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デンソー、「DENSO DIALOG DAY 2022」で2035年に向けた取り組みを紹介 循環型社会の実現を目指す一方で成長戦略には内燃系の早期収束を明言
2022年12月16日 09:45
- 2022年12月15日 開催
デンソーは12月15日、将来に向けたデンソーの取り組みを紹介する「DENSO DIALOG DAY 2022」をオンラインで開催。2035年に向けた技術開発や、企業価値向上戦略について紹介した。中でも、5つの「流れ」を示し、モビリティを100%再生、モビリティから産まれるモビリティの提供を掲げるなど循環型社会の実現を強調した。その一方で、成長戦略では内燃系は譲渡を含め早期収束を示した。
この1~2年の変化から、2035年の未来像を描いた
最初に登壇したのは、代表取締役社長の有馬浩二氏。過去10年間で研究開発費4.4兆円、設備投資3.5兆円、人材投資でグループ社員数を13万人から17万人に増やしたことを紹介し、今期、売上と営業利益は過去最高を更新できる見通しがついたと述べた。
そのうえで「この1~2年に戦争やコロナ禍など価値観や生活様式が一変するといった急激不可逆な変化を目の当たりにしてきた。デンソーはもっとやるべきことがあるのではないかと、自問自答する日が多くなってきた」と語るとともに、デンソーがやるべきこととして、多くの循環の輪をモビリティから社会に広げていくことだとし、今回の2023年の未来像を描いたとした。
デンソーの2035年未来像では、社会活動を止めない、多様な価値観、幸福感に答えることを重点とし、さらに社会に欠かせない5つの流れを示した。その流れとは「人流」「物流」「エネルギー流」「資源流」「データ流」で、これらの流れをつなぐことによって幸福が大きく循環する社会が実現するという。
「モビリティから産まれるモビリティ」など5つの流れから得られる価値
「2035年の世界に向けた技術開発」として発表したのは経営役員CTOの加藤良文氏。加藤氏はまず2035年では「地球保護のための再エネ中心の循環型社会への強い要請」など、世界が形づくられる要素を挙げた。
そこで、デンソーの専門性はモビリティ企業としての「人、モノの移動」、製造業としての「エネルギー資源の最適化」、QRコードを発明した企業としての「データ生成、管理」にあるとし、5つの流れの中から、循環社会実現のために不足するものを技術開発し、仲間づくりを駆使して生み出していくとした。
具体的には、人流では、より安心・安全な移動を実現し、デンソーのグローバルセーフティパッケージの第3世代(GSP3)によって、2025年までに死亡事故の56%を減らし、残りの44%を減らすために2035年に向けて、高性能センサー、インフラ強調システムの開発を進め、これだけではまだ不足として、ドライバーの運転とクルマの周囲の状況を統合することで、安全運転をするアルゴリズムの開発も行なう。
物流では、高齢化と人口減少による労働力不足でトラックドライバーが不足し、2028年には4分の1の荷物が運べないという予測を紹介。デンソーは自動運転と高度な運行システムで対策に取り組むとした。
続いて、エネルギー流では、2035年にものづくりのカーボンニュートラル化を目指す。水素活用で重要な水素生成については、クルマの触媒作りで培ったセラミック技術を重要な資産とし、自ら効率的に水素を生成し、排熱の電気への変換にも取り組んでいく。
資源流では、クルマの製造という順方向の流れに対して、戻りの逆の流れを加えることになる。デンソーでは、回収、解体、再生に取り組むいわゆる「静脈産業」との連携を開始。すでにデンソーから社員を送り込み、解体現場を経験し、課題の抽出、ロボットによる解体選別も進め、高純度材を低コストで取り出すことの実現を目指すとした。さらに、資源を循環させるなかで不足する材料についてはバイオ由来やレアアースフリーの新素材を開発を目指す。
最後のデータ流は、これまでの4つの流れをつなぎ、価値を最大化すること。加藤氏は「自動車産業は日本を例に言えば、約2万6000社からなる。非常に長く、裾野の広いサプライチェーン」とし、自動車製造時などのカーボンフットプリントなどを見える化するためには、誰でも使え、安全にデータ共有ができる標準データプラットフォームが必要とし、デンソーが発明したQRコードとブロックチェーンを組み合わせて技術開発を行ない、他産業へも使えるデータ流の技術を追求していくとした。
さらに、これら5つの流れのつながりで得られる価値として、「カーボンニュートラルシティにおける移動と蓄電の両立などのエネルギーの人流物流をつなぐこと」や「モビリティからモビリティが産まれるような、リサイクルのための資源流と、人流物流のつながり」を挙げ、結果、幸福循環型社会が作られるとした。
成長戦略では、内燃は半減、新規・CASE領域を倍増
続いて、取締役・経営役員CFOの松井靖氏が「デンソーの企業価値向上戦略」として、サステナビリティ経営の推進とROE(自己資本利益率)向上に向けた財務戦略について語った。
サステナビリティ経営については、2035年にカーボンニュートラルを実現するという環境戦略と、安全製品のGSP3やBEV(バッテリ電気自動車)向けの熱マネジメントシステム投入という安心戦略があり、さらにサステナビリティ経営の実践のための浸透活動や仕組みづくりの一例として「サステナビリティKPI」を設定した。
ROE(自己資本利益率)向上では2025年に10%超を目標として、その中で「事業ポートフォリオの変革」を挙げた。松井氏は「内燃製品の収束やCASE領域の拡大といった事業ポートフォリオの変革を通じて理念への貢献と収益性の向上を目指す」と語り、エンジンなどの内燃系については「譲渡を含め、早期収束」と、これまでよりも踏み込んだ内容のスライドを示した。
さらに「内燃製品の収束により減収したリソーセスを半導体を含むCASE領域へとシフトさせる」「世の中のソフトリッチ化が進む中、メカハード主体の設備投資から、ソフト開発にも重点を置いた研究開発にシフトを進める」とし、CASE領域では業界のトップリーダーを目指すとした。
電動化については、「2025年に向けて国内に加え、欧米系や中国の地場メーカーからも多くの引き合い受注があり、昨年のダイアログデーでお伝えしたインバーターの2025年に1200万台というマイルストーンに向けて着実に拡販が進んでいる」と好調ぶりをアピール、デンソーの競争優位性を紹介、CASE領域での売上高の大幅アップの予想を示した。
一方、財務戦略として変動対応力強化として挙げたのは、「外部環境悪化に対する収益改善を、費用低減と価格反映でやり切る」と値上げについて示したこと。「自社努力で吸収しえない費用増を価格に反映し、価格反映の適正なルール化にも取り組む」とし、「これまでの商習慣の見直しも含め、業界の仕事のあり方を変革していきたい」と考えを述べた。
松井氏このほか、在庫の縮減と適正化を目指すとし、財務戦略では資本構成の改善などを挙げ、最後にこれらの戦略を実行するための2023年1月からの組織体制についても説明した。