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KDDI、脳トレを活用して若手ドライバー育成「KDDI Neuro Racer Project」がレーシングチーム結成
2023年7月17日 08:45
- 2023年7月15日 発表
KDDIは7月15日、脳トレーニングを取り入れて若手ドライバーを育成するプロジェクト「KDDI NeuroRacer Project」のレーシングチームを結成し、岐阜県瑞浪市にある「フェスティカサーキット瑞浪」でチームのお披露目会を開催した。
プロジェクトには、レーシングカートのレース「ROTAX MAXシリーズ」を中心に参戦する関優成選手と、グランツーリスモの国体愛知県代表となった鵜飼幸希選手の2名が参加。プロジェクトでは、レーサーを目指す若手ドライバー2名に対し、脳科学とITを組み合わせた「ブレインテック」を活用しながら、実車やシミュレーターでの練習効果の最大化を目指す。
具体的にプロジェクトにおいて、関選手はレーシングカートで一定の実績を持つレーシングドライバーとして、各種トレーニングを通じて成績向上を目指す。一方、17歳の鵜飼選手は免許取得前で実車経験がない中、短期間で効率的にリアルのレースで通用するレーシングドライバーへ育成していくことを目指すとしている。
これまでKDDIでは、2021年よりレースゲームを楽しむeスポーツゲーマーに向けた「みんなの夢をのせるeレーサープロジェクト」を実施。脳科学とITを組み合わせた「ブレインテック」を活用してトレーニングを通じ脳の認知能力を高め、実車でのドライビングテクニックの向上につなげる技術の開発に取り組んできた。これまでに得られた結果として、脳トレーニングを受けたeレーサーは、トレーニングをしなかったeレーサーと比べて、実車、シミュレーターともにタイム向上が見られ、脳トレーニングの効果を確認したという。
プロジェクト全体マネージメントを担当するKDDI XR推進部 サービス・プロダクト企画2Gの伊藤悟氏は、チームのお披露目会に登壇し「最初は、ゲーマーの人たちをプロのレーサーに育てることができないかというコンセプトで、ブレインテックを使ったドライバー育成の実証実験をしてきました。そして2年間かけて、実際に運転の機能向上に繋がる方法というのを見つけました。それを実際にレーシングドライバーにも適用できるかどうかというところを今年度に実証していきたいと思い、古賀さんのご協力を得てカートチームを作り、ドライバー2名にいわゆる脳トレをご提供させていただくことでデータが取れるといいなと思っております」とプロジェクトの概要を話した。
同プロジェクトにおいて脳波分析・脳のトレーニングプログラムを開発・実行するVIE STYLEの茨木拓也氏は「このプロジェクトにおいて、まず、より速く走るために脳は一体何を学ぶべきかというのと、どう学ぶべきかというところから一緒に取り組ませていただいた。だんだん分かってきたのが、感覚運動学習といって目から入った情報でどのように筋肉を動かしていくのかっていうのが、非常にレースの成績と関係があった。もう1つ、感情のところで恐怖に負けないというか、上がりすぎもせず下がりすぎもせず感情をコントロールする能力がレーシングパフォーマンスに関係するところで、何を学ぶべきかが分かっています」と話した。
会場では、選手のトレーニングとして取り入れられているイライラ棒のようなゲームを体験できる訓練プログラムがタブレットで用意されていた。茨木氏は「タブレットでやってもらったイライラ棒のようなものが結構馬鹿にできなくてですね、要するに頭をつかって指で操作して動かすみたいなところが、実はレーシングのパフォーマンスにすごい関わってきているところで、実際のプログラムでは脳波を取ってさらに訓練していくんですけれども、単純そうに見える課題が実は実際のパフォーマンスに関係しています」と、これまでの活動で明らかになったことについて報告した。
同プロジェクトでは、アイロック(IROC)代表で現役レーシングドライバーである古賀琢麻選手がチームオーナー兼監督を務め、育成プランの策定からドライビングの指導、チーム運営までを統括する。
レーシングカートチームを立ち上げてプロジェクトを行なうことについて、古賀選手は「2年前からやってきたKDDIのプロジェクトの実証実験が終わったのですが、最初はグランツーリスモであったり、ゲームやバーチャルの世界からリアルと言って、いろいろやっていった中で"実戦をやらないと終わっちゃうよね”みたいになった。そこでまず1つは、僕が今でも生涯楽しめることを覚えさせていただいた、レーシングカートというのが最適であるということ。もう1つは今のカートをやっている人を見ると、子供のころからやってても大学生になる前にあきらめちゃうというのが多いなというのが、特に今、自分の子供がカートを始めたこともあって思っているんですけれども、やっぱりカートによるレースって生涯楽しめるスポーツ」だと、その狙いについて話した。
また、プロジェクトに参加する鵜飼選手が稲沢市出身ということで、愛知県稲沢市商工会議所で会頭を務める池戸製作所代表取締役の池戸賢治氏が、市を上げて応援しようとエグゼクティブサポーターとしてプロジェクトのスポンサーを募った。そしてこの日のチームのお披露目会には、多くの支援者が集まった。
池戸氏は「今回の企画を皆さまにオープンする前に内容を伺ったところ、若手のドライバーの1人が稲沢市出身だということで、ぜひ僕も力になることができるのでしたらということで、僕の仲間、17社の皆さんに賛同をいただいて、このサポートにまわらせていただこうということで、非常に楽しみにしております。人の脳というのはどのようにトレーニングされていくんだろうという、結果を見させていただければと思っております」とプロジェクトへの期待感を話した。
今後、KDDIとしては同プロジェクトで得られたデータや知見をもとに「ブレインテック」技術の実用化を加速させ、練習経験をなかなか取れない、環境の制約から実車での練習ができないなど、さまざまな理由でモータースポーツを諦めていた多くの人が、レーサーになる夢に挑戦できる環境の実現を目指していくとしている。