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GTA、2024年から導入する新しい予選方式を説明 通期での使用タイヤ数は2019年比で35%削減
2024年3月18日 13:36
- 2024年3月16日 実施
SUPER GTはカーボンニュートラルなレースの実現を目指したSUPER GT Green Project 2030を推進中
日本国内で開催されるレースシリーズ「SUPER GT」は、3月16日~17日に岡山国際サーキットで公式テストを実施。翌週の3月23日~3月24日には富士スピードウェイに会場を移して引き続きテストが行なわれる予定で、4月13日~14日に岡山国際サーキットで開催される開幕戦に向けて、準備が進んでいる。
そのSUPER GTをプロモートするGTアソシエイション(GTA)は、岡山国際サーキットの公式テストの初日となる3月16日に記者説明会を開催し、GTAが今シーズンから導入する新しいタイヤルールなどに関して説明した。
GTAは「SUPER GT Green Project 2030」を2022年に発表し、カーボンニュートラルなレースの実現に向けてさまざまな取り組みを行なっており、その一環として導入されるのが「持ち込みタイヤセット」の削減で、ここ数シーズンで段階的に削減が進められてきた。2024年はそれをさらに進め、持ち込みセット数をさらに減らして4セットにし、それに合わせて予選のやり方も変更が加えられることがすでに発表されている。今回の記者説明会ではそうした新ルールの狙い、運用方法などに関してGTAの担当者から説明が行なわれた。
2024年はレース距離の増加に対して、通期タイヤ使用数は2019年比で35%削減
記者説明会の冒頭でGTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏は「今回の公式テストは今季のスタートになる。今季には新しい規則が導入され、それをきちんと理解していただいてSUPER GTのことを伝えていただければと思って、その理解の助けになるように今回のような場を設けることにした」と述べ、記者やファンに今シーズンのレギュレーションの目的や意図、仕組みなどを理解してもらいたいと説明。
その後、GTアソシエイション レース事業部長 沢目拓氏が今季のタイヤ持ち込みルール、さらにはそれに伴う予選実施方法の変更点などを説明した。
沢目氏によれば、今季はレースの週末に各車両が持ち込めるドライタイヤのセット数(セットとは4本で1セットという意味)が減らされる。昨季は5セットを持ち込めていたが、今季は1セット減らされた4セットになる(なお、ウェットタイヤは5セット)。そのうち、予選前までに1セットがマーキングされて予選で使用可能となり、翌日のレースでは、その予選で利用したタイヤをスタートタイヤとして使用する必要がある。
なお、このドライタイヤセット数4セットというのはレース距離が300kmのときのセット数で、今シーズンは350km、3時間というフォーマットも用意されているため、その場合にはそれぞれ5セット、6セットになる。
GTAがタイヤのセット数を減らしたのは環境対応の観点からで、CO2排出量を減らすために、ここ数年持ち込みセット数を減らしてきた取り組みの延長線上にあるという。沢目氏は「今季はレース距離は3160kmの総距離に対して、40セット(1セット4本)×43台(合計6880本)のタイヤ数となる。これは2019年比で言えば、レース距離は110km増えているのにセット数は21セット減り、1台あたりの本数は84本減っている。シリーズ全体(43台)では3612本減っている計算になる。つまりタイヤの使用本数が2019年に比べて35%削減され、65%のタイヤ数でシーズンを実現できている」と述べ、CO2排出量を減らすという目的のためにタイヤ使用本数を確実に減らせていると強調した。
従来のQ1、Q2ノックアウト予選から、Q1+Q2を1セットのタイヤで走りタイム合算となる新ルール
こうしたSUPER GT Green Project 2030の実現に向けた取り組みとして、今季はドライの持ち込みタイヤ数を4セットにすると決めたが、そのためにいくつかの課題が浮上したため、今季の予選方式が見直されることになった。その最大のポイントは、予選で利用できるタイヤセットが、2023年までのQ1とQ2でそれぞれ1セットずつから、Q1とQ2合わせて1セットに変更されたことだ。
