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KDDIとNICT、精神状態の向上術を提案するAI構築を目指す共同研究開始

2022年7月25日 発表

個人の特性や場面に応じた精神状態の向上術を提案するAIのイメージ

 KDDI、KDDI総合研究所は7月25日、KDDI、KDDI総合研究所、情報通信研究機構 (以下 NICT) が共同研究契約を締結して、脳科学とICT技術を組み合わせたブレインテックを活用した「個人の特性や場面に応じた精神状態の向上術を提案するAI」の構築を目指す共同研究を7月19日から開始したと発表した。

 具体的な例として、トップアスリートは信頼関係を築いたプロのメンタルコーチの指導のもと、最適な精神状態に導くトレーニングを実施し、試合で自身の能力を最大限に発揮しているが、一般の人が同様の環境を構築することは困難なため、試合、試験、プレゼンなどの大切な場面で能力を十分に発揮できないことがある。

 共同研究では、動画視聴などの視聴覚刺激がどのように脳に影響するかを解明し、2026年ごろには能力の最大化のために個人の特性や目的に応じた刺激を生成するAIの構築に向けて取り組むとしている。

脳波計装着図
動画視聴中の脳波

 3者による共同研究では、KDDI、KDDI総合研究所の心理・行動推定技術と、NICTの脳情報科学に関する知見を活用。各社の役割としては、KDDIが実験の企画・運営、実験結果の評価、KDDI総合研究所が各種刺激の作成、心理・行動解析、実験結果の評価、NICTが脳波・脳活動データの計測と解析、実験結果の評価を担当する。

 これまでの研究から、動画視聴や音楽鑑賞といった視聴覚刺激によって引き起こされる感情など、精神状態の変化を脳波から検出できる可能性があることを確認している。しかし、視聴覚刺激の内容と視聴覚刺激前後の精神状態の関係性、性・年代・趣味嗜好といった個人の特性や環境による精神状態の違いは明らかになっていない。

 2022年度の研究では、脳波における視聴覚刺激と精神状態や個人の特性との関係性解明を目的とした研究に取り組むとし、この結果を活用して、2026年ごろに一人一人に最適な視聴覚刺激を提示するAIの構築を目指すとしている。

 これまでに、KDDIとKDDI総合研究所では、ビッグデータの分析の知見を生かして、人間の脳と神経の関係性に着目した脳神経科学の活用に2019年から取り組んできたが、KDDIが掲げるKDDI VISION 2030では「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる」ことを目指していて、一人一人に最適化された思いの実現方法を提案するため、より多くの分野での脳神経科学の活用の検討に着手。

 脳波をもとにその人にあった視聴覚刺激をコントロールすることで、誰もが仕事、人間関係、運動、勉学などで受けるストレスの軽減を図り、達成感・自己肯定感を高めることで長期的な幸福度 (Well-being) の向上ができる世界を目指すとしている。