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ミシュラン、舗装路をよく走るトラクター向けタイヤ「ロードビブ」日本初展示 農家と土壌を支える農業機械用タイヤの最新技術とは?

2023年7月6日~10日 開催

入場無料

トラクター用タイヤには、乗用車とはまったく異なる技術が採用されている

 日本ミシュランタイヤは、7月6日~10日に北海道帯広市の北愛国交流広場で開催されている「第35回 国際農業機械展 in 帯広」に出展。展示ブースでは低い空気圧で高荷重に耐えられるウルトラフレックス・テクノロジーを採用した農業機械用タイヤ「AXIOBIB2(アキシオビブ2)」や、国内初展示となるオンロード走行が多い農家向けの「ROADBIB(ロードビブ)」など、農業従事者の生産性を向上させるタイヤや足まわりのソリューションを展示している。

 乗用車用やバス・トラック用、二輪用タイヤではおなじみのミシュランタイヤだが、農業が盛んなヨーロッパの企業なので実は農業機械用タイヤの発売も早く、1970年代には初の農業用のラジアルタイヤを発売。今でもグローバルで多くのシェアを獲得している。今回は日本ミシュランタイヤのビヨンドロード事業統括本部長 B2B事業部の佐野恒彦氏に、「農業機械用タイヤの今」について聞いた。

お話をうかがった日本ミシュランタイヤ株式会社 ビヨンドロード事業統括本部長 B2B事業部 佐野恒彦氏
ミシュランの農業機械用タイヤ

 作物はさまざまな種類があるのと、昨今は後継者不足からできる限り効率を上げて生産性を高める必要があり、代表的な方法がトラクターの往復する回数を減らすことだという。1回にまとめて大きな面積を耕したり、収穫できればその分生産を高められるわけだが、農機具が巨大化すると同時にけん引するトラクター自体もハイパワーが必要となり、結果的に大型化してしまう。

トラクターは前後に大きな農機具を装着して作業することが多く、作業効率アップとともにトラクター自体のハイパワー化と大型化が課題となっている
トラクターのサイドに装着する農機具もある

 ところが、大型化=重量増となるため、大切な農地を踏み固めてしまうという課題が浮き彫りに。踏み固めてしまうと、作物が育つために必要な水が浸みこみにくくなったり、根が張りにくくなったり、土をキレイにする微生物が育たなくなるため、定期的に重機で地面を掘り起こす作業を行なわなければならない。もちろん広大な面積になればその分費用もかかるし、掘り起こして「土壌改良」した年は、通常のように作物を育てられず、何も収穫できない課題もある。そのため農家では、少しでも土壌に優しく負荷のかからない農業機械用タイヤを選ぶのがトレンドだという。

ウルトラフレックステクノロジーを採用している「アキシオビブ2(AXIOBIB2)」
トラクター用タイヤは農地での使用がメインなので、土をかき分ける(せん断性能)ために「ハの字型」となっている。ミシュランではハの字のブロックの立ち上がりを滑らかにすることで、ブロック飛びなどを抑制しているという

 その課題を解決するためミシュランでは、いかに土壌への負担を軽減するかを考え、超低空気圧使用にも耐えられる「ウルトラフレックステクノロジー(ULTRAFLEX Technology)」を2014年に独自に開発。農地では土壌の状態に合わせた空気圧に変更して使用できるほか、超低空気圧にすることで接地面積を増やし、土壌へ与える荷重を分散させることに成功。室内からタイヤ空気圧をコントロールできるシステムを装備していれば、トラクターから降りることなく調整が可能となり、土壌をより効果的に保護し、車両の燃料消費を抑えるほか、常に車両が最適な速度で作動できるため、農場の生産性も向上するという。

ウルトラフレックステクノロジーを採用しているタイヤに入るロゴ。また、サイドウォールにあるタイヤサイズの前に「ベリーフリクション(高耐久)」を意味する「VF」の文字が入る

 また、今回はオンロード走行が多い農業機械用タイヤの「ロードビブ(ROADBIB)」を日本国内で初展示。構造は一般的なラジアルタイヤと同じだが、大きな「ハの字」トレッドのトラクター用タイヤとは異なり、センターにリブを設けている。これにより剛性を高め、舗装路での直進安定性を向上、またトレッドのブロックを増やすことで制動性能を高めている。使用イメージとしては、農地と舗装路の走行比率が50:50くらいであればロードビブを推奨するとのこと。「国内初展示ですが、すでに数軒の農家からオーダーをいただいています」と佐野氏はいう。

