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ダンロップ×SUPER GTインタビュー、「サステナブル素材のレースタイヤへの採用も積極的に進める」と竹内二郎氏&安田恵直氏
2023年7月25日 11:45
ダンロップとファルケンという2つのブランドでグローバルに展開
住友ゴム工業は日本を代表するゴム製品メーカーの1つで、日本やアジア地域などで販売する「ダンロップ(DUNLOP)」、日本やそれ以外の地域で販売する「ファルケン(FALKEN)」の2ブランドでタイヤ事業を展開している。そのほかにも、ゴルフ製品やテニス製品、制振ダンパー、医療用ゴム製品、土木海洋製品など、幅広く事業を手掛けている。
日本のモータースポーツシーンでは、古くから「ダンロップ」ブランドでの活動を行なっており、古くは全日本F2選手権や全日本F3000選手権といった日本のトップフォーミュラにタイヤを供給し、チャンピオンを獲得した歴史ももつ。
近年は、SUPER GTのGT500、GT300それぞれにタイヤを供給しているほか、SUPER GTと併催されているジュニア・フォーミュラのFIA-F4選手権日本シリーズおよびJAF-F4などにワンメイク供給を行なうなど、未来のスタードライバーを育成するジュニアカテゴリーへのサポートも熱心に取り組んでいる。
また、日本でも人気のあるニュルブルクリンク24時間レースに毎年チャレンジを続けており、2023年はFALKEN(ファルケン)モータースポーツチームとして「Porsche 911 GT3R」の2台体制で臨んでうち1台が総合10位でゴールするなどの結果を残したほか、STIのSUBARU WRX NBR CHALLENGE 2023にもファルケンタイヤを供給している。
さて、今シーズンのSUPER GT参戦体制は、GT500は64号車 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/太田格之進組)の1台体制となり、昨年までのホンダ陣営で2台体制という形から1台に集中して供給する形に変更。GT300では以下の6台をサポート中。
・10号車 PONOS GAINER GT-R(安田裕信/大草りき組)
・11号車 GAINER TANAX GT-R(富田竜一郎/石川京侍組)
・20号車 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎組)
・60号車 Syntium LMcorsa GR Supra GT(吉本大樹/河野駿佑組)
・61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)
・96号車 K-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一組)
そこでSUPER GTにおける取り組みに関して、住友ゴム工業 モータースポーツ部長 竹内二郎氏、同モータースポーツ部 モータースポーツ開発1グループ 課長 安田恵直氏のお2人にお話をうかがってみた。
サステナブルな素材を利用したモータースポーツ用のタイヤを競争カテゴリーにも積極的に投入していきたい
──昨シーズンのダンロップのSUPER GTを振り返って自己採点をお願いしたい。
竹内氏:GT500は昨年2台体制で臨んだ。鈴鹿のレースに関しては途中までトップを走ったが、結果に結びつけられなかったので70点。GT300に関しては最終戦までチャンピオン争いもできていたので、タイヤ的には85点だ。
安田氏:われわれにとって昨年のハイライトになったのが第5戦の鈴鹿。他のメーカーの車両がサクセスウエイトを積んでいた要因もあるが、レース中に自力で上位にあがっていき、トップを走れた。そのレースには新しい要素を入れたタイヤを導入していたし、もともと鈴鹿は得意な部類のコースなので、それらが功を奏した。
──開幕戦から第2戦までの自己評価は?
安田氏:GT500に関しては荒れた開幕戦になったが、雨の予選で新しいタイヤを投入して、レースの結果を見ると機能していたと言える。第2戦富士に関しては、第1スティントはよくなったが、第2スティント、第3スティントはよくて、その違いの原因は理解できている。
GT300に関しては、他メーカーも含めて競争が激しく、まわりが速くなっているので少し遅れている印象がある。スバルの61号車の車両トラブルもあったが、今回の第3戦公式練習ではトップタイムをマークしたし、ちゃんと走れれば結果を出せるパッケージだと思うが、ちょっとしたことが結果に大きな影響を与えるような厳しい競争が行なわれている。
──ミシュランが今シーズン限りでGT500の活動休止を発表するなど、状況は日々変わっていっているが、住友ゴムがSUPER GTに参戦している意義を教えてほしい。
竹内氏:ミシュランさんが休止されるのは残念だが、ダンロップにとってはSUPER GTに参戦する意義は非常に大きい。ナショナルブランドでもあるわれわれにとっては、SUPER GTは国内レースで最大のレースで、ブランドバリューの拡大や人材育成の観点で大きな意味がある。また、競争の中で短いスパンで技術を改善して結果を出すことが求められるので、人も技術も育てることが可能になる。また、GT300では一昨年にスバルの61号車がチャンピオンとなり、ビジネス面でもいい影響があると評価している。
──今シーズンのSUPER GTのタイヤはどのような特徴?
