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デンソー、2023年3月期第2四半期決算 売上高は円安効果もあり3兆201億円で過去最高、営業利益は1554億円で微減

2022年10月28日 実施

株式会社デンソーが決算発表を実施した。左が取締役 経営役員 松井靖氏、右が執行委員 篠田吉正氏

ドルだけなら1円円安になると20~30億円変わってくる

 デンソーは10月28日、2023年3月期(2022年4月1日~2023年3月31日)の第2四半期決算発表をオンラインで行なった。登壇したのは、取締役 経営役員 松井靖氏と執行役員 篠田吉正氏の2名。決算発表によると、2023年3月期第2四半期の売上高は3兆201億円(前期比16.9%増)、営業利益は1554億円(同2.5%減)、当期利益は1058億円(同6.1%減)の増収減益。

 この結果について松井氏は、「第1四半期は中国のロックダウンや半導体不足による車両減産があったが、第2四半期に入り生産の回復や、電動化領域の拡販の実現、さらに円安の進行などにより前年比で増収。営業利益については、電子部品を中心とした部材・物流費の高騰や外部環境の影響により前年比で微減だった」と報告。

 続けて年間の業績予想については「売上は為替前提の変更を反映して6兆3100億円に上方修正。営業利益については、地域間構成の悪化影響があるものの、為替差益と採算改善の積み増しによって4800億円を維持。当期の売上収益、営業利益ともに過去最高になる見通しである」と好調さをアピールした。

第2四半期累計 連結決算
2023年3月期 通期予想

 また、マイナス要因について松井氏は、「固定費の投入は、SIC搭載の超小型高効率インバータなど自動運転や電動化の注力領域へ投入していて、当初からの計画通りに進んでいる。それと電子部品の値上げ分が大きいのと、北米を中心に物流費の高騰が続いているのが要因。材料にしても金属や樹脂も値上がってる状況で、現在価格転嫁の相談をしている真っ最中だ」と説明。

 半導体の生産体制については、年初は受注残を解消するために大きな数値を掲げていたと前置きし、「現在計画よりも10%ほど減っているが、これでもコロナ前と同じか多いレベルである」と解説。また、不足している半導体については、「自動車以外の分野はだいぶ落ち着いてきたが、自動車は固有SPECの半導体を使っていることが多く、それが不足気味。この解消時期はまだ不透明だが、年内には落ち着いてくれると期待している。これからの時代は力技でこなすのではなく、業界全体で仕組みを変えていく必要があると思っている」と今後の方針についても語った。

営業利益増減要因

 また、北米はインフレが進んでいて人件費も高騰、さらに第2次産業のスタッフが第3次産業に引っ張られるなど、労務費が高いうえに人材不足という状況に陥っているとのことで、松井氏は「テネシー州とミシガン州での人材確保が難しくなっているので、古い部品はカナダやメキシコの工場に生産を移管してダウンサイジングしようと計画している。同時に北米の工場は人間に頼らない生産ラインに変えていき、自動運転や電動化の部品に集中させ、労務費を抑えようと考えている」と今後の方針を明かした。

 売上と利益について聞かれた松井氏は、「日本はもともと収益性は高いが、だんだんアメリカやヨーロッパも回復していることで、収益力の弱かった地域が元気になり、日本のように収益力の強い国の弱体化が少しずつ進み、営業利益の4800億円は維持しているものの、なかの売上構成比が異なる」と説明。また、今の円安については「デンソーは円安の方が収益の上がる体質の会社でして、例えばすべての通貨が1%円安になると、約90億円くらい利益が増える。ドルだけだと1円円安になると、20~30億円ほど利益が増えることになる。とはいえ、短期的には収益が上がるが、いき過ぎた円安になるとエネルギー費が上がるので、過度な円安は希望しない」と自論を述べた。

所在地別のセグメント情報

 研究開発費や設備投資がここ数年減っていることを問われた松井氏は、「開発費は一切減らさない。デンソーは技術力が競争力の源泉なので、効率化ができた分が減っているように見えるだけで、開発の手は一切緩めていない。設備投資は円安もあるので、しぼることも含めて規律を持って対応する。急がないものは来年にまわすなど、精査しながら対応する」と回答した。

設備投資・償却費・研究開発費の推移