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シェイドレーシング、「FUJI ファクトリー」公開 カーボンパーツを製造可能で見学エリアも用意

新拠点「シェイドレーシング FUJI ファクトリー」

 シェイドレーシングは8月4日、富士モータースポーツフォレスト内の新拠点「シェイドレーシング FUJI ファクトリー」内覧会を開催した。

 FUJI ファクトリーは、SUPER GTやスーパー耐久シリーズの参戦車両を中心としたレースマシンのメンテナンスをはじめ、カスタマーチーム向けのレースサポート、レースマシン向けのカーボンパーツ製造などを実施する施設。8月5日から稼働する。

 これまでシェイドレーシングは富士スピードウェイから少し離れた御殿場市内の工場跡地を借りて、マシンの保管やメンテナンスなどを行なってきたが、富士モータースポーツフォレストの構想がスタートし、富士スピードウェイの敷地内にファクトリースペースが設定されることを受け、自前の施設を用意することになったという。

シェイドレーシング FUJI ファクトリーの外観。レースマシンで多用されるカーボン素材をイメージした黒基調を採用
敷地面積は3万3946m2、延床面積は1万3088m2。広いガラス窓によって「開かれたガレージ」を表現
富士スピードウェイの西ゲート側には「富士モータースポーツフォレスト ウェルカムセンター」が隣接

シェイドレーシング FUJI ファクトリー施設概要

名称 シェイドレーシング FUJI ファクトリー
所在地 静岡県駿東郡小山町大御神字中島617
敷地面積 3万3946m 2
延床面積 1万3088m 2
営業日 不定休
営業時間 10時~17時
入場料 無料

 FUJI ファクトリーは大きく分けて「車両メンテナンスエリア」「カーボンコンポジットエリア」「ギャラリーエリア」の3つから構成されている。充実した設備によってよりハイレベルな車両メンテナンスを可能にするレーシングファクトリー本来の目的に加え、FUJI ファクトリーではより多くのモータースポーツファンに向けた施策を実施。

 正面入口から入ってすぐのガラス窓越しに車両メンテナンスエリアの作業風景が見えるようになっている。ほかにもレースマシンやレーシングドライバーが実際に着用したスーツ、シェイドレーシングがレース参戦で獲得してきたトロフィーなどを展示して一般公開し、モータースポーツを身近に感じてもらえるようにしている。

車両メンテナンスエリア

FUJI ファクトリーの車両メンテナンスエリア

 5台の車両を1度に作業可能なスペースを用意する車両メンテナンスエリア。ホイールアライメントテスター付きの「マルチリフト」、格納時には柱を床下に収めて作業性を高める「2柱リフト」といった設備を備えるほか、ガラス窓側の一角には定盤を設定。

 内部応力を十分に緩和させた鋳鉄製の台を使い、水平に仕上げた定盤を用いることで、より精密な4輪アライメント調整や、マシン各部の高さなどがきちんとレギュレーションを満たしているかの測定を行なう。わずかな狂いも見逃さないリアウィング調整などが可能になるという。

 とくにシェイドレーシングが2022年から参戦を始めたSUPER GTのGT300クラスマシンでは、高度なマシンセッティングが求められ、車両メンテナンスエリアを充実させることでマシンの戦闘力アップも期待できるという。

フラット機構も備えたX型リンク式のマルチリフト
ホイールアライメントテスターも備えており、マシンの下まわり整備と同時にアライメント測定を行なうことで作業効率を大きく高めることが可能
エンジン、トランスミッション、クラッチ、マフラーなどを交換する重整備でも使用される2柱リフト
リフトのない作業スペースに平置きされたマシン。車両メンテナンスエリアは計5台を1度に作業可能
鋳鉄製の台を使って精密な水平に仕上げているという定盤。通常のメンテナンス作業などでは使われず、4輪アライメント調整や高さ計測などの際にマシンを乗せて利用する
切削や切断といった加工を行なう工作機械の作業スペース、分解洗浄用のブースも用意されている
正面入口から入ってすぐの壁にガラス窓が設置され、車両メンテナンスエリアが見渡せるようになっている

