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トヨタと大林組、FCEV「MIRAI」の水素タンクに使用されるCFRPをコンクリート補強用短繊維として再利用する技術を開発

2023年11月9日 発表

資源循環と開発技術の概要

 トヨタ自動車と大林組は11月9日、共同でFCEV(燃料電池車)「MIRAI」の水素タンクに使用されている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の端材を、コンクリート補強用短繊維として再生利用する新たな技術「リカボクリート工法」を開発し、トヨタ明知工場内の部品置き場床面に初適用したと発表した。

 コンクリート補強用短繊維とは、コンクリートと混ぜることで、靱性(粘り強さ)を高めることができる繊維質の補強材で、繊維の種類は炭素繊維のほかに鋼繊維、有機系繊維(ポリプロピレンやビニロン繊維など)といったものが用いられ、土木や建築分野で多くの使用実績があるとのこと。

 CFRPは、軽くて強度が高く、耐久性に優れる特徴があり、水素を燃料とするFCEVの水素タンクや航空機、風力発電の風車ブレードなどに利用されているものの、CFRPの性能を保ったままで再利用することは難しく、これまでは端材として発生したCFRPは電炉で鉄をリサイクルする工程での原料として使用するにとどまっていたという。そのため、CFRPが持つ強度を活かした利用ができていないかと両社で開発を進めていた。

 今回、両社は共同で仕様の検討や品質確認を積み重ね、コンクリート補強用短繊維として再生利用する新たな技術「リカボクリート工法」を開発。この技術では、燃料電池車の水素タンクを製造する段階で発生するCFRPの端材に独自の熱加工を施し、適切な長さに裁断したのち、コンクリートに添加することで、コンクリートのひび割れ抑制や靱性の向上を実現するとした。

コンクリート部材の曲げ靱性試験結果(100×100×400mm)

 リカボクリート工法では、独自の熱加工によりCFRP端材表面層から性能を保ったままCFRPを連続的にはがす技術を確立し、コンクリート補強用短繊維への加工が容易となった。また、再生加工したコンクリート補強用短繊維は、同じ目的で従来使われてきたポリプロピレン製短繊維の3分の2の添加量で同等以上の圧縮強度や曲げ靱性を発揮。さらに新品の炭素繊維と比べて、CO2排出量を15分の1に、通常の補強鉄筋の使用との比較では、9分の1にそれぞれ低減可能としている。

 今後、FCEVの市場拡大に伴い、水素タンクの製造が増加することを見据え、両社は技術開発を継続し、さまざまなコンクリート構造物への適用を推進。2026年度までに製造システムを実装して、将来的に年間3万m 3 の繊維補強コンクリートへの適用を目標とすることで、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進に貢献するとした。