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日産「フェアレディZ(RZ34)」に用意されたパッケージオプション「カスタマイズエディション」を考察

2023年10月下旬に発売となった日産純正アクセサリーパッケージ「カスタマイズエディション」を、現在フェアレディZの納車待ちをしている橋本洋平氏がレポート

 2022年の東京オートサロンで参考出品され、東京国際カスタムカーコンテスト2022でグランプリを獲得した「フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO」。その仕上がりはS30Zのレーシングバージョンとして位置付けられていたZ432Rを彷彿とさせるスタイルだったため、市販化を望んだファンが多く、そのキットの販売にこぎつけた。価格はフロントバンパー&グリルとカーボンリアスポイラーがセットの「エントリーパッケージ」で55万2200円(取付費込み)。さらに専用デザインの19インチアルミホイール、専用デザインのサイドエンブレム、フードデカール、ボディサイドステッカーも含めた「フルパッケージ」で96万7560円(同)である。

 現物を目の前にするとそのスタイルの完成度はなかなか高い。フロントバンパーはインテークを2分割にする往年のスタイルへと生まれ変わり、左側にはエンブレムが鎮座している。この配置だけを見てもS30を意識していることは明らかだ。リアスポイラーはなんとドライカーボン製に改められ、リアハッチで収まらずにフェンダーへと延長されているところがポイントだ。また、8本スポークのホイールやブラックアウト可能なデカールも組み合わされることで、たしかにZ432Rのように仕上がっている。

撮影車はフロントバンパー&グリルとカーボンリアスポイラー、専用デザインの19インチアルミホイール、専用デザインのサイドエンブレム、フードデカール、ボディサイドステッカーをセットにする「フルパッケージ」(96万7560円)仕様
ボディカラーはS30型「フェアレディZ 432」のボディカラーとして設定していた「グランプリオレンジ」を想起させる「432オレンジ」。なお、参考車両のため基準車で用意のないルーフがブラックの2トーン仕様となっている

 こうして市販化にこぎつけるには、やはり色々と問題があったようだ。大きな問題は冷却だ。これは東京オートサロンでも言われていたが、現行のRZ34は先代モデルに対してエンジンを変更したことで、熱量が増える傾向にある。そこをさまざまな冷却パーツを加えることで対処しているのだが、やはり最後に必要なのは空気を多く取り入れること。結果として基準車はスクエアで大きなインテークを与えることになったわけだが、このカスタマイズドエディションではそれが達成できないために市販化はたぶん無理だろうと語られていた。インテークを2分割する部分の柱は縦に25mmの太さがあるが、実際にはそこで乱流が発生し、その柱の約3倍の幅で空気が導かれなくなるというのだ。

 ただし、さまざまな検討が行なわれた結果、180km/h以下で使うなら問題はないということが判明。つまり、公道であれば十分に使えるのだからと市販化へのGOサインが出たというわけだ。

フロントバンパー&グリル。フロントグリルの開口部は上下2分割となり往年のスタイルに仕上げられる。エンブレムも特別デザイン。フードデカールは印象を大きく変えるアイテムの1つ
車名ロゴ入りのボディサイドステッカーも往年のスタイルを想起させるもの
特別デザインのエンブレムが与えられるドライカーボン仕様のリアスポイラー

 一方、プロトタイプのようにオーバーフェンダーが与えられなかったのは残念なところだ。これにはきちんとした理由があり、1つはオーバーフェンダーの取り付け方法がメーカー基準では達成できていないということだったらしい。さらにはオーバーフェンダーにマッチするように張り出したホイールのインセットも市販化するにあたりNGとなったようだ。ホイールの中心点がズレてしまうと、結果としてハブベアリングへの負荷が増大。特にリアのハブベアリングは、サイドフォースからの耐久性に難があると判断されたようだ。あらゆる強度計算をした上で、自動車メーカーとしての基準からは外れてしまうというから、クルマいじりもちゃんとやるとなかなか難しそうだ。

 このように、難題を乗り越えた上で登場してきたカスタマイズドエディションは、メーカー純正という安心感がありつつ、他のZとは一線を画すスタイルを達成できるという意味でかなり魅力的だ。現在フェアレディZの納車待ちをしている筆者にとって、その存在は非常に悩ましいものだった。だが、結論を言えばこの価格を見て断念。情けない話である。いま、現物を目の前にするとその判断が正しかったのかどうかを再び悩む毎日が続いている。

フェアレディZ NISMOとフロントまわりを比べたところ。カスタマイズエディションのホイールは専用デザインとなり、ブラックの8本スポーク仕様となる