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日産、2022年度 第3四半期決算は営業利益51.4%増の2897億円 一方でロシア市場撤退の一過性損益で当期純利益は42.9%減の1150億円

2023年2月9日 開催

日産自動車株式会社 COO アシュワニ・グプタ氏

 日産自動車は2月9日、2022年度 第3四半期(2022年4月1日~12月31日)の決算を発表し、オンラインで決算説明会を開催した。

 2022年度 第3四半期の売上高は前年同期(6兆1540億3100万円)から21.9%増となる7兆4996億9100万円、営業利益は前年同期(1912億8700万円)から51.4%増となる2897億100万円、営業利益率は3.9%、当期純利益は前年同期(2013億3500万円)から42.9%減となる1150億4000万円。また、第2四半期累計3か月のグローバル販売台数は前年同期(90万4000台)から6万2000台減の84万2000台となった。

日産自動車の2022年度 第3四半期財務実績

 決算説明会で日産自動車 COO アシュワニ・グプタ氏は、購入者への納車が遅れていることに謝罪。また、生産を増やす努力を続けていることについて、これは日産の従業員、サプライヤー、販売会社のスタッフ、パートナーが続けている努力と献身の結果であると感謝の言葉を口にした。

 2022年度 第3四半期の財務実績については、販売台数は減少したものの、車両1台あたりの売上高が改善し、円安の影響も売上高を押し上げる要因になっている。営業利益は51.4%増となった一方で当期純利益が42.9%減の1150億4000万円になっているが、これは前年度にダイムラー株の売却益が追い風となり、一方で今年度はロシア市場からの撤退による損失という一過性の影響が大きく出たことによる結果だと説明された。

2022年度 第3四半期の持分法適用ベースと中国合弁会社比例連結ベースの財務実績。ロシア市場からの撤退による一過性損益で当期純利益が押し下げられているが、各項目で前年同期を上まわる結果に
2022年度 第3四半期の累計9か月における持分法適用ベースと中国合弁会社比例連結ベースの財務実績
2022年度 第3四半期における営業利益の増減分析。為替の増益を原材料価格の高騰が上まわっているが、インセンティブの抑制などによる販売パフォーマンスによる増益効果で営業利益も増益となった

 自動車業界全体に影響している半導体の供給不足の影響を日産でも受けているが、複数の対策を組み合わせることにより、第3四半期には生産台数の増加を加速。9か月累計でも増産を実現した。

 しかし、「新型コロナウイルスの感染拡大による中国のサプライチェーン分断」「米国向けコンパクトセグメントのモデルに使用する半導体の供給不足」「世界的な物流のひっ迫による車両輸出の滞り」といった3つの課題により、販売台数は減少する結果となっている。

 第3四半期3か月の市場別販売台数では、ホームマーケットである日本市場で増産の取り組みが奏功し、11.4%増の10万4000台を販売。「ノート」「ノート オーラ」「サクラ」「エクストレイル」など複数のモデルが好調で、とくにノートとノート オーラはセグメントシェアを15.7%まで拡大。また、サクラの販売も好調で、これは日産のBEV(バッテリ電気自動車)人気が現われたものとしている。

 中国市場では新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンの影響が引き続き集客力を圧迫。6.9%減の29万2000台となった。販売ラインアップでは最量販となる「シルフィ」が3年連続でセダン販売の1位をキープしているという。

 北米市場では「セントラ」「ヴァーサ」「キックス」といったコンパクトカーに使用する半導体の供給に不足が出たことの影響により、2.1%減の25万6000台を販売。米国ではSUVの販売が堅調に推移しており、「ローグ」の台あたり売上高が9%増え、セグメントシェアを7.5%に拡大。「パスファインダー」「QX60」もシェアを伸ばしているとした。

 このほか、欧州市場は14.9%減の7万7000台を販売しているが、2022年10月に撤退を発表したロシア市場の分を除外すると1.8%増になる計算とのこと。「キャシュカイ」は英国市場で最も売れているモデルとなっており、台あたり売上高を13%高めているとアピールした。

2022年度 第3四半期3か月の生産台数と販売台数。日本以外の市場で販売減となっている
「サクラ」は「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」「2022~2023日本自動車殿堂カーオブザイヤー」「2023年次RJCカーオブザイヤー」の三冠を達成
2022年度の通期見通し。前回発表から売上高、営業利益、当期純利益を据え置きとした

 2022年度の通期見通しについては、販売台数を上半期決算の説明時に発表した370万台から30万台減の340万台に下方修正したが、これ以外の売上高、営業利益、当期純利益などの数値は据え置き。想定する為替レートはドル/円を135円から134円、ユーロ/円を137円から140円に修正している。

販売台数の通期見通しを370万台から340万台に下方修正。中国市場の販売減が大きく影響する形になっている
2022年度通期見通しにおける前回発表からの増減要因

 最後にアシュワニ氏は、「各市場でワクワクする新型車を投入することで自動車事業の利益が回復してきています。これらの新型車に対するお客さまのご支持が非常に高いこともうれしい限りです。これは日産車の特長である『品質』『革新性』『価値の高さ』を証明し、それが評価されているということです。この勢いを持って、私どもは事業構造改革である『NISSAN NEXT』の目標を達成できると確信しております」。

「さらに今週は、ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスにおけるワクワクする新たな取り組みを発表いたしました。これにより、24年間にわたる歴史を持つアライアンスのパートナーシップを次のレベルに引き上げ、各社に新たな成長のチャンスを提供してくれるでしょう。アライアンス各社は力を合わせて新たな1ページを開き、イノベーションを加速させてコストの効率化を進めてまいります」。

「アライアンスのパートナーシップにより、日産は目まぐるしく変化する市場で、より機敏に革新と改革を進め、モビリティとその先への可能性を広げていきます。われわれは正しい方向に向かっており、情熱とイノベーション、チャレンジャー精神は、日産を長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』の実現に近づけていきます。全社を挙げて持続可能な成長に向け、あらゆる取り組みを集中させることで、当社のポテンシャルを100%発揮させ、未来に向けて着実に前進していきます」と締めくくった。

質疑応答

質疑応答で質問に回答するアシュワニ氏

 質疑応答では、2月6日に行なわれたルノー・日産・三菱自動車のアライアンスについての発表内で、ルノーグループ CEO ルカ・デメオ氏が「アライアンスのリバランスによって数億、数十億ユーロのシナジーが発生する」と発言したことについて、この効果がどれだけ日産に影響するかについて質問された。

 これに対してアシュワニ氏は「デメオ氏が発言していたのは価値の高いプロジェクトについてで、これは今後のアライアンスの取り組みで大切な柱になるものです。5つのプロジェクトが進められており、『数多くのモデルを投入することを計画しているインド市場での成長計画』『商品を共有して最大限に車両セグメントをカバーしていく中南米戦略』『EVによる循環型経済』『ルノーが生産して日産が欧州で採用するフレックス eバン』『協力して取り組む次世代C-SUV』というものです。これらを勘案して、これらがすべて実現したあかつきにはアライアンスとして何億円もの効果が出ることでしょう。ここから日産にどれだけ効果が出るかを考えるのはまだ時期尚早で、これらはパートナーシップで共有するものになります。デメオ氏が言っていたのはアライアンス全体で発生する効果についてで、ルノー1社で手にするものではありませんね」と回答している。

日産自動車 2022年度 第3四半期決算発表