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ディフェンディングチャンピオンとして迎えるWEC 2023開幕戦に向けてTGR WEC小林可夢偉チーム代表と平川亮選手に意気込みを聞いた
2023年3月15日 16:59
- 2023年3月15日 発表
WEC(世界耐久選手権)に参戦するTGR(TOYOTA GAZOO Racing) WECチームのチーム代表となる小林可夢偉選手、および2022年同チームの8号車 GR010をドライブして参戦初年度で世界チャンピオンに輝いた平川亮選手の2人が、3月15日~3月17日(米国時間)に行なわれるWEC 開幕戦「セブリング1000マイルレース」から新しいシーズンのスタートを切ることになる。
それに先だって3月11日~12日にはプロローグと呼ばれる公式テストが行なわれ、TOYOTA GAZOO RacingのGR010は8号車がトップタイムをマークし、7号車が僅差で2番手に続く結果となった。2023年はWECのハイライトと言えるル・マン24時間レースが100周年を迎える記念の年。2022年までのトヨタ、プジョーという2つのマニュファクチャラーに加えて、2023年はLMDhというアメリカのIMSA規定で作られた車両で参戦するフェラーリ、ポルシェが加わるなどより競争が激しくなっており、6月に行なわれるル・マン24時間レースの行方を占う上でも、WECの序盤戦は重要なレースになっている。
そうしたTGR WECチームの小林可夢偉選手 兼 チーム代表、平川亮選手の2人がオンラインで会見に応じたので、その模様をお伝えする。
100周年のル・マン24時間レースという1度きりのチャンス、ミスなく戦うことが何より大事
――小林可夢偉選手 兼 チーム代表から今シーズン最初のテスト(プロローグ)を終えた感想を。
小林選手:GR010にアップデートを加えてから初めて公式テストを走り、ライバルと一緒に初めて走った。他のチームはセブリングを結構走り込んできており、われわれは新しいクルマで初めて走ったのだが、フィーリングはよかった。アップデートされた車両に初めて乗ったとき、乗った瞬間にいいなと感じていた。それがバンピーなここセブリングでも同じだったことは、よい感じでプロローグを終えられた。
――プロローグで1-2をとったが、プジョー、フェラーリ、ポルシェといったライバルとのBOPに関してはどう感じたか?
小林選手:BOPを見たときにはなかなか(大変だな)、他に比べると重いしパワーも少ないかなと感じたが、BOPのルール上はソフトウエアでシミュレーションしたもので、みんなイーブンでやっていることなので(しかたがない)。とりあえず走ってみて、BOPの数字を見ただけではどうこう言えないなというのが感想だった。
――開幕戦が行なわれるセブリングの、ピットロードの入り口はどうか? 本年は少し変えて、また昨年に戻すという話になっているようだが。
小林選手:ドライバーの立場として昨年のときにピットレーン入り口に関してはもう少しよい方法はないのかという話をしていた。それで本年対処したようだが、逆にそれが危なくなっているという状況だった。実際抜きにいっているハイパーカーとGTカーが交錯したりして危なくなっており、実際にアクシデントも発生したため、昨年のレーンに戻すことになった。WECのレーンは標準のレーンでないのでベストなものを見つけるのが難しい。
――競合に関してはどう判断しているか?
小林選手:フェラーリは結構速いのではないかと思っている、タイムだけを見ると他のLMDhと同じところにいるのだけれど……もう少し見ていかないといけないと思っている。
――本年からタイヤウォーマー禁止になるが、ピットアウトしたときに冷えたまま始まるフィーリングは?
小林選手:昨年のブランケットで温められたタイヤと同じようなタイヤではないと感じている、本当のところはミシュランにしか分からないが……IMSAで使っていて、ル・マンでも走れるような温まりがよいタイヤを用意しているのではないか。確かに、冬のテストではウォームアップは苦戦していたが、気温が高いところにいくとわるくない。ただ、(ピットから)出た瞬間は危険だし、気温が低くなる朝一は少し危険で、シビアになっている。
自分たちはスーパーフォーミュラやSUPER GTなどで、ブランケットなしで走っていて、極限状態で滑るのは経験があるので、そこまで違和感はない。しかし経験がないドライバーはみな「危険だ」と言っている。実際、フェラーリの52号車は冷えた状態のタイヤでクラッシュして日曜日は走れていない。
――プロローグで走って、ロングランの評価は?
小林選手:タレないように使うしかないので、セッティングでカバーし、走り方で合わせていっている。
――ル・マン100周年、盛り上がってきたWEC、気持ちの部分で違いはあるか?
小林選手:正直ない、自分たちがやるベストを尽くすだけだ。どちらかと言えば、チーム代表としてやることは増えている。ドライバーとしてはライバルが増えてきたから何かをやるのではなく、常にベストな走りをして、ベストなクルマを作っていくだけだ。何か意識が変わるということはない。
――3カテゴリーになって、トラフィックの状況、LMP2との差は?
