富士スピードウェイのショートサーキットで開催された「D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup2023富士」 SPKとダイハツ工業は「モータースポーツを起点としたモノづくり、コトづくり」の一環として、ダイハツ車ユーザー参加型のモータースポーツイベント「D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup」を2022年より開催している。
このイベントは全国各地のサーキットにて、「誰もがモータースポーツを楽しめる」をテーマに、ノーマル車やスポーツモデル以外の車両でも参加でき、車種や運転レベルごとにクラスを分けて、安全に走れるよう走行区分やルールまで整備している。
また、走行時に出た疑問や不安点を解決できるよう、インストラクターのよるフォロー体制もとるなど、参加への敷居を低く設定し、同時にスポーツ走行に慣れた人やスポーツ走行から本格的な競技へステップアップしたいと思っている人にとっても有意義な走行会となっている。
今回取材したD-SPORT & DAIHATSU Challenge Cupは、サーキット走行を楽しむ「D-SPORT Cup」と、タイムアタック形式の「DAIHATSU Challenge Cup」が融合した走行会イベントで、「D-SPORT Cup」は、クラス分けとレベル分けを行なったサーキット走行会で、「誰もがモータースポーツを楽しめる」という内容。「コペン エキスパートクラス」「コペン ビギナークラス」「ターボクラス」「NAクラス」「オープンクラス」「レディースクラス」の全6クラスが設定されている。
D-SPORTカップのクラス分けは6つ。こちらはコペン限定で中上級者向けの「コペン エキスパートクラス」 コペン限定で初心者向けの「コペン ビギナークラス」 ダイハツ軽自動車でターボ車を対象とした「ターボクラス」 ダイハツ軽自動車で自然吸気エンジン車を対象とした「NAクラス」 OEM車、登録車を含むダイハツ車の「オープンクラス」 もう1つの「DAIHATSU Challenge Cup」は、JAF公認のスピード競技という位置づけで、タイムアタック形式。完走をするとJAFの公式競技に参加するのに必要な国内Bライセンスを取得する権利が得られる。高い集中力が必要なタイムアタックは、スポーツ走行に真剣に取り組む人にとってやりがいがあり、さらにJAF競技参加への入口にもなる。それにいまはまだ競技には参加しなくても、その資格を持つことはクルマを趣味とする人にとって個性的な証にもなるので、そうした目的で「DAIHATSU Challenge Cup」に参加するというユーザーも少なくない。
ダイハツ軽自動車でターボ車を対象とした「ダイチャレ ターボクラス」 ダイハツ軽自動車で自然吸気エンジン車を対象とした「ダイチャレ NAクラス」 「DAIHATSU Challenge Cup」に完走するとJAF国内Bライセンスを取得する権利が得られる。取得希望の場合は書類を作成しJAFへ提出する。なお、JAFの会員であることが前提なので未加入の場合はJAFへ加入することが必要 実際に参加した場合の1日の流れとは?
D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup2023富士の1日の大まかな流れを紹介しよう。
今回は静岡県にある富士スピードウェイのショートサーキットで開催され、事前のエントリーが受理された参加者はサーキットに到着後、参加受け付けとサーキット走行向けの車検を受ける。
この車検ではヘルメットやグローブ、長袖、長ズボンなどドライバーの装備が整っているかなど、安全に関わる面のチェックが中心となる。
それが終わると全員参加のドライバーズミーティングが行なわれる。ここでは主催側のあいさつから当日の流れ、サーキット走行のルールや注意点など重要なことが伝えられる。
今回のD-SPORT & DAIHATSU Challenge Cupでは、ダイハツ工業 コーポレート統括本部 DGR主査兼D-SPORT Racingチーム代表の井出慶太氏と、D-SPORT Racing Team ゼネラルマネージャーの柴正雄氏(SPK株式会社)があいさつを行ない、サーキット走行についての説明は、D-SPORT Racingチームの殿村裕一氏と相原泰祐氏が行なった。
