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ホンダ、新型「WR-V」説明会 1.5リッターエンジン搭載のエントリーSUVについて開発責任者の金子宗嗣氏らが解説

2023年11月16日 公開

ホンダの新型SUV「WR-V」と開発責任者の金子宗嗣氏

タイ・日本・インドと3国が連携して開発した「WR-V」

 本田技研工業は11月16日の新型コンパクトSUV「WR-V」の先行公開に先立ち、事前説明会を実施した。登壇したのは、本田技研工業 WR-V開発責任者 金子宗嗣氏をはじめ、本田技術研究所 デザインセンター パッケージ担当の黒崎涼太氏、同デザインセンター エクステリア担当の中村啓介氏、本田技研工業 商品企画担当の佐藤大輔氏、ホンダアクセスの純正アクセサリー開発責任者である水上寛之氏の計5名。

 開発責任者の金子氏によると、WR-Vの開発は新型コロナウイルスが世界中に大きな影響を与えていた2021年に本格的にスタート。開発はタイを中心に、インドと日本でもプロジェクトチームを作り、オンラインミーティングなどを重ねて進められた。

グレードはエントリーモデルの「X」、上位グレードの「Z」、Zに上質さを加えた「Z+」の3つを設定し、エクステリアデザインにも特徴を設けている

「基本的に移動ができないうえに、地域によってはロックダウンが起きているような状況で、普段コミュニケーションをとりながら開発を進めるのに慣れている者にとっては、非常に難しい開発でした」と金子氏は振り返る。

 また、グランドコンセプトとなる商品の方向性を考える際、これからどんな世の中、お客さまがどんなライフスタイルを選んでいくかということを熟考したといい、「コロナが終わればきっとより自由な生活を求めるであろう」といったことを想像しながら開発を進めてきたという。

 金子氏は、「特にわれわれが試行錯誤を繰り返す中で、非常に大切になると思ったのは、やはり“自由の大切さ”で、これまでの固定概念とか古い価値観を変えていこうというムーブメントが必ず起きるだろうと予測していました」と語る。

グランドコンセプトは「バーサタイル・フリースタイラー」

 開発チームは、いろいろな制約が解かれる中で、自由さや多様性をWR-Vの中に表現しようと思い、都会だけではなく、レジャー、帰省、旅行などさまざまな生活を楽しめるような道具が必要とされるだろうという考えのもと、グランドコンセプトに“バーサタイル・フリースタイラー”を提唱。いろんな多様性、多用途性を表現しつつ、新しい本質的な生活価値観を持つお客さまに寄り添うSUVにしたいとの思いを込めたという。

 最後に金子氏は、「この開発は日本、タイ、インドのすべてのプロジェクトメンバーの魂が入っています。デザインパッケージもさることながら、性能面、品質面すべてにおいて万全の商品に仕上げましたので、お楽しみいただければと思います」と思いを語った。

本田技研工業株式会社 四輪事業本部 四輪開発センター LPL室 WR-V開発責任者 金子宗嗣氏。2006年に株式会社本田技術研究所へ入社。動力性能・空力研究開発部門にて空力特性開発に従事。2018年にHonda R&D Asia Pacific Co.,Ltd.駐在。2020年にブリオ(2023年モデル)開発責任者を担当。2021年からWR-V開発責任者に就任

デザインコンセプトは「マスクリン&コンフィデント(自信あふれるたくましさ)」

 続いて本田技術研究所 デザインセンターの黒崎涼太氏よりパッケージについての解説が行なわれた。黒崎氏は、「個人的にですがSUVの定義は“大径タイヤ”“ハイロードクリアランス”“ハイアイポイント”の3つだと考えています。さらに、ダイナミックで力強いエクステリアと、カテゴリートップクラスのインテリア空間の両立を目指してパッケージングしました」。

