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横浜市営地下鉄・センター南駅前ロータリーで急速充電専用の駐車枠を用意する日本初の実証実験スタート 2024年3月31日まで実施

2023年2月8日 開催

実証実験の開始式で充電開始セレモニーを行なった横浜市 市長 山中竹春氏(左)と株式会社e-Mobility Power 代表取締役社長 四ツ柳尚子氏(右)

 横浜市とe-Mobility Powerは2月8日、神奈川県横浜市の横浜市営地下鉄・センター南駅前ロータリーで「EV充電器の公道設置に関する実証実験開始式」を開催した。

 この日からスタートするのは、2050年までに脱炭素化を実現する「Zero Carbon Yokohama」に向けた取り組みを進めている横浜市と、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車工業、東京電力ホールディングス、中部電力、日本政策投資銀行の7社が共同出資して充電サービス事業などを展開するe-Mobility Powerが締結した「横浜市内のEV普及促進に向けた連携協定」の一環で行なわれる実証実験。

 横浜市内でBEV(バッテリ電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)を利用しやすい環境を整備するため、公道である駅前ロータリーに充電を目的とした2台分の駐車枠を用意。合わせてe-Mobility Powerの急速充電器2基を設置して、最大30分までBEVやPHEVに充電できる新たなスペースとなっている。

 すでに横浜市とe-Mobility Powerの連携協定により、横浜市青葉区で日本初の「EV充電器の公道設置に関する実証実験」が行なわれており、駅前ロータリーにBEVやPHEV向けの急速充電器を設置するのは今回が日本初の取り組み。この実証実験によって公道に充電器を設置する際の課題や有用性を検証し、同日から2024年3月31日まで実施される。

横浜市営地下鉄・センター南駅前ロータリーに2台分の専用駐車枠が用意された
このエリアはこれまで駐車禁止区間となっていたが、道路を管理する警察とも入念にやり取りして時限的に駐車が可能になる交通規制が実施されることになった
社会実験の実施を紹介する案内板も設置
駅前ロータリーのEV・PHEV充電専用駐車枠は、表通りからロータリーに入って時計回りに進み、一番奥まった位置に設定されている
急速充電器は駐車枠に隣接して各1基を設置。最大出力は50kWで、1回の充電は最大30分まで。先行して実証実験が進められている青葉区しらとり台の公道充電ステーションでは、2台分の駐車枠の間に2台同時充電が可能な急速充電器1基を設置しているが、EVやPHEVは車種によって充電ポートの位置が異なり、場合によって充電ケーブルが届きにくくなるケースもあったという。これを受けて今回は設置方法を変更。どんなスタイルがユーザーにとってより使いやすくなるのか検証を続けていくという
充電ポートが車両のどの位置でも問題がないよう、長い充電ケーブルを設定。充電後のケーブルが公道上に残されても車両や人が踏んでしまったり、つまずいてしまわないよう蛍光テープを巻き付けて目立ちやすくした。言うまでもなく、充電完了後は充電ケーブルをきれいに戻しておくことが利用のマナーで、このあたりの利用実態の調査も実証実験の目的に含まれている
充電の操作を行なうタッチパネルディスプレイ
充電の注意ポイントや連絡先など
利用後の感想などをアンケート調査する二次元コードも用意。すでに運用が始まっている青葉区しらとり台の公道充電ステーションでも多くのアンケートが寄せられ、新しい充電ステーション開設に向けて参考にしているとのこと
開始式で実施された充電セレモニーでは、神奈川県横浜市に本社を構える日産自動車のBEV(バッテリ電気自動車)「リーフ」が使用された

「駅前ロータリー初設置で市民に認識してもらうよい機会になる」と山中市長

横浜市 市長 山中竹春氏

 開始式では最初に、主催者を代表して横浜市 市長 山中竹春氏があいさつを実施。山中氏は「横浜市は全国で初めて駅前ロータリーにEV用の急速充電器を設置いたします。脱炭素に向けて、今は国としてもどんどんとドライブがかかってきております。脱炭素化を実現するためには実にさまざまなことを成し遂げなければなりません。脱炭素に向けてさまざまな技術の革新などが進んでいるところで、それをひとまとめにしてグリーンイノベーション、それによって起きる社会の変革をグリーントランスフォーメーションと呼んでいます。EVは登場してからかなり年数も経過しており、EVがグリーンイノベーションで最初に出てきたかと思います。しかしながら、EV普及率が上がっている北欧に比べ、日本はEV普及率が低いことが現状です。アメリカを見ましてもここ1~2年でEV普及のカーブがグッと増えておりまして、日本においても普及率の向上に国を挙げて考えていくべき時代になっているのだろうと思います」。

「そのなかでボトルネックになっているのが充電器だと思います。いつでもどこでも、まさにガソリンスタンドのように利用できるような状況にならないかぎり、EVは決して普及しないと思います。そういった点で、このように駅前のロータリーに全国で初めて充電器を設置する実証実験というのは大変に意義深いものがあると思います。現在のEVの性能ですと、1台あたり60%のCO2を削減することができると言われています。今後の技術の進展によってこの割合はさらに高まっていくのかもしれませんが、現時点でもそれだけ削減することができます。価格も年を追うごとに下がっていって、お求めやすい価格という時代もいずれ来るだろうと思います。そういった時代も見据え、われわれ横浜市としては充電器をぜひ普及させていきたいと考えております。すでに1か所で設置しており、今回は駅前のロータリーに初めて設置して、人目にも触れやすい形でEVをあらためて市民の皆さまにも認識してもらうよい機会になるのではないかと考えております」。

