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布製タイヤチェーン「スノーソックス」とは? スペインのメーカー「イッセ」CEOらが来日し、日本独自仕様など魅力を紹介

2022年10月21日 開催

イッセの布製タイヤチェーン「スノーソックス」に関するセミナーが開かれた

スノーソックスは、金属チェーン同等のパフォーマンスを発揮

 布製タイヤチェーン「スノーソックス」を開発・製造するイッセ・セイフティ(イッセ)は10月21日、スノーソックスを紹介するセミナーを東京都千代田区のセルバンテス文化センターで開催した。

 イッセは15年前にスペイン・バルセロナで創業した、自動車安全グッズを専門としたメーカー。バルセロナの街やその周辺地域は、ファッションや技術的な製品などの繊維産業が古くから盛んで、スノーソックスは繊維業界での経験が元となって2003年に誕生した。紡績、紡織、カッティング、縫製、パッキングに至るまで、全ての工程をバルセロナ近郊の工場で行なっており、“100%メイド・イン・スペイン”の製品となっている。

イッセの本社位置
全ての工程をスペインで完結している

 スノーソックスは、金属チェーンと同等のパフォーマンスを誇るという布製のタイヤチェーンで、ヨーロッパを中心とした世界各国で120万台の販売実績があり、世界累計で2400万ユーロを売り上げている。日本へは3年前から参入しており、パッケージを含んでも1500g以下という軽量・コンパクトかつ、劣化しないという点で人気となっているとのこと。

 装着にはジャッキアップも専用工具も不要で、約3分で簡単に装着可能。通常の金属や樹脂のチェーンと異なり、スポーツカーのようなタイヤと車体のクリアランスの狭い車両でも装着できるのが特徴となる。

 また、日本独自仕様として、パッケージを日本語対応したほか、中央ゴム部にほかの国や地域向けの商品に比べて強高度のものを使用。布の接合部の縫合に使用される糸には、ポリエステルの10倍の強度のものが用いられている。

日本市場に合わせた変更が行なわれている
スノーソックスの特徴。軽量・コンパクトで劣化をせず、ジャッキアップも専用工具も不要で取り付けが可能。金属チェーンと同等のパフォーマンスを誇り、アメリカ運輸局認定チェーンとなっているほか、日本のチェーン規制にも適合している

 サイズ展開は6種で、軽自動車や軽トラック、コンパクトカーなどに装着される幅の狭いタイヤから、SUVに装着されるような大径タイヤまで、ほぼ全てのタイヤサイズをカバー。小さいサイズについては、2022年にリニューアルされ、軽自動車やコンパクトカーによりフィットした日本独自の開発サイズとなっている。

スノーソックスは6サイズの展開としながら、市販されているほぼ全てのタイヤに装着可能で、これまで金属チェーンや樹脂製チェーンを取り付けできなかったクリアランスの狭い車両にも対応。また、トラックやバス、トレーラーといった大型車両にも対応する唯一の布製タイヤチェーンとなり、国土交通省にも納入されている

 ラインアップは「クラシックモデル」「スーパーモデル」のほか、プロドライバー向けの大型トラック用「トラックモデル」の3種類を用意。価格はクラシックモデルが1万3090円~1万4190円、スーパーモデルが1万8920円~2万680円、トラックモデルが3万5574円~4万5969円。

「クラシックモデル」は、軽くてコンパクトなイッセスノーソックスの標準モデル。雪が年に1回~数回降り、翌日には溶けてしまうような地域に住んでいる人や、雪の予想されるエリアに行く予定があり、いざというときのために備えておきたい人におすすめとなる。

「スーパーモデル」は、クラシックモデルに比べて制動性や耐久性に優れた高品質モデル。SUVなどの大型乗用車を所有している人や、雪や氷に覆われた道を1時間以上走る予定のある人、通勤や送迎など、雪が降っていても数km程度の移動が日常的に必要な人におすすめとなる。

展開モデルは「クラシックモデル」「スーパーモデル」「トラックモデル」の3種類
クラシックモデル
スーパーモデル
トラックモデル
軽自動車や軽トラック、コンパクトカーのタイヤによりフィットする日本独自のサイズも設定

 スノーソックスの滑らない仕組みは、タイヤが雪道に接したときに瞬間的に雪が溶けて発生する水の膜を吸収し、タイヤと路面の摩擦面積を広げることでグリップを生み出すというもの。スノーソックスの表面は立体的に糸が編み込まれているため水分を吸収しやすく、吸収した水はタイヤの回転で排出される。このため、水分の多い雪道や、シャーベット状になりやすい都心の路面でも安心して走行できるとした。

 アイスバーンのような水分が少ない道では、スノーソックスの繊維が瞬時に張り付いてグリップ。冷蔵庫から出したばかりの氷に触れると指がくっつくのと同じ原理で、スノーソックスの繊維の間に入り込んだ水が一瞬にして凍り、くさびの役割を果たすため、滑らずに走行できるとしている。

