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三菱電機、2024年4月1日付で自動車機器事業を分社化

2023年10月31日 発表

三菱電機株式会社 常務執行役 CFOの増田邦昭氏

 三菱電機は10月31日、2024年4月1日付で自動車機器事業を分社化すると発表した。吸収分割承継会社として、Melco自動車機器事業分割準備を設立。電動化やADASなどのCASE関連事業においては、それぞれに技術シナジーが見込めるパートナーとの協業を模索する。三菱電機では、2023年4月に自動車機器事業に関する構造改革を発表しており、今回の分社化はその方針に則ったものになる。

 なお、三菱電機の自動車機器事業は2022年度通期で赤字を計上し、2023年度第1四半期も赤字となっていたが、10月31日に発表した2023年度第2四半期(2023年7~9月)決算では、同事業の営業利益が黒字化した。2023年度通期見通しも上方修正した。

 三菱電機では、今回の分社化の狙いについて「各事業の特性に見合った施策を実施し、収益性、資産効率の向上を図るべく、経営戦略として掲げる事業ポートフォリオ戦略と経営体質改善を推進している」と三菱電機全体の基本方針を示しながら、「とくに自動車機器事業においては収益改善が課題であり、またCASEをはじめとして、産業構造が急速に転換するなか意思決定プロセスを簡素化し、よりスピーディに事業運営を行なうことを目的に、自動車機器事業を分社化することを決定した。これにより、一段の事業運営の効率化と、事業ポートフォリオの再構築を図っていく」と説明している。

 自動車機器事業は、一時期は同社の重点成長事業の1つに位置付けていたが、市場環境の変化により損益が急速に悪化。現在、自動車機器事業に関しては、費用の効率化および価格の改善、電動化およびADASにおけるパートナー戦略の推進、撤退を決定した製品に関する代替サプライヤーの提案をはじめとした顧客との交渉を実施するなど、事業再編に向けたプロジェクトを並行して進めているところだ。

 三菱電機 常務執行役 CFOの増田邦昭氏は、「自動車機器事業の改革はおおむね予定通りに進んでいる。電動化やADASについてはパートナーとの話し合いを進めている段階」と述べた。

 三菱電機の自動車機器事業は3つの事業に分けることができる。

 自動車機器事業の約4分の1を占めるCASE関連事業は、電動化およびADASで構成。この領域においては、今後大規模な投資が必要となることからそれぞれ領域におけるパートナーとの協業を模索している。そのため、分社化したあとにパートナー企業との合弁会社化などにより、さらに事業を切り出す可能性がある。

 三菱電機の増田CFOは、「電動化およびADASについてはパートナーとの協業を進めていくことになる。時期を設定しているわけではないが、できるだけ早く決めたい。また、ここでは三菱電機の100%子会社化ということではない形を考えている。可能性を狭めずにやりたいと考えており、よりよいシナリオを求めていく。資本比率はマイノリティになることも、マジョリティを取るということも想定される」などとした。

 売上高の約半分を占めるのが、電動パワーステアリングシステム製品などの三菱電機の強みが活かせる事業領域である。これらは分社化する子会社において、事業の中心を担うことになる。「電動パワーステアリングシステムなどは市場シェアが高い事業であり、しっかりと生き残りを図り、収益性を磨きなおしていく」とした。

 また、増田CFOは「市場環境の変化が激しいため、そのなかで事業によっては他社との連携も選択肢として残したいと考えている」とコメントしたものの、基本的には分社化した三菱電機の100%子会社化のなかで事業を推進していくことになりそうだ。

 一方、自動車機器事業の売上高の約4分の1を占めるカーマルチメディア(カーナビゲーション)事業は撤退する方向を打ち出しており、今回の発表のなかでもこの方針を改めて示した。すでに2022年度からは新規の商談を停止しており、「自動車機器事業には優秀な人材がおり、今後、三菱電機の成長分野での活躍を期待している。FA事業を中心に強化すべき領域があり、組み込みソフトウェアの技術者の活用や、量産技術やコストダウンのノウハウを他事業に転換することを見込んでいる。人材はグループ内で活用していきたい」とした。

 三菱電機が発表した2023年度上期(2023年4月~9月)連結業績では、自動車機器事業は売上高が前年同期比15%増の4474億円、営業利益は前年同期から158億円改善したものの、24億円の赤字となった。

セグメント別実績(インダストリー・モビリティ)

 一部半導体部品の需給状況が改善したことなどを背景に、新車の販売台数が前年同期を上まわり事業環境が良化。電動車を中心とした市場の拡大に伴い、電動化関連製品などの需要が堅調に推移したという。また、モーターやインバーターなどの電動化関連製品や、自動車用電装品、ADAS関連機器の増加に加えて、円安の影響や価格転嫁の効果などにより、受注高、売上高ともに前年同期を上まわった。

 第2四半期では、売上高が前年同期比9%増の2344億円、営業利益は前年同期の103億円の赤字から45億円の黒字に転換。増田CFOは「価格転嫁の効果はもう少し反映したかった。第2四半期までに交渉が決着せずに反映しきれなかったものがある。お客さまとの交渉はしっかりと進め、要望は伝えている。第3四半期以降はさらに価格改善による上積みをしていきたい」と述べた。

部門別売上高・営業損益(2Q)

 同社では2023年度通期の自動車機器事業の業績見通しを上方修正しており、売上高は7月公表値に比べて300億円増加の前年比8%増の8800億円、営業利益は60億円増加の70億円の黒字を見込んでいる。自動車機器事業は増収増益の計画となる。

部門別売上高・営業損益(業績見通し)