だったが、ほかのモデルですでに納車を待つユーザーが多数いるため、ZR-Vの発売は2023年春に延期して、先行予約を受ける形になった。

 今回先行予約を前に、メディア向けに事前説明会が実施され、開発責任者である本田技研工業 LPL チーフエンジニアの小野修一氏が解説を行なった。

本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター LPL(Large Project Leader=開発責任者) チーフエンジニア 小野修一氏

グランドコンセプトに掲げている「異彩解放」とは

 小野氏は「ホンダはユーザーに提供する価値としてグランドコンセプトをとても大切にしている」と語り、市場が群雄割拠でSUVだらけの中、ZR-Vは“ただのSUV”“流行りのSUV”ではなく、個性が際立つ、自分らしさを解き放てるような「異彩」。また、ユーザーが日々の仕事に忙殺されて、昔やっていた趣味などやりたいことがなかなかできない。そういった人たちの気持ちを後押しする。個性を「解放」するという意味合いで「異彩解放」とグランドコンセプトを掲げ、「このZR-Vを手にした人が、今一歩踏み出してほしい、そんな気持ちで開発を推進してきた」と小野氏はいう。

 ZR-Vの優位点としては、SUVのコア価値である「実用性」や「信頼感」はもちろんだが、独自価値として「デザイン」と「走り」の質の高さを強調。その背景について小野氏は「自分が入社した1998年ごろのホンダ車は、格好いいし乗って気持ちいいと、2つの条件を満たす欲張りなクルマだった。それを見て育ったので、ZR-Vでも走りを予感させるデザインでありつつ、デザインはファンクション(機能)として走りに直結すると、デザインと走りを融合させて考えた」と明かす。

 そして、思わず2度見したくなる異彩を放つデザインでありながら、走り去っていく姿も眺めていたくなる。さらに、クルマの挙動が頭で思い描いた通りで、クルマと神経があたかもつながっているような、爽快かつ快適な走りを動的な目標に掲げたという。

グランドコンセプト
ZR-Vの強み

 ダイナミクスの方向性としては、初代ヴェゼルのユーザーの声を拾う中で、ホンダらしいSUVを再考。気軽に乗れて、使えるクルマで、オンロードでもオフロードでも快適に走れる、いつでも好きなときに即行動できる相棒のようなマルチパーパス(多目的)性といった、従来からSUVに求められている当たり前の価値は盛り込みつつ、新たなSUVとしてダイナミクス価値を際立たせるために、クルマと一体で楽しめる「運転感覚」をプラス。さらに、骨格をシビックベースにアップグレードし、四輪が路面を常にとらえる高い接地感を確保して、1ランク上の走りと安心感を追加。さらに、風を受けてフラフラするとか、巻き込んだコーナーでロールが大きくグラついたりするといった、SUVオーナーが不安を抱くようなシーンを払しょくすることを目指し開発し、「乗った感覚はセダンに近い」と小野氏はいう。

 パワートレーンは2種類用意していて、ハイブリッド車の「e:HEV」は、新型シビックに先行して搭載されている新開発の2.0リッター直噴エンジン。そこに、2モーターの電気式CVTを組み合わせることで、ホンダが過去に市場に投入していたV型6気筒3.0リッターガソリンエンジン並みのトルク(315Nm)が、動き出しから得られることが大きな特徴。同時に「余裕のトルクを意のままに」もスローガンに掲げ、特にSUVは4WDによる悪路や厳しい走行路面を走るシーンを想定して開発したという。

 また、ガソリン車は直列4気筒1.5リッターVTECターボエンジンとCVTの組み合わせ、ZR-Vはシビックよりも車重があり、外径の大きなタイヤを履いていることから、駆動力の不足を補うためにファイナルドライブを変更。そのほかにも、エンジンのトルク特性やスロットルの応答、CVTのギアレシオなど、走り込むことでZR-V専用にセットアップしたという。

e:HEVのエンジンは最高出力104kW/6000rpm、最大トルク182Nm/4500rpm、モーターは最高出力135kW/5000-6000rpm、最大トルク315Nm/0-2000rpmを発生
ガソリン車のエンジンは、最高出力131kW/6000rpm、最大トルク240Nm/1700-4500rpmを発生
ハイブリッド車のパワートレーン
余裕のトルクを意のままに操ることを目指し開発
ガソリン車のパワートレーン

 走りの面では、e:HEVはドライバーの意思に対してクルマの加速の応答具合の速さと、そこからアクセルを踏み足したときに、一気にGが立ち上がるのではなく、コンスタントに加速が続く「リニアリティ」を実現。スポーツモードでは加速の伸びがさらに続くようにセットアップを施したという。また、0-100km/hの加速とWLTC燃費についても、ガソリン車は国内SUVではトップクラス、ハイブリッド車はさらに高次元で両立している。

 乗り味については、荒れた路面でもバネ上をしっかりとコントロールして、目線がブレないことを重要視し、旋回中にいかなる入力があっても、4輪が常に路面をとらえ続けて離さないことを目標にセットアップ。ロール量をセダン並みに抑えつつ、風も味方にするために開発当初から空力を考慮し、フロントを路面に吸い付かせるデザインを開発。さらに、路面のギャップを一発で吸収するダンピングにもこだわったという。

 その乗り味を支えているのが「柔」と「剛」を使い分けたしなやかなボディとのことで、小野氏は「衝突安全性能と予防安全性能のファイブスターを獲得するために、高ハイテン材を効率よく配置しているが、ボディはただ固くするだけだとクルマは曲がってくれないので、構造用接着剤などを活用して、曲がるときはボディをねじりながら、大きな入力があった場合はボディでいなすなど、適材適所で柔と剛を使い分けた」と解説する。

乗り味
ボディの構造

新型シビック系のプラットフォームを採用したことで走りの質も向上

 シャシーはシビック系プラットフォームで、フロントのサブフレームまわりはシビックと共通で、サスペンションなどはSUV用にすべて新規で開発。また、ドライバーがクルマの情報を感じ取るステアリングに関しては、素材やステッチにもこだわりステアフィールを向上した。リアサスペンションは4WDの設定があるためシビックではなく「CR-V」ベースとしているが、ブッシュなどはZR-V専用に開発したという。

 空力性能に関しては先述した通り、デザインに落とし込んでいて、フロントバンパー両サイドにエアカーテンを採用し、タイヤまわりの乱流を整流、さらにフロアアンダーカバーを装着することで床下流速を向上し、結果的にクラストップレベルの空力性能を実現している。

空力性能
フロントバンパーのエアカーテン
エアカーテンから入った空気はフェンダー内に抜けてくる構造
床下はフロアアンダーカバーによって完全なフラットになっている

 リアルタイム4WDもこだわって開発したポイントとのことで、リアサスペンションまわりの剛性をアップし、駆動力をしっかりと受け止められるチューニングを施したことで、リアタイヤを回す力を従来のホンダのSUVモデルよりも大幅に引き上げたという。

 小野氏は「これにより駆動配分を従来よりもリア側に移せるようになり、フロントタイヤの横方向グリップに余裕ができ、従来は車速が上がるにつれてトルク配分を落としていくしかなかったが、ZR-Vでは車速が上がっても高いトルクを維持でき、常に曲がりやすいクルマに仕上がっている」と解説した。

リアルタイム4WDの進化
雪上走行性能の向上