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ホンダ、世界最大の半導体ファウンドリTSMCと戦略的協業 三部社長は、「新しいつながりとして自動車会社と半導体メーカーができた」

TSMCとの戦略的協業を発表する本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏

ホンダが世界最大の半導体ファウンドリTSMCと戦略的協業

 本田技研工業は4月26日、取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏、取締役 代表執行役副社長 青山真二氏による「2023 ビジネスアップデート」を開催。その中で半導体不足による生産問題の抜本的な改善のため、世界最大の半導体ファウンドリであるTSMC(台灣積體電路製造股份有限公司、Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)と戦略的協業で基本合意に達したと発表した。

 2020年以降、世界的な半導体不足のため多くの自動車メーカーが生産遅延などの問題に直面した。ホンダも同様だが、三部社長は「足下の半導体不足については改善が見られています」と語り、現時点では解決に向かっているとの見方を示した。

TSMCとの話し合いは取締役 代表執行役副社長 青山真二氏(右)が担当。三部社長(左)とともに質疑に答えた

 その上で長期的な視点による半導体の安定調達を行なうため、リスクセンシングの強化と半導体メーカーとのダイレクトな関係を築くことで抜本的な対応を進めていくとし、その考え方に基づいた取り組みとして世界最大の半導体ファウンドリTSMCと協業した。

 TSMCは世界最大の半導体メーカーとして知られているが、その特徴として半導体生産に特化している点が挙げられる。TSMC自身は半導体設計は行なわず、半導体設計のためのデザインルールなどを提供。EDA(Electronic Design Automation)ベンダーなどがデザインルールに従った設計ツールを供給し、半導体を作りたい会社はEDAを使って半導体設計を行なうことで、TSMCで製造可能な半導体の設計データを作り上げることができる。

中長期的に安定して、TSMCから半導体供給

 青山副社長は「基本的に中長期的に安定してTSMCさまから半導体を確保していくという観点に基づいて、相互に必要な技術、アーキテクチャ、あるいは生産などに関する情報の共有をエンド・トウ・エンドで行なう。それにより、TSMCさまが供給する半導体を中長期的に安定確保して、我々のサプライチェーンの中で活用を図っていく」と述べ、さまざまな半導体を調達していく考えを示した。

 青山氏はエンド・トウ・エンドで情報共有と語るが、これまで半導体は部品の1つとして位置付けられ、車体生産を行なう自動車メーカーが直接やりとりするなどは多くなかった。自動車メーカーがやりとりする相手は、半導体が実装された基板やモジュールなどを納入するティア1サプライヤーで、ティア1はティア2、ティア2はさらにその先というようなサプライチェーンが築かれていた。

 自動車メーカーと半導体製造メーカーが直接話をする、情報を交換するということは、半導体が自動車生産において最重要の製品に位置付けられたということになる。

 ホンダは2輪車において、2050年までにグローバルで電動2輪車を合計10モデル以上投入。2030年にホンダの総販売台数の約15%にあたる年間350万台レベルの電動2輪車の販売を目指す。

 4輪車においては、2040年までにEV/FCEV販売比率をグローバルで100%。2030年までにグローバルでEVの年間生産200万台超を計画。これらはEVであるため、当然ながら1台あたりでも大量の半導体を必要とするし、2030年には数千万個の半導体が必要になる。

 TSMCの製造ラインも有限であるため、戦略的協業とは製造台数見込みなどを情報交換し、製造ラインの確保や希望するプロセスルールのライン確保を行なうことで安定したEVの製造を実施していくという意図だろう。

 三部社長は、「一般論として従来は、自動車会社と半導体メーカーが直接話をすることは、ホンダを含めてほとんどなかったと思います。今回の半導体不足という状況の中で、新しいつながりとして自動車会社と半導体メーカーができた。その中でTSMCさまとも合意に至った。SoC(System On Chip)と言われるような半導体は、自動車会社と半導体メーカーが話をする必要も出てきているので、今後は自動車会社とティア1サプライヤー、自動車会社と半導体メーカーという形で半導体が進化していくと考えている。我々は1つの手として、TSMCさんと組んで進めていきます」と説明。

 自動車会社と半導体メーカーが直接つながることで、SoCのような半導体が進化していくと語った。