小林選手:正直、ハイパーカーが増えた分、GTが減った。トラフィックがあるのは変わらないけれど、そんなに大きな影響はあるかな? というレベル。むしろピットアウト後の冷えているタイヤをつけているクルマが結構危険だ。冷えているタイヤなので、コーナーとかで大きく減速しているが、それがなぜそうなっているのかドライバーからは分からないので、カテゴリーを問わず危ない瞬間はある。
――トヨタ以外で興味がある車両はあるか?
小林選手:トヨタしか興味ないです(笑)。気にならない、気になるというか、くれるというなら全部欲しいけれど(笑)。今は気になるクルマは正直ない。見た目では分からないが、フェラーリとかは素人が作ったクルマではなくF1チームが作ったクルマという感じがある。では実際に走ってどうなのかと言われれば今はハテナだ。フェラーリのドライバーに話を聞くと、耐久テストで走り切れていないので信頼性に不安があると言っていた。トヨタとしては、これまでル・マンやWECを長年やってきたということに大きな意味があると感じている。
――本年から参戦するマニュファクチャラーも増え、競争が激しくなっていると思うが、プレッシャーはあるのか?
小林選手:プレッシャーがあるのかないのかという意味では、100周年という1度きりのチャンスをミスなく勝ちきることが大事だ。また来年があるさ、ではなく、一度しかないこの舞台でミスなくやりきることが最大限のチャレンジだと思う。BOPもあるので、速いクルマを作るということではなく、強いクルマを作り、特性としてこのサーキットは苦手だよね、ということを作らないことが大事だ。プレッシャーという意味では自分たちが力を出し切って勝つ、そこに大きな価値が出てくると考えている。
――天気に関してはどうか、昨年は豪雨と雷の警報でレース中断のまま終了になったが……
小林選手:天気予報では土曜は雨だが、金曜までは大丈夫となっている。フロリダの雨は降ったらどーんと降ってくる形で、それが来るとすごいことになる。雷に関しては、一昨年だったかにNASCARで雷に打たれてお亡くなりになった関係者がいて、それから雷の予報が来たらやめるという措置が取られていると聞いている。
――ライバルよりもずっとやってきたことでいいことはあるか?
小林選手:やり続けることに意味があった。こうやってここ(セブリングの公式テスト)という現場に来てもトラブルはないし、われわれのチームはいろいろなことを経験済みだ。例えばポルシェも耐久レースには長い間出ている歴史もあるが、今回はチームも新しいし、クルマも直前になってようやくできたと聞いている。そうした経験での差が大きいと感じている。
「プロローグの走り出しから速いタイムを出せており、自分としては順調」と平川亮選手
――平川選手に、ブランケットなしでの本年、SUPER GTでもスーパーフォーミュラでも経験しているが、実際に走ってみてどうか?
平川選手:冬のテストでやりだしたのだが、そのときは結構きつくて、路面温度が低い状況だと厳しかった。そういう状況でも、SUPER GTで経験したときよりはウォームアップしてくれた。ただ、早く温めたからといって、タイムは稼げるけれど、タイヤを痛めてしまう可能性があるので、まだまだ手探りの状態だ。
――セブリングに対しては?
平川選手:プロローグの走り出しから、速いタイムを出せていたし、自分としては順調にはきている。まだまだライバルはすべてを見せてきていないと思うので、自分としてはいろいろできるようにしていきたい。
――今シーズン初めてのライバルが増え、ディフェンディングチャンピオンで迎える初めてのレースについてどう思うか。
平川選手:パドックに他のハイパーカーのクルマがいるのを見るのは、違う景色で新鮮。プロローグでSCの練習をして、ポルシェやフェラーリがいてリスタートになるのは昨年とは違うなと感じた。ただ、気持ち的にも準備はできている。昨年チャンピオンをとって、ディフェンディングチャンピオンとして恥のない走りをしたい。焦ることなく、いつも通りやっていきたい。
――他のクルマで気になっているクルマがあるか?
平川選手:どのクルマも間近で見たわけではないし、あまり興味がないというのが本音(笑)。レースのグリッドでじっくり見てみようと思っている。
――チャンピオンになって有名になったなという実感はあるか?
平川選手:パドックにいて、他のチームやドライバーに声をかけてもらえるので、顔は覚えてもらえたなという時間はある。また、今回はテストでそんなに多くなかったが、ファンの方にも名前を覚えていただけたなという実感はある。
――最後に抱負を。
平川選手:自分としては昨年のチャンピオンとして迎える初めてのレースなので、名前に恥じないようにレースをしたい。準備はできているので、速くて安定した走りをして、TGRで1-2を目指していきたい。