国内初展示となるトラクター用タイヤ「ロードビブ」
ロードビブのトレッド
ロードビブのカットモデル。基本的な構造は通常のラジアルタイヤと同じ

 ミシュランの農業機械用タイヤでもっとも歴史があり、1番売れているのが「アグリビブ(AGRIBIB)」で20年以上も前から販売しているロングセラーモデル。現在は、固い茎などを収穫する際、地面の茎がタイヤを貫通することがたまにあるそうで、ミシュランでは耐貫通性を高めた「アグリビブ2」へと順次切り替えている最中だという。

耐貫通性を高めたアグリビブ2
アグリビブ2のトレッド

 また、「オムニビブ(OMNIBIB)」は、今履いているホイールはそのままで、純正装着されていることが多い85偏平のタイヤを70偏平にして、より接地幅を広げて土壌に優しくしましょうという提案タイヤ。仮に通常は空気圧160KPaのところ120kPaにして使うことなどが想定されるという。

低偏平にして接地幅を広げるのが狙いのオムニビブ。ちなみにタイヤ名称の最後にある「ビブ(BIB)」はビバンダムからきているそうだ

 さらにブースのテント内には、ミシュランが2018年に13.6億米ドル(※当時)で買収したオフロード事業をグローバルで手掛けるカムソ(CAMSO)の製品パネルを展示。カムソは農業機械やスノーモービル用のゴムクローラー(キャタピラ)、産業車両用のソリッドタイヤおよびバイアスタイヤ(フォークリフト用タイヤ)の分野で大きなシェアを持つ小型重機用クローラー・タイヤソリューションのトップ企業の1つ。日本ではフォークリフトを手掛ける豊田自動織機などに収めている。

カムソが手掛けるゴムクローラー

 ゴムクローラーは、主に収穫時にトラクターの前輪に装着する製品で、通常の農業機械用タイヤと比較して、接地面積はけた違いに広く、その分土壌への負荷を分散・軽減でき、長く土壌を使えるようになる。もちろん、導入コストもかかるし、移動時の車速が下がるといった特徴もある。これらは農家がいかに生産効率を高めるか計算しながら導入を検討するという。

カムソが手掛けるゴムクローラー
基本的にフロントタイヤと交換して装着する

純正装着タイヤにも採用されているミシュランの農業機械用タイヤ

 日本の農業機械用メーカーは、クボタ、ヤンマーホールディングス、井関農機などが挙げられるが、今回の展示会でも海外メーカーのトラクターも数多く展示されていて、ミシュランの農業機械用タイヤを装着している車両が多かった。

 ミシュランタイヤの佐野氏によると「ミシュランタイヤは少し高額ですが、ラジアル構造なので安定性と耐久性があり、多くの農家から指名していただいております。農業機械メーカーさんも、農家から銘柄を指名されるとのことで、純正装着タイヤに採用していただいている農業機械もあります」とのことだ。

株式会社クボタ
ヤンマーホールディングス株式会社
井関農機株式会社
ジョンディア
VALTRA
マッセイ・ファーガソン
CASE IH
JCB
トラクターとは異なる井関農機株式会社の農業機械
タイヤのサイズの前に「VF(ベリーフリクション)」の文字が入る
クラース
MICHELIN ULTRAFLEX TECHNOLOGY AXIOBIB 2 - お客様の声- 石田牧場(北海道別海町)3分20秒

「第35回 国際農業機械展 in 帯広2023」は7月10日まで開催中

「第35回 国際農業機械展 in 帯広2023」開会式の様子

 国際農業機械展は、4年に1回開催される日本最大級の農業機械展。1947年に十勝会館前広場で開催された「自由市場交換即売会」がスタートで、その後「畜力農機展示会」「全道農業機械展」、1967年の第19回には「全国農業機械展」と名称を改めた。1982年の第25回以降からは、4年ごとに開催するようになり、2002年の第30回から「国際農業機械展 in 帯広」とし、国内のみならず海外からの出展もあり、多くの来場者を集めているイベントだ。今回はコロナの影響で5年ぶりの開催となったが、第35回を迎えている。

 第35回では国内外から全114社が出展し、開会式では北海道副知事の土屋俊亮氏や、ホクレン会長篠原末治氏が祝辞とともにあいさつをした。

開会式で祝辞を述べた北海道副知事の土屋俊亮氏
ホクレン会長篠原末治氏もあいさつを述べた

「第35回国際農業機械展 in 帯広」開催概要

日時:2023年7月6日~10日、9時~16時(最終日は15時まで)
会場:「北愛国交流広場」特設会場(北海道帯広市愛国町10番1)
入場料:無料

ミシュランブース
1898年(明治31年)生まれで、すでに120歳を超える「ミシュランマン」
欧州などでは「ビバンダム」と呼ばれている