「今後、こういった充電インフラをどんどん整備していくということは行政の役割の1つだと思っておりますし、市民の皆さまにあらゆる機会を通じて、脱炭素化に向けた取り組みの重要性、そして“われわれ市民1人ひとりに何ができるか”を考えていただくきっかけ作りが重要だと思っております。横浜市はこれからも多様な皆さまとのパートナーシップのもと、日本の脱炭素化をけん引していく決意でございます」と語った。

株式会社e-Mobility Power 代表取締役社長 四ツ柳尚子氏

 続いて主催者あいさつを行なったe-Mobility Power 代表取締役社長 四ツ柳尚子氏は「横浜市さまとは2020年から連携協定を締結させていただき、第1弾の取り組みとして昨年、青葉区しらとり台に日本で初めて公道上の充電スポットを開設させていただきました。非常に人気の高い充電スポットになっており、多いときは月あたり400回の充電利用があります。この数は全国的に見ても、高速道路のサービスエリアでもトップクラスに近いレベルの稼働率になりまして、当時のインタビューで『月に150回ぐらい使っていただければ』とお答えしていましたが、実際には400回を超えることもあって、本当にありがたく思っています」。

「この人気にはいくつかの要素があると思っていまして、1つは公道上にあるので、サッと立ち寄りやすいということ、それから(商業施設内のように)何か買い物をしなければ利用できないといった制約もなく、誰でも使いやすいということ。3つめにはとても視認性が高いので、『ここに充電スポットができたんだ』と分かってもらえることだと思っております」。

「今日はこちらを拝見させていただいて、駅前でものすごい数の人がこの充電スポットを目にすることになると思います。先ほど山中市長からも『充電インフラがEV普及の大きな課題』という言葉をいただきましたが、まさにそのとおりで、現在はガソリン車に乗っている人でも『こんな場所に充電スポットができたんだ』と実感していただくことが充電の不安感の払拭に直結します。こういった視認性の高い目立つ場所に充電スポットを置かせていただくことは、これからのEV社会に向けた大事なステージだと受け止めております」。

「さらにこの場所では、将来的にEVタクシーが充電で利用してもらえるようになれば、タクシープールもあります。さらにバスターミナルもあって、マルチユースのEV充電スポットに成長してもらえると、事業者冥利に尽きるところになります。前回同様に実証実験が始まるわけですが、道路管理者の皆さま、交通管理者の皆さま、さらには地域住民の皆さまのご意見も多くいただきながら、安全第一で取り組んでまいりたいと思います。実証中にはEVユーザーの皆さまにアンケートのご協力をお願いしておりますので、使っていただいた実際のご意見を、今後の新しい充電スポットに生かしてまいる所存です」とコメント。先行して行なわれている青葉区しらとり台の実証実験も好評を得ていることなどを明らかにした。

横浜市会 副議長 髙橋正治氏

 さらに来賓あいさつに立った横浜市会 副議長 髙橋正治氏は「本事業の趣旨である“脱炭素社会の実現”は、将来に向けて大変重要なものであり、そのためには産学官の連携、市民の理解と協力が大変重要だと思います。この横浜においては、渋沢栄一が東京ガスの前身になる会社を作りまして、ここでは石炭を蒸し焼きにしてガスを発生させていました。さらに天然ガスが横浜の根岸から上陸してガスが変わっていく。そして今は何をしようとしてるかと言えば、メタネーションということで、二酸化炭素と水素を反応させてメタンガスを作ることです。200年前には化石燃料を燃やした熱源ではCO2をコントロールしていなかった、CO2を出しっぱなしにしていたのですが、脱炭素ではCO2を出さないだけではなく、出たCO2をまた使ってしまうというCO2の技術革新でもあると思います」。

「そういった意味で、この横浜は新しい技術のプラットフォームとして積極的に役割を果たし、存在感を示していくべきだと考えているところです。このような理念のもと、われわれ横浜市会は、令和3年6月に議員提案条例として『横浜市会脱炭素社会の形成の推進に関する条例』を全会一致で可決したところであります。また、そういった脱炭素を積極的に進めていくということで、横浜市会の清水富雄議長が中心となって脱炭素の形成に向けた議連も作っているところでございます。誰一人取り残されることのない社会を実現し、次世代に向けた責任をまっとうするため、あらゆる分野において持続可能な発展をうながし、脱炭素社会の形成を推進していく必要があります。脱炭素というものと同時に、炭素、炭酸ガス、CO2さえも利用していく、そういった循環型社会を横浜市会としても、横浜がいっそう魅力あふれる都市となるよう、皆さまの声に真摯に耳を傾けながら全力で取り組んで脱炭素を実現していきたいと思います」と述べている。

開始式では記念のテープカットや日産「リーフ」を使った充電セレモニーも行なわれた
山中市長と四ツ柳社長の2人による充電セレモニー(1分18秒)