朝は参加受け付け後に安全装備のチェックを中心とした車検が行なわれる サーキット走行では車内の荷物は下ろす必要があるが、降ろしたものを置いておくためにポップアップテントを用意してくる人は多い。雨天などではとくに重宝する。ポップアップテントはしまうとコンパクトになるので軽自動車にも向いている 今回は富士スピードウェイのショートサーキットで開催。写真は朝のドライバーズミーティングの風景 ダイハツ工業株式会社 コーポレート統括本部 DGR主査兼D-SPORT Racingチーム代表の井出慶太氏のあいさつ。ダイハツ工業による不祥事を参加者におわびしたのち、D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cupが開催できた喜びの気持ちを語った D-SPORT Racing Team ゼネラルマネージャーの柴正雄氏(SPK株式会社)は、参加者に向けて「安全にそして無事に1日を楽しんでほしい」と呼びかけた ダイハツ工業の殿村裕一氏。今年はD-SPORT RacingチームからコペンGRスポーツで「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ」に参戦している ダイハツ工業の相原泰祐氏(GRカンパニーに出向中)。ラリージャパンへも参戦したラリードライバーで、今年はD-SPORT Racingチームから「TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジ」にダイハツ ロッキーで参戦している 富士スピードウェイのショートサーキットは、元レーシングドライバーの関谷正徳氏の監修によって設計されたコースで、コーナーの組み合わせにより18種類のコースレイアウトが可能。また、地形を生かしてミニサーキットとしては大きな高低差があるところも特徴になっている。
そのコースを利用するD-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup 2023富士では、午前中を各クラスともに練習走行の時間に充てている。とくに最初の走行は、まずは落ち着いてコースを体験してもらうことを目的としたもので、インストラクターが乗る先導車がスローペースで数周隊列を引っ張る。
先導走行後は各自フリー走行になるが、全員が一気に全力で走る必要はない。まだ、慣れるためにペースを上げたくない人は抑え気味で走ってもなんら問題はないが、コース上にはハイペースのクルマが出ているので、それらと共存することが重要だ。
そのために、事前のドライバーズミーティングで、コース上での他車との関係や抜かれ方、抜かし方などをちゃんと説明してくれている。今回の走行会でも最初はクルマごとのペースが違うことも多かったが、見た限り、すべてのクルマがドライバーズミーティングでの注意点を守っていたので危険と感じる場面なかった。ここはD-SPORT & DAIHATSU Challenge Cupの各開催に共通する特徴である。
走行順がきたらピットロードへ整列。この時点でヘルメット、グローブ、シートベルトなどは正しく装着していることが最低条件 最初の走行枠ではインストラクターの乗るクルマがスローペースで先導し、コースに慣れる時間を設けている。これを利用して余分な緊張をとりのぞこう 走行中は後方の確認を徹底して、速いクルマの接近を見逃さないようにする。そしてストレート区間で安全に抜いてもらうor抜くというルール D-SPORT Racingチームに所属するフリーアナウンサーの上原あずみさんもD-SPORT Cupへ参加していた 今回の参加目的は出場を予定している「K4GP」に向けての練習とのこと MTのコペンGRスポーツで走行。ふだんからトヨタ「86」のMT車に乗っているのでスムーズに乗りこなしていた フリーアナウンサーの上原さんが着用しているのはSPKが取り扱う「アルパインスターズ」のレーシングギア。走行会を趣味とするならレーシングスーツなどをそろえるのはお勧め。気持ちが引き締まるだけでなく、運転のしやすさや安全性が高まる.趣味だからこそ、楽しく走れてリスクを抑える面への投資はありだろう コース外のパドックには、ダイハツの「Nibako(ニバコ)」を、ダイハツ工業とSPKともに用意 ダイハツ工業のニバコは、コペンやダイハツのモータースポーツの歴史を紹介する展示を行なう こちらの冊子はダイハツの技術会によってまとめられた過去のダイハツ車を紹介する内容。社内向けなので貴重なものだが、スタッフに「見たいです」と伝えれば見せてもらえる D-SPORTのグッズ販売や、アルパインスターズなどの質問や相談もできる 参加者に配られたのがL880系、LA400K/A系それぞれの「コペン」ロゴが入ったコッペパンならぬ「コペンパン」 ダイハツ沼津販売株式会社も車両を展示。こちらはコペンGRスポーツのデモカーも走行させていた ターボクラスに参加していた「たつ」さん。