「また、車両感覚のつかみやすいスクエアですっきりとした視界や、広い頭上空間と後席空間、広大な荷室など、競合に対して大幅な優位性を持っています。具体的には良好な前方の見下げ角と、ボンネットフードの不可視長を短くすることで、車両感覚のつかみやすさを向上させました。最低地上高も195mmを確保したことで、SUVらしい走破性を感じられます。後席の居住空間も、幅、高さ、足下とすべての領域において競合よりも広く設計しています」とWR-Vの優位性を紹介。

WR-Vのパッケージの考え方
WR-Vのディメンション

 開発にあたり黒崎氏は、「インドでは所有者が土日に運転手を雇って自分が後席に乗るショーファー的な使い方があったり、日本でも最初は1人で乗っていても、やがて後席も使うようになる場合が想定される。つまりどの国でも後席が重要になることが想定され、広さや快適性の重要度は同じであると考えてパッケージに落とし込んできました。インドはセダンを買うことが豊かさの象徴的だった時代もありましたが、最近は変化してSUVの市場が発展中です。このように日本、インド、タイと、初めてクルマを所有する方や、セカンドカーとして使う方など、本当に考え方とニーズが異なるユーザーがいるのですが、本質的には快適に移動したいというのが根底にあると思って開発してきました。もっとも大変だったのは、エクステリアの力強さと広い室内空間確保の両立です」と説明する。

 さらに、「アイポイントを高くして見晴らしをよくしつつも、あくまでスポーティに運転してもらいたいというホンダの基本的な考え方もあるので、ペダルを踏み降ろすような運転姿勢ではなく、あくまでかかとを軸にペダルを踏み込んで運転する、セダンのようなドライビングポジションにもこだわっている」といい、コロナ禍での開発のため、各国で何度も動画を撮って送りあい、乗降しやすく、運転しやすい車高を追及したと語る。

 デザインの説明は、本田技術研究所 デザインセンターの中村啓介氏が担当。中村氏によるとデザインコンセプトを、「マスクリン&コンフィデント(自信あふれるたくましさ)」と定め、ひと目で分かるぶ厚いボディによる安心感と、スクエアなロングノーズによる堂々とした風格、そして高い重心と水平基調のリアデザインによる力強いたたずまいを表現したという。

WR-V Zグレード。ボディカラーはメテオロイドグレー・メタリック

 また、ぶ厚いノーズの勢いを後部まで貫き、彫りの深いシャープな顔つきで堂々とした風格を演出したほか、サイドビューはスリークなキャビンを高く張り出したショルダーと筋肉質なフェンダーでしっかりと支え、力強いスタンスを実現。加えて、高く配置した水平基調のリアコンビネーションランプやバンパー造形で、ワイドな後姿にもこだわったという。

 中村氏は「特に最近はファッションとして乗る都市型SUVが増えていて、本当に気兼ねなくオフロードに入れるのか? という考えもありまして、丸さを押さえていかに硬質に見えるか。塊をノミで削り落として作ったような雰囲気を狙っています。そして気兼ねなくオフロードに入っていけるタフさと力強さを意識しています。デザインはタイのメンバーが中心となって進めてきました。まさにミレニアル世代の若いスタッフが中心となり煮詰めました」と説明した。

WR-Vエクステリアデザインコンセプト
WR-Vエクステリアデザインスケッチ

 ヘッドライトはフルLEDタイプを採用。リアコンビネーションランプも鮮やかに発光するLEDのテール&ストップランプにより力強いスタンスとアイコニックな存在感を強調させている。

 ボディカラーは日本初採用の新色「イルミナスレッド・メタリック」をはじめ、「プラチナホワイト・パール」「クリスタルブラック・パール」「ゴールドブラウン・メタリック」「メテオロイドグレー・メタリック」と全5色を設定した。

ライティングデザイン
エクステリアカラーラインアップ

 インテリアは、プログレッシブで向上心を高めるマインドセットの提供と、プロテクティブで快適安全な乗車体験を両立。水平基調のインパネに柔らかなパッドに包まれたような、守られ感のある空間と先進機能を最適配置。また、優れた視界により、安心感と運転のしやすさを追求したというエアコンのアウトレットなどのシルバー加飾や、ピアノブラックのアシスタントパネルで上質感を高めつつ、所有者の自信につながるようなたくましさの感じられるデザインを実現したとのこと。