スノーソックスのグリップの仕組み

 布製チェーンのパフォーマンスは、布そのものの耐久性と、布の持つ吸水性が重要なファクターとなるため、どんなコンディションの雪道であっても、簡単に切れたり破れたりしない丈夫な布を使用し、吸水性とのバランスを最適化しているとのこと。これにより、雪道でもしっかりと加速ができ、ブレーキ時には制動距離を小さく抑えられているとした。

 加えて、スノーソックスには独自のオートセンター機能が備えられており、走行直後は中央のゴムの部分が楕円のような形になっていたとしても、タイヤの回転によってゴムが徐々に真円に近づき、常に適正な位置に装着されるようになるため、安定して走行することができるようになっている。

オートセンター機能を採用することで常に適正な位置に装着され、安定したグリップを発揮できる

 使用耐久年や距離は特に定めていないというが、スーパーモデルの場合ではおおよそ2シーズンとのこと。なお、スノーソックス装着時は40km/h以下での走行が推奨されており、40km/h以上で走行した場合はスノーソックスがズレる原因となってしまうほか、雪や氷のない舗装路面を走行した場合は裂けや破れが発生しやすくなるとのこと。ただし、万が一裂けや破れが生じたとしても、即座に損傷が広がらないようになっているため、すぐにグリップを失ってしまうことはないとしている。

水分を多く含んだ日本の雪にも適したスノーチェーン

 イッセ CEOのジョルディ・アギレラ氏は、イッセについて紹介したのち、「イッセにとって、スノーソックスのトップクラスのメーカーになるということは大きな名誉であり、誇りに思います。私たちイッセは、日本や日本文化を愛しています。また、この国の顧客の要求度の高さ、厳しさもまた愛しております」と、日本への想いを語った。

イッセ・セイフティ CEO ジョルディ・アギレラ氏

 イッセ 輸出部長 アーサー・シュワルツマン氏は「スノーソックスは、雪の日にスリップしてしまったフォークリフトのスリップ防止のために、スロープに布を貼ったところ、スリップが軽減。そこから、カーペットのように敷くのではなく、車両そのものに装着する形に変化していった」と、誕生の背景を語った。

イッセ・セイフティ 輸出部長 アーサー・シュワルツマン氏

 また、イッセ・スノーソックス日本総代理店となるフォーサイト 顧問 建晴久氏があいさつ。「私がイッセのメーカーの方々と出会ったのは、約4年前の2018年9月ごろだったかと思います。展示会で初めてスノーソックスを見たときの衝撃は忘れられません」と、スノーソックスとの出会いを振り返った。

株式会社フォーサイト 顧問 建晴久氏

 さらに、自身もスキーなどのウィンタースポーツを楽しむと話し、「雪が降っている中で、年に数回しか使わない固い樹脂製のチェーンを、うろ覚えの方法で装着しなければならないことに対してフラストレーションがあった」と言い、「布製のスノーチェーンであるスノーソックスを日本で普及させていきたい」と意気込みを語った。

 続けて、イッセ・スノーソックス 日本エージェント代表として、ピー・エム・シー 代表取締役 ファビアン・ドゥバケール氏があいさつ。5年前にイッセのスノーチェーンを発見したとき、「ものすごく大きなポテンシャルを感じた」としつつ、「当時は誰も布製チェーンの能力を信じていなかったため、本当に大変だった」と当時を振り返った。現在は「イッセの布製チェーンが日本のドライバーの間でセーフティーアイテムとして広く認識されるようになり、大変誇らしく思っています」と喜びを語った。

ピー・エム・シー株式会社 代表取締役 ファビアン・ドゥバケール氏

 今回のイベントを後援したスペイン大使館経済商務部所長からは、経済商務参事官 フェルナンド・エルナンデス氏が登壇。「日本の大部分の方は、スペインは観光の国、文化、そしてグルメの国だと思われているようです。実際、スペインにとって観光産業や文化、グルメは非常に重要なものです。しかし、スペインはヨーロッパで4番目にGDPが大きい経済大国です。そして、ものづくりに関しては、恐らくドイツに次いで2位ではないかと思います。そして、多くの日本の方はもしかしたら知らないかもしれませんが、スペインはドイツに続いてヨーロッパで第2位の自動車生産国でもあります。自動車産業はスペインにとって非常に重要な基幹産業であります」とスペインを紹介。

スペイン大使館経済商務部所長 経済商務参事官 フェルナンド・エルナンデス氏

 続けて、「スペインと言えば太陽の国、気候のいい国だというイメージを持たれている方が多いかもしれませんが、実際には地域によって、冬はたくさんの雪が降る場所もございます。ウィンタースポーツも盛んですし、冬にはスノーチェーンが欠かせなくなっています」と、スペインの気候に触れつつ、「スノーソックスは、スペインにまさにぴったりのものです。そして、産業の中でも非常に高い技術力が使われています。また、ヨーロッパの雪とは異なり、水分を多く含んだ日本の雪にもぴったり適したスノーチェーンとなっております」と、スノーソックスを紹介した。

セミナー会場となったインスティトゥト・セルバンテス東京の文化部長 ハビエル・フェルナンデス氏による、バルセロナについての紹介もあった
フェルナンデス氏はバルセロナの歴史的建造物や街並みなどについて紹介