 作業スペースから隔壁を挟んですぐ隣にはトランスポータートレーラーの駐車スペースも確保。メンテナンスを済ませたレースマシンを格納して日本各地のサーキットまでより短時間で届けられる体制を整えた。また、当日は富士スピードウェイ周辺でも気温が30℃を超える1日となっていたが、施設内は車両メンテナンスエリアも含めてどこも空調が完備され、快適な環境でエンジニア&メカニック担当が作業できる状態となっていた。

作業スペースのすぐ隣に設定されたトランスポータートレーラーの駐車スペース。奥にある黒いシャッターを開けると富士スピードウェイの構内路につながり、ピットスペースまでレースマシンを運んでいける
シェイドレーシングが所有するトランスポータートレーラーの紹介パネル。レースマシンの搬入後はモーターホームとして利用される
トランスポータートレーラー駐車スペースの脇に、7月29日~30日に開催されたスーパー耐久シリーズ 第4戦で使用されたS耐マシン用タイヤが保管されていた
S耐では工場火災の影響でワンメイクタイヤの供給がシーズン途中でハンコックからブリヂストンにスイッチしており、右側の台車に載せられたハンコック製とホイールを挟んで左側のブリヂストン製という2種類のウェット用タイヤが並ぶ珍しい光景が見られた

カーボンコンポジットエリア

カーボンコンポジットエリアの中核となるオートクレーブ

 カーボンコンポジットエリアでは1200×2500mmまで成形可能なオートクレーブが設置され、このほかにもカーボン製品の作成に必要となる「カッティング」「貼り込み・バキューム」「サンディング」「仕上がり確認」といった各工程ごとの作業室を準備。

 現時点では自分たちで使用するカーボンパーツの作成を中心に利用することになるが、将来的には外部からのカーボン製品の製造委託を受けることも視野に入れており、レースなどで使用するパーツには機密情報も絡んでくることから、カーボンコンポジットエリアに出入りする人員をカードキーなどでコントロールできる仕組みを導入している。

成形可能サイズは1200×2500mmまで
現時点では空室状態だが、カーボン製品の作成に必要となる「カッティング」「貼り込み・バキューム」などの作業室が用意されている
カーボンコンポジットエリアでは将来的に機密情報を使った他社のカーボン製品の製造委託を受注できるよう、カードキーなどで出入りする人員をコントロール可能な仕組みを導入した

ギャラリーエリア

入口から入って右手側を中心としたギャラリーエリア

 モータースポーツの魅力を身近に感じてもらうことを目的に設置されたギャラリーエリアでは、シェイドレーシングが実際のレース活動で使用したレースマシンに加え、レーシングドライバーが着用したスーツやヘルメット、S耐などのレースで獲得したトロフィーなどを展示。また、現在は仮設営業となって将来的に場所が移動する可能性もあるが、正面入口の左手側にはシェイドレーシンググッズを販売する「オフィシャルグッズショップ」も展開している。

屋外からも見える位置にレースマシンを展示
2021年のスーパー耐久シリーズ ST-4クラスでシリーズチャンピオンを獲得した884号車 シェイドレーシング 86
2022年のスーパー耐久シリーズ ST-Zクラスでシリーズランキング2位となった885号車 シェイドレーシング GR SUPRA GT4
2022年のGR86/BRZ Cup クラブマンシリーズに参戦した886号車 シェイドレーシング GR86
正面入口脇にある階段で2階に上がったところにある展示スペース
実際のレースで使用されたレーシングスーツやヘルメット、トロフィーなどの展示
GR SUPRA GT4のダンパー&スプリング
GR SUPRA GT4のフロントブレーキ
シェイドレーシングが歩んできたレース参戦の歴史
シェイドレーシングの各種グッズを販売する「オフィシャルグッズショップ」
車両展示を通り過ぎた先にある「レーシングシミュレーターエリア」
開設からしばらくの間はチーム所属のドライバーがトレーニングに利用することになっているが、将来的には一般来場者にも楽しんでもらうため検討を行なっているという
ドスパラのゲーミングPC「ガレリア」が使用されている
チーム関係者・来賓向けスペースとなる屋上からは富士スピードウェイのコースや富士山などを見ることができる