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フェラーリ、新型PHEV「SF90 XX ストラダーレ」日本初公開 公道走行可能な初のXXモデル

2023年9月20日 発表

SF90 XX ストラダーレ

 フェラーリ・ジャパンは9月20日、新型プラグインハイブリッド・スーパースポーツカーの「SF90 XX ストラダーレ」を日本で初公開した。

 SF90 XXシリーズは2022年6月にワールドプレミアされており、クーペボディのストラダーレは799台(価格は約1億2000万円)、そのオープン版スパイダーは599台(約1億3400万円)が限定生産される予定。ただし、こうしたモデルのお約束通り現状ですでに完売だという。

フェラーリ・ジャパン社長に就任したドナート・ロマニエッロ氏

 東京・有明のIHIステージアラウンドで行なわれた発表会に最初に登壇したのは、9月1日にフェラーリ・ジャパン社長に就任したばかりのドナート・ロマニエッロ氏。「私はイタリア出身ですが、日本の自動車業界に20年以上の経験があるので、日本語は読み書きも話すこともできます。日本の繊細で奥深い文化については、毎日が発見と学びの連続です。経歴は2012年にフェラーリ・ジャパンのマーケティングディレクターとして入社し、2016年にはセールスダイレクターとなり、今年8月まで勤めてきました。社長としてのこれからの戦略については、よりよいサービスを提供することにフォーカスし、常にお客さま満足度を向上させ、ネットワークをさらに成長させることです」とあいさつした。

フェラーリ極東・中東地域代表のディーター・クネヒテル氏

 続いて行なわれたSF90 XXのお披露目では、フェラーリ極東・中東地域代表のディーター・クネヒテル氏が登壇。「今日はフェラーリの歴史に新たな1ページを刻んでいきたいと思います。この20年間、フェラーリでは既存のモデルをベースにして、パワーアップとドライビングの楽しみを向上させてきました。つまりレーシング特性を増幅させたスペシャルバージョンです。例えば599GTO、F12TDF、488Pista、812CompetizioneAなどがそれにあたります。一方、フェラーリのXXプログラムの目的としては、選ばれたエキスパートドライバーの皆さまに、公道走行がホモロゲートされていない、究極のクルマでサーキットを体験してもらうことです。例えばF599FXX-EVO、そしてFXX-K EVOを覚えていらっしゃいますか。そして本日は新しいコンセプトとして、公道走行可能なXXモデルを発表します。このコンセプトは斬新な空力ソリューションを採用しています。またフェラーリではほとんど使われたことのない極端なアプローチをとっています。F40やF50などのスーパーカー以来となる初のエクストラリアウイングを復活させています。その走りは、サーキットからの信頼性や一貫性を保ちながらも自分の限界に挑んでいただくことができるものとなっています。そしてパワートレーンの1030PSはロードカー最強です。とてつもなく速く、感動的なサウンドを発生し、驚くほど効率的です。目指したのはレーシングカーの爽快な体験を再現することでしたが、もちろん道路交通法にも準拠しています」と説明した。

過激だが抑揚の効いたフェラーリらしいデザイン

 今回のSF90 XXは、スペシャルシリーズとXXプログラムを完璧に1つにすることで両者の中間に収まった、フェラーリ初の「XX」を名乗るロードカーという位置付けだ。ベースモデルは2019年にデビューした最高出力1000PSのPHEVモデル「SF90」で、SFはワークスレース部門のスクーデリア・フェラーリの頭文字、90はその年が創設90周年だったことにちなんでいる。

 ボディサイズは4850×2014×1225mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2650mm、乾燥重量1560kgというSF90 XX ストラダーレ。お披露目された白いボディの実車を目の前にして見ると、一番の特徴はリアに取り付けられた大型の固定式ウイングであることに気がつく。1995年のF50以来となるロードカー専用リアウイングの開発は、サーキット専用のXXモデルに装着することで徹底的な研究とテストが行なわれたといい、またスタイリングセンターとの密接な協力によってボディのフォルムと完璧に融合。エクステリアは過激と言えば過激ではあるけれども、フェラーリのロードカーとしての“異物”感がないよう、綿密な設計がなされているのだ。その効果は、ロングテールデザインや再設計されたシャットオフガーニーと強調しながら空気抵抗を増減することができ、最大値ではベースモデル(SF90)の2倍となる車速250km/hで530kgという強烈なダウンフォースを生み出すという。テール部分は3胴船(トライマラン)のようなデザインを採用し、左右には大型のリアベントが、センターには2本出しのエグゾーストが配されている。

 一方“矢”をテーマとするフロント部には、ノーズ中央のボックスから取り入れた空気をボンネット上の2つの口から排出してダウンフォースを稼ぐ「Sダクト」を装着。その部分だけ目を引くカラー(今回の実車ではオレンジ色)とすることで、デザイン上のアクセントにもなっている。フロントスプリッターやディフューザーもサイズと幅を拡大。そして前後のフェンダー上には3本並んだルーバーが設けられていて、XXモデルらしい存在感を放っている。

 インテリアでは、レースカーが持つ使命である軽量化を強調することを指針としている。主にはドアパネル、センタートンネル、フロアマットの形状と素材を、よりシンプルな高機能ファブリックとカーボンファイバーを使うことによって徹底している。またレーシング形状のシートはカーボンファイバーのチューブラー構造とし、バックレストの調整を可能とした上で一体型シートのように見えるデザインとし、さらに1.3kgの軽量化を果たしている。またドアパネルには、フェンダーの3本ルーバーを想起させる形状を取り入れることで、ダイナミックで統一感のあるデザインとしている。

PHEVシステムは30PSパワーアップの1030PSに

SF90 XX ストラダーレに搭載されるV8ツインターボエンジン

 搭載するパワートレーンの構成は、基本はベースとなるSF90のPHEVシステムを踏襲している。リアに搭載する排気量3990ccの90度V型8気筒ツインターボエンジンはノーマル比17PSアップの最高出力797PS/7900rpm、最大トルク804Nm/6250rpmを発生。フロントに左右独立の2基、リアのエンジンと8速DCTの間に1基搭載する電気モーターは、同13PSアップの233PSを発生。システム合計では30PSアップの1030PSを発生する。リチウムイオンバッテリ容量は7.9kWhで、電動モードでは最高速135km/h、25kmの距離が走行できる。また燃料消費率(WLTPサイクル)は7.2L/100km(13.8km/L)となっている。

システム全体で1030PSを発生するPHEVシステム

 エンジンは二次空気導入装置を排除することで重量を3.5kg軽量化。またホットチューブシステムを最適化することで、V8の全回転域で高周波を強調した美しいハーモニーを奏でることに成功した。また8速DCTの変速ロジックは、フェラーリ デイトナSP3で導入されたものに変更され、中・高回転域でアクセルを戻した際にエグゾーストで鳴る破裂音に似たサウンドを発生させることで、ドライビング時の興奮を高めるようになっている。

 カーボンセラミックブレーキの直径は、フロント398mm、リア390mmと大径化されており、タイヤはフロント255/35ZR20、リア315/30ZR20サイズ。これらによるパフォーマンスデータとしては、0-100km/h加速2.3秒、0-200km/h加速6.5秒、最高速320km/hを公称している。またEマネッティーノのQualifyingモードで2秒間だけ出力限界をパワーブーストできる「エクストラ・ブースト」機能によって、フィオラノのラップタイムを0.25秒短縮することができるほか、296GTBで採用された「ABS EVOコントローラー」を搭載することでさらにブレーキングを遅らせることができ、サーキットで最高のパフォーマンスが発揮できるよう最新技術をフル投入している。

 ベースモデルから30PSのパワーアップと10kgの軽量化を果たしただけで、5340万円のSF90からほぼ倍の1億2000万円のプライスタグを掲げるXXだが、その間に歴然とした差があることはオーナーとなるプロではないジェントルドライバーに必ず伝わるはず、と信じて開発されたのがSF90 XX ストラダーレなのだ。2モデル合計の1398台の行き先がすべて決まっているというのも納得だ。