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ダイハツの認証不正、奥平総一郎社長「不正を生み出す環境を作った責任は経営陣」

2023年12月20日 発表

ダイハツ工業の代表取締役社長 奥平総一郎氏

2014年以降、OEM供給車が増加、認証現場の負担を大きくした可能性も

 ダイハツ工業とトヨタ自動車は12月20日、共同記者会見を開催。ダイハツ工業の代表取締役社長 奥平総一郎氏と同代表取締役副社長 星加宏昌氏、トヨタ自動車の代表取締役副社長 中嶋裕樹氏が登壇、ダイハツの認証申請における不正行為に関する調査結果について記者会見した。

 同日、ダイハツの不正関連を調査した第三者委員会の調査結果により、4月のドアトリム不正・5月のポール側面衝突試験不正に加えて、新たに25の試験項目において、174個の不正行為があったことが判明。不正行為が確認された車種は、すでに生産を終了したものも含め、64車種・3エンジン(生産・開発中および生産終了車種の合計)となった。この中には、トヨタが販売している22車種・1エンジンが含まれる。今回の調査結果を受けて、ダイハツで現在国内外で生産中の全てのダイハツ開発車種の出荷を一旦停止することを決定、トヨタも同様に、該当する車種の出荷の一旦停止を決定した。

 会見に登壇したダイハツ工業の代表取締役社長 奥平総一郎氏は「本日、その報告書を受領いたしました。今後の対応と合わせまして、国土交通省、経済産業省にご報告いたしました。調査の結果、認証申請において合計174個の不正が判明いたしました。これらは国内、海外合わせて64車種、3つのエンジンで行なわれており、25の試験項目に及ぶことが分かりました。この結果を受けて、本日、国内外で生産中のすべての車種の出荷を一旦停止することを決定いたしました。お客さまをはじめ、ステークホルダーの皆さまには大変なご迷惑、ご心配をおかけし、心よりお詫び申し上げます」と述べた。

 続けて、奥平氏は「ダイハツは軽自動車をはじめといたしまして、日本の国土、道にあった国民の足となるクルマとして育てていただき、お客さまにご愛好いただいてまいりました。こうしたお客さまの信頼を裏切ることとなり。重ねてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございませんでした。認証とは、お客さまに安心してクルマにお乗りいただくための様々な基準を満たしているかをあらかじめ国に審査、確認いただくものでございます。認証の適切な取得は、自動車メーカーとして事業を行なう大前提であると考えております。今回、その認証を軽視していると指摘されても仕方がない不正が行なわれております。その行為を生み出す環境を作った責任は経営陣にあります。自動車メーカーとして根幹を揺るがす事態であると大変重く受け止めております」と述べた。

 ダイハツの代表取締役副社長 星加宏昌氏からの技術的な説明に続いて、トヨタ 代表取締役副社長の中嶋裕樹氏からは「ダイハツから供給を受けておりますトヨタ車をご利用いただいているお客さまをはじめ、関係する皆さまにご心配、ご迷惑をおかけし、トヨタ自動車として心よりお詫び申し上げます。今回のダイハツによる調査につきましては、車両の安全性能を含め、実車による試験、データ検証をトヨタとしてもサポートしてまいりました。2014年以降、小型車を中心に海外展開車種を含むOEM供給車が増えたことが、開発、認証現場の負担を大きくした可能性があること、認識できておりませんでした。トヨタとして深く反省しております」と反省の言葉を述べるとともに、「トヨタといたしましても、不正の疑いがあるとして指摘されました174個の事象につきましては、ダイハツとともに車両の安全性の環境性能の確認作業に取り組んでまいりました。新たに判明いたしました案件につきましても、 技術検証の確認を全面的にサポートしてまいります」と話した。

不正の真因は短期開発を推進した経営の問題

 同日、第三者委員会からの調査報告書の中で、不正の真因として不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題であることを指摘されたことについて、ダイハツの奥平氏は「第三者委員会からは、不正の真因として不正対応の措置を講ずることなく短期開発を推進した経営の問題であるとご指摘いただいております。不正の背景には、増加する開発プロジェクトを短期日程で進める中で、経営陣、管理職が現場の負担や辛さを十分に把握せず、困った時に声を上げられない職場環境、風土を放置してきたことにあると考えています。その結果、プロジェクト推進を優先し、法令、ルールを守れない企業文化が形成されたと考えており、そのすべての責任は経営陣にあります」と述べた。

 また、奥平氏は「再発防止に向けては、第三者委員会から、経営幹部から従業員に対する反省と出直しの決意の表明が必要、硬直的な短期開発の開発認証プロセスの見直しなど、多くの提言をいただいております。まずは、経営者自らが意識を変えて現場に足を運び、現地、現物で状況を把握し、心理的安全性を確保した健全なコミュニケーションが取れる組織を、従業員とともに作っていただきます。また、今後、法令遵守の正しい認証業務の遂行を大前提として、開発日程を延長し、適切なプロセス、止まることのできる仕組みを作ってまいります。組織や仕組みの見直し、業務規定、作業標準の整備など、今までにも取り組んでまいりました内容に加え、徹底した再発防止を図ってまいります。具体的な再発防止の取り組み、推進に向けた執行体制などにつきましては、関係当局からのご指摘、ご指導を踏まえて取りまとめ、別途ご報告させていただきます」とした。

ダイハツの原点に立ち戻るべく、トヨタも全面的にサポート

 今後について、奥平氏は「今回、第三者委員会に幅広く丁寧な調査を行なっていただきました。会社としても、認証手続きの書類の確認などで、できる限りの協力をしてまいりました。しかしながら、お客さまの安全に万全を期すために、引き続き類似の問題がないか継続して確認して、もし、他に問題が判明した場合には速やかに当局に報告し、適切に対応してまいります。当社は、この度の不正により国内外の道、暮らしに必要な軽自動車や小型車をご使用いただき、支えていただいてきた多くのお客さまの信頼を裏切ってしまったことを大変重く受け止めております。お客さまに寄り添い、暮らしを豊かにする、ダイハツの原点に立ち戻るといったトヨタの支援を得ながらも、強い覚悟を持って会社再生に向け全社を挙げて取り組んでまいります」と話した。

 トヨタ副社長の中嶋氏からは「今回判明いたしました25の試験項目で174個の不正というのは、認証メーカーとしての信頼を失いかねない実態だと考えております。ダイハツからの説明にもありましたように、まずはトヨタも全面的に協力をし、その他に問題はないのか、丁寧に確認していきたいと考えております。会社の再生は経営、事業のみならず、組織、体制から従業員1人ひとりの人材育成、意識改革など、一朝一夕にできることではございません。ともに事業を進めているトヨタにとりましても非常に大きな課題と捉えております。ダイハツの再生に向けましては、コンパクト系モビリティカンパニーというトヨタ、ダイハツが目指す姿、原点に立ち戻るべく、全面的にサポートしてまいります。具体的な対応、取り組みにつきましては、当局による指導をいただくタイミングなどで公表したいと考えております」と述べた。

左からダイハツ工業 代表取締役副社長 星加宏昌氏、同代表取締役社長 奥平総一郎氏、トヨタ自動車の代表取締役副社長 中嶋裕樹氏