 内装の使い勝手については、必要なものがあるべきところに収まるように設定し、コンソールシフト周りのカップホルダーは、スペースだけではなくカップへ触れる際にシフトノブに干渉しないレイアウトや、取り出すときに指が引っ掛からないように開口間口を拡大するなど改良をほどこしたという。

インテリアデザイン
使い勝手のよさにもこだわった

 続いて本田技研工業 商品企画担当 佐藤大輔氏は、現在の市場動向について言及。10年前と比べて自動車の販売総数は減っているものの、SUVの比率は上昇し続けていることに触れ、「SUVへの買い替えが増えている」と佐藤氏は分析。ちなみに10年前のSUVのシェアは6%で今は24%と4倍にも膨れ上がっているといい、「SUVはまさに成長市場である」と説明した。

 2020年ごろには各自動車メーカーがコンパクトSUVを投入したことで、群雄割拠のセグメントに発展。ホンダはハイブリッド車が主軸の「ヴェゼル」をラインアップしているが価格が250万円超となるため、今回200万~250万円の価格帯をカバーするWR-Vを用意したという。また、この価格帯では7割がハイブリッド車ではなく、ガソリン車が売れているということで、WR-Vも1.5リッターのガソリンモデルのみの設定となっている。

ヴェゼルとのすみ分け

 佐藤氏はすでに販売中のヴェゼルとのすみ分けについて、「ボディは全長×全幅×全高ともにとても近いサイズですが、価格と強みとイメージの3つの軸ですみ分けが可能で、ユーザーの多様なニーズに応える」と説明。WR-VがエントリーSUVモデルで、そのうえにヴェゼル、さらにそのうえに「ZR-V」を用意することで、幅広いSUVラインアップが構築できたと締めくくった。

純正アクセサリーでタフスタイルに

WR-V純正アクセサリーのコンセプト
エクステリアコーディネート「タフスタイル」を提案

 最後に登壇したのは純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセス 純正アクセサリー開発責任者 水上寛之氏。水上氏は「ハイクオリティ&タフネスをテーマに、WR-Vを所有するよろこびをさらに高めるエクステリアアイテムと、日々の暮らしがWR-Vをアクティブかつタフに使えるユーティリティアイテムを提案します」と開発コンセプトを紹介。

使い勝手を向上するインテリアアイテム
ナビは3種類を設定

 エクステリアのスタイリングは、「もう1つのWR-Vを作ろう!」という意気込みで開発し、フロントグリルはメッキのアクセントと力強い縦基調のデザインで上質感と存在感を演出。リアも力強い造形のサイドロアガーニッシュとリアロアガーニッシュで、SUVらしいタフな印象をさらに高めつつ、ワンランク上の質感と力強いSUVらしいタフさを兼ね備えたスタイリングを追求したと説明。

 さらに、荷室のデッドスペースを活用して、ちょっとした手まわり品を収納できるストレージボードのほか、汚れを気にせず使いたおせるラゲッジトレイやシートバックソフトトレイも設定。ナビもすべてホンダコネクトに対応し、運転支援拡張ユニット「リアカメラde安心プラス4」にも対応するなど、さまざまなお客さまのニーズに対応したとまとめた。

左から、株式会社本田技術研究所 デザインセンター エクステリア担当 中村啓介氏、株式会社本田技術研究所 デザインセンター パッケージ担当 黒崎涼太氏、本田技研工業株式会社 四輪事業本部 四輪開発センター WR-V開発責任者 金子宗嗣氏、本田技研工業株式会社 日本統括部 商品ブランド部 商品企画担当 佐藤大輔氏、株式会社ホンダアクセス 純正アクセサリー開発責任者 水上寛之氏