沢目氏は、「持ち込みセットを4セットに減らして昨季までと同様の予選方式にすると、予選日の午前中の公式練習やサーキットサファリでタイヤを使うのが難しくなるという指摘がチーム側からもあり、2023年のフォーマットを見直さないと、ファンの皆さまに十分なサービスができないということになった。そこで、予選をタイヤ1セットでできれば、週末トータル4セットで2023年と同じでいけるということでこうした形式になった」と述べ、持ち込みセットを減らすという環境対策と、ファンに面白いレースを見せるという両方のバランスを取るために予選のフォーマットを変更したのだと説明した。
今回変更された予選フォーマットをおおまかに説明すると、Q1とQ2を2人のドライバーがそれぞれ走り、タイヤはQ1で使ったタイヤでQ2も走らなければならない。予選中のタイヤの交換は許可されず、仮にタイヤを壊してしまうとその時点で予選は終了となり、レースは最後尾グリッドについて、フォーメーションラップでピットに入り、ピットスタートというかたちになる(従来と同様にQ2終了時に1本だけの交換は許される。2本以上はピットスタート)。また、予選に出走できなかった車両も同様に最後尾グリッド、ピットスタートというかたちになる。
タイムはQ1とQ2の合算となり、(後述するGT300のグリッド順位入れ替えを除けば)合算タイム順のグリッドになる。従来のSUPER GTの予選では、Q2でトップタイムをマークしたドライバーが“ポールポジション獲得ドライバー”として栄誉を与えられていたが、今後は合算になるため両ドライバーともにポールポジション獲得ドライバーの栄誉が与えられる。
なお、沢目氏によれば、各セッションでベストラップをマークしたドライバーにも何らかのかたちで表彰が行なわれるよう、今後は検討していくということだ。また、従来はポールポジションにのみ1ポイントが与えられていたが、今後はポール3ポイント、2位2ポイント、3位1ポイントが与えられる。過去に1、2点でチャンピオンが決まったときがあったことを考えれば、今後はシリーズを考えると予選でもらえるポイントにも大きな意味が出てくるだろう。
GT300ではQ1とQ2の中位でグリッドを入れ替える「順位入れ替え特別ルール」を採用
予選時間はQ1が10分、Q2が8分となる。GT300は、従来のノックアウト予選時と同じようにA組(14台)、B組(13台)に分かれて行なわれる。SUPER GTレースダイレクター 服部尚貴氏によると、「本当は1つのセッションとして行ないたかったが、GT300は車両が多く(27台)それは無理だと判断した」とのこと。Q2ではそれぞれの組の上位8台が「Gr.1」(16台)に、それ以外の両組下位9位以下が「Gr.2」(11台)になり走ることになる。GT500はQ1、Q2ともに全15台が走る。
ユニークなのはGT300のQ2で、Gr.1の下位5台と、Gr.2の上位4台がタイム合算での「順位入れ替え特別ルール」の対象になることだ。これは、この9台はGr.1かGr.2にかかわらず13位~20位を決定するルールで、Q1で上位8台までに入れなくても、Gr.2のタイム次第によっては、Gr.1の下位5台を合算タイムで逆転して上位グリッドにつける仕組みになる。
沢目氏は「なぜこうなのかというと、Gr.2になってしまったのでQ2は走らないでいいとか、Gr.1に行ったけれどQ2はタイヤを温存してあまり走らないということを避けるためだ。お客さまに全車両が全力で走るレースを見せてほしいと考えているためで、こうした入れ替えを行なえるようにした」と述べ、Q2でのタイヤ温存(予選で走ったタイヤでレースをスタートする決まりであるため、可能であればタイヤを温存することに意味がある)を避けるような仕組みしたのだと説明した。Q1、Q2それぞれに各組上位3台平均の107%となる基準タイムがあることも同様で、タイヤを温存するために本気で走っていないと107%を超えてしまい、ノータイムで最後尾ということになるので、そうしたことを避ける仕組みが二重三重に入っているという印象だ。
なお、こうした予選のタイムはドライの場合の話