クルマはミラ アヴィのMT車。ふだんの足として乗っているクルマなのでノーマルだが、「スポーツ走行に興味があったので参加した。初のサーキットは楽しい」とのことだった ミゼットIIでダイチャレNAクラスに参加している「百式」さん。まれなクルマだが、保存的に乗るのではなく仕事にも使用しているというところがミゼットIIらしくていいところ。タイヤは通年で履いているオールシーズンタイヤだったので、サーキットレベルのスピードではかなりスライドしたそうだ NAクラスの「まさを」さん。NDロードスターも所有して、サーキット走行やジムカーナを楽しんでいるという。ミラは手に入れたときからスポーツ走行仕様だったそうで、「エンジンはNA660ccなのでパワーはないが、そのぶん速く走らせるにはコツがいるという部分に面白みを感じている」とのこと ミラターボTR-XXでターボクラスに参加の「ミラゾウ」さん。過去にも同じクルマに乗っていて、乗り換えはしたものの再び乗りたくなって入手したという。程度もよく基本的にノーマルだが、足まわりは純正形状のスポーツ仕様に変更。「ダイチャレは初参加で楽しんでいるが、壊すとパーツがないこともあるので慎重に走る」とのことだった お孫さんと一緒に来ていた「mani4316」さん。現在は引退しているが以前はトヨタにてF1を含むモータースポーツ用のエンジン開発に携わっていたそうだ。現役時代は車両製作に徹していたので走ることはなかったそうだが、引退後にコペンを手に入れたことで「走る側になってみた」とのこと。走ることも楽しいと語ってくれた レディースクラスの「うみうし」さん。サーキットのタイムアタックに打ち込むご主人の影響でスポーツ走行に目覚めたという。カスタマイズもスポーツ指向だが、ドレスアップも好きなので「見た目が好みのスポーツパーツ」をチョイスしているという。富士スピードウェイのショートサーキットは「初めて走るのでとても緊張している」とのことだった ダイハツ沼津販売のデモカー。ダブルエントリーでダイチャレターボクラスとコペンビギナーに参加。ダイハツ沼津販売ではクルマの会社として地域とつながる活動を行なっていて、このコペンGRスポーツもその一環として制作したもの。若い人を含めて多くの人にクルマ好きになってほしいという思いから、エリア各地のイベントに車両を展示しているとのこと プリウスのダイハツ版「メビウス」、そしてコペンROBE、コペンの3台はダイハツ工業の用品開発部門の方々。仕事ではなくて趣味として参加。メビウスの「しゅーま」さんはTOYOTA GAZOO RacingラリーチャレンジにC-HRで参戦した経歴を持つ。400系コペンは室長の「ともにい」さん。サーキット走行は2回目。「もっと自分は速いと思っていたけれど上はいますね(笑)」と冗談交じりで感想を語ってくれた。そして880コペンの「あり」さんはサーキット初走行だが、上司のともにいさんいわく「けっこう速いです」とのことだった MCは運営担当の勝又氏が担当。手のあいている時間には上原さんも参加。モータースポーツでは初MCだったという 現場は分かりやすくてスムーズな進行となっていた。オンタイムで進行するのはスタッフの頑張りによるモノだ 殿村氏や相原氏もエントラントからの質問に答えたり、同乗走行をしたりと忙しく動いていた エントラントの走行シーン。これは下りながらの1コーナー進入 1コーナーを過ぎるとすぐに切り返す、その後にまたすぐに逆に大きく曲がりながらの急勾配となるので、1コーナーから2コーナーで速度が落ちすぎないようにするのがポイント 今回のコースでは、前日に試走した殿村選手と相原選手が、コーナーごとに目印になるコーンを立てていたので、参加者はそれを目印に走行ラインを組み立てていた ショートサーキットは急な登りの3コーナーからしばらくは登り区間となるので、アンダーパワーな軽自動車はこの区間をうまくまとめるのがタイムアップのコツ 最終コーナー手前は短いストレートなのでここで車速がのるよう走らせる 最終コーナー進入時にもコーンがある。ここはコースが広いので突っ込みすぎることも多いが、コンパクトに向きを変えるのが鉄則 ショートサーキットの最終コーナーは出口のRもキツくなるので難しいところ 最終コーナーのまとめ方はタイムに大きく響くという。出口に近いイン側にも目印のコーンが置いてあった ホームストレートは下り坂なので車速がのる。シフトアップも素早く行なってタイムを稼ぎたい 閉会式後、レーシングコースへ移動してホームストレート上で記念撮影 最後にパレードランを行なって、D-SPORT&DAIHATSU Challenge Cup富士は終了した