安田氏:昨シーズンとは構造も、ゴムの配合も違うタイヤになっている。その目的はより効率よくグリップを発揮できるタイヤを実現すること。われわれのタイヤの弱点として、一時期決勝でピークが下がってしまうことがあった。そこで、より効率をあげられるように設計を見直した。
また、レインタイヤでも、専用ゴムを投入することで性能があがり、開幕戦でその効果を確認できた。以前からこうすればグリップがあがるということは分かっていたのだが、それを工場で実際に作るのが難しいという課題があった。それをじょじょに工程を改善して、実際に投入できた。それによりフルウエットではパフォーマンスが発揮できるようになった。さらに今後はパターンの見直しも必要だと思っている。
──SUPER GTもカーボンニュートラル燃料をいち早く投入し、レース距離を伸ばしてより長く保つタイヤ造りを促すなどサステナブルなモータースポーツへの取り組みを進めている。住友ゴムのサステナブルへの取り組みを教えてほしい。
安田氏:SUPER GTの場合は競争なので、いきなりサステナブルな材料を投入するのは難しいが、少しずつやっている。また、材料ではないが昔のように試作タイヤをたくさん作って、それを走らせてというやり方はすでにやめて、シミュレーションを使いながら、昔なら100個作っていたところを10個にして、それをさらに3個にするという取り組みを行なっている。それにより工場で試作を作る負荷や電力効率などを向上させている。
また、すでに昨年の年末に発表しているが、いわゆるサステナブル材料と呼ばれる材料が40%弱のタイヤはできている。ただし、現状のGT300と同じようなタイムが出せるかと言えばそこまでには達していないのは事実だ。しかし今後開発を進めていく方針で、同じようなタイムが出せるようになったらレースにも投入していきたい。他のメーカーさんはワンメイク向けに投入されているが、われわれはコンペティションのレースでも投入していきたい。それができれば大きなインパクトがあるのではないかと考えており、来年ぐらいをターゲットに開発を続けていきたい。
──最後に今シーズンの目標を
竹内氏:GT500は1台体制となり、2台体制に比べるとテストの時に得られるデータは減ったが、1台には1台なりの利点もあり、開発を促進していきたい。その意味でGT500はまず1勝を目指す。GT300に関しては昨年とほぼ同じ体制なので、昨年最終戦で取り逃がしたシリーズチャンピオンの獲得を目指していきたい。
GT300では予選結果を決勝につなげていきたい後半戦、GT500は鈴鹿の第5戦が山場か?
ダンロップのSUPER GT 第3戦鈴鹿は、GT300の予選がハイライトとなった。まず61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTがポールポジションを獲得し、11号車 GAINER TANAX GT-Rが2位、60号車 Syntium LMcorsa GR Supra GTが3位という結果になり、予選上位をダンロップ勢が独占。しかし、決勝レースに関しては、GT500車両の大クラッシュが発生した影響で当初のレース距離よりも短く赤旗終了となり、ダンロップ勢は11号車が5位、61号車が6位、60号車が7位という結果になり、予定通りレースが最大の距離で行なわれたら……という展開になってしまったのは残念だった。
今シーズンのGT300のダンロップ勢は予選ではいいところにつけているが、決勝では展開に恵まれないというレースが多く、その意味でも今後の第4戦富士や第5戦鈴鹿での結果に期待したいところだし、シリーズを戦ううえでは、ここでポイントを稼いでおかないと上位争いに食い込めなくなる。
GT500に関しては昨年もいいレースができた夏場の第5戦鈴鹿でどのような結果を出せるかが鍵になってくるだろう。後半戦に向けてダンロップ勢の活躍にきたいしたいところだ。