ニュース
橋本洋平は新型「アルファード」「ヴェルファイア」をどう見た? 進化点を解説
2023年6月21日 21:33
- 2023年6月21日 発売
- 540万円~872万円(アルファード)
- 655万円~892万円(ヴェルファイア)
今回のフルモデルチェンジは意外性の連続だった。まずは販売チャンネルの統合、そして販売台数不振などもあり、消滅すると噂だった「ヴェルファイア」の姿があったことだ。
「アルファード」に対してちょっとヤンチャな顔つきだったヴェルファイアは、先代モデル末期には全体の数%に販売台数が落ちていた。圧倒的な歴史があるアルファードを前にすれば、そのスキンチェンジと言えるヴェルファイアがなくなるのは自然な流れだろうと大半がにらんでいたと思う。事実、トヨタ社内では廃止される運命にあったというが、その話が広まるとヴェルファイアを支持する声が殺到。開発、販売店、そして一部VIPアドバイザーなどがヴェルファイアを残すべきだと強い感情をあらわにしたという。愛されたアイコンをなくすべきではないと……。
かくして新型ヴェルファイアが壇上にあったわけだが、今回の驚きはそれで終わりじゃない。なんとアルファード&ヴェルファイア(以下アルヴェル)で搭載エンジンユニットが一部違っているのだ。ハイブリッドは2.5リッターのいわゆるTHS-IIだが、ガソリンはアルファードが2.5リッターの自然吸気でトランスミッションはSuper CVT-i、ヴェルファイアが2.4ターボでトランスミッションはDirect Shift-8ATとなる。
さらにボディ、バネ、ダンパー(周波数感応型)、タイヤ&ホイール(アルファードは17&18インチ、ヴェルファイアは19インチを標準装備)、そして電動パワーステアリングまで2車で味を変化させてきたというのだから尋常じゃない。ヴェルファイアにはフロントパフォーマンスブレースを入れ、応答性をさらに向上させているところも興味深い。スキンチェンジだけで終わらないこだわりある造り込みが行なわれたのだ。方向性としてはアルファードはコンフォート寄り、ヴェルファイアはスポーティ寄りといったところだろうか?
それ以前に、今度のアルヴェルは根本的に見直しが行なわれており、RAV4、ハリアー、クラウンなどで使われているGA-Kプラットフォームを新採用。そこに磨き込まれたボディを載せている。B&Cピラー&テールゲートは、ルーフとフロアともつなげた環状構造とすることで、大空間キャビンの変形を抑制。フロントドア開口まわりも超ハイテン材を多様した環状構造とすることでボディ補強と軽量化を実現している。さらにフロント~リアロッカーをまっすぐ通し、ボディ補強とボディねじれ剛性を向上。先代はこの部分の強度が足りず、Bピラー以降の動きにうねるような遅れが出ていた状況を解消することができたそうだ。これらトータルでボディ剛性は50%アップとなる。
さらに2種類の構造用接着剤を塗り分けているところも特徴的だ。シートの振動低減に効く高減衰性接着剤と、操縦安定性に効く高剛性接着剤を使い分けている。2列目の座面には防振ゴムをシートレールとシートクッションフレームの間に設定。さらに背もたれには低反発ウレタンパッドを、シートクッション部には座圧分散性の高いウレタンを奢ることで振動を遮断している。
また、2列目後部のフロアからリアサスペンションメンバーへ向けて床下Vブレースも装備。ボディの変形を抑制している。開口部の大きいスライドドアを持つ車両は、2列目あたりが共振点となり、フロアやシートに振動が出やすい傾向にあるが、これらの対策によって振動のレベルは従来型の3分の1に収めることに成功。走行時に文字が書けるほどの快適性を確保しているというから驚きだ。ここまで手を入れてくると、アルヴェルをベースに今秋登場するというレクサス「LM」でネタが残っているのかが心配になってくるほどだ。
スーパーロングオーバーヘッドコンソールによる照明と空調の充実、左右独立ムーンルーフや上から下りてくるパワーサンシェードなど、かつてのミニバンでは味わえなかった世界もきちんと提供しているところも魅力的だ。また、3列目の跳ね上げ位置を2か所設けることで、テールゲートギリギリの位置でも跳ね上げが可能となり、結果として2列目を最後方にしても豊かなリクライニングが可能に。一方、ラゲッジ脇にはデッキサイドセカンドパワーシート操作スイッチを備えることで、ラゲッジスペースを手軽に広げることができるようになった。このように飛び道具だけでなく使い勝手を磨き上げたと思える部分が多いところも好感が持てる。
このように隅々まで改めた今度のアルヴェルはかなり魅力的な1台だと思えた。個人的にはかつて子育てのために仕方なく乗ったミニバンだったが、ここまで全方位で磨き上げたこのクルマなら、もう一度トライしてみたいとも思えてくる。2台の走りの違いは一体どうなっているのか? カッコや派手さだけでは語れない、久々に「早く乗ってみたい!」と興味をそそられるクルマの登場劇だった。