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日立アステモ、マルチカメラAI演算で360度ステレオビジョン 異なるカメラの組み合わせで点群データを生成
2023年10月24日 11:04
マルチカメラAI演算で360度ステレオビジョン
日立Astemo(アステモ)は、異なるカメラの組み合わせで点群データを生成するマルチカメラによる360度ステレオビジョンシステムを公開した。日立アステモは初期のスバル アイサイトシステムにステレオカメラを供給するなど、ステレオカメラによるADAS技術の高さで知られている。
これまでのステレオカメラシステムは、高精度なダイキャストユニットに2つのカメラを搭載。高度なキャリブレーションを行ない、ステレオカメラの精度を実現してきた。
今回公開されたマルチカメラによる360度ステレオビジョンは、異なるカメラの組み合わせでステレオ画像を生成。ステレオ画像のため静止時から距離情報を生成でき、3D点群データを得ることができる。このような点群データ(ポイントクラウドデータ)は、レーザーを用いるLiDARで生成するのが通常手法ではあるが、日立アステモのシステムではデバイスとしてLiDARより安価なカメラを利用するのが特徴になる。ただし、映像データの演算にはそれなりのコンピューティングパワーは必要になり、システムコストは不明だ。
コンピュータでカメラデータをステレオ利用するため、これまでのようにダイキャストで高精度な組み付けを不要としているのもメリット。これにより、異なる画角、非平行、長基線長でカメラペアを構成でき、走行中の自動キャリブレーションも可能としている。日立アステモでは、このための視野算出AIを開発した。
実際のマルチカメラ搭載試作車では、フロントに左右のステレオカメラ、リアに上下のステレオカメラ、そのほか側方にはそれぞれ2つのカメラに加え、ミラー下に魚眼カメラを備えた10カメラシステムとなっていた。つまり、多くのクルマに搭載され始めているサラウンドカメラを利用して、360度ステレオビジョンを構成していることになる。
走行中など生成データを見させていただいたが、確かに点群データが生成されている。精度や密度は不明だが、標識も距離情報で認識しており、もちろんカメラデータなので標識読み取りもできる。
また、自由なカメラの組み合わせが可能なので、今回の実験車であるミニバンタイプはもちろん、ミラー下の魚眼レンズカメラと通常画角(といってもそこそこ広角)レンズのカメラでのステレオ算出も可能になっていた。魚眼レンズは、単なる広角レンズと歪曲収差が異なるのだが、それもAIで補正し距離計算しているとのことだった。
自動運転時の360度監視は、安全・安心の実現のためには必要な技術であり、現在はさまざまな技術の組み合わせで実現している部分を、カメラとAI演算というシンプルな構成(演算はリッチ)で実現する技術になる。
もちろん、欠点としてはカメラに写らないもの、つまり霧や暗黒時は見えなくなるが、暗さについてはヘッドライトなどで対応でき、霧などについてはレーダーやLiDARで補完するという方法もあるだろう。
カメラが優れているか、LiDARか、はたまたレーダーかとなりがちだが、クルマというパッケージでどのように安全を作っていくかがポイント。その意味で、利用しがいのある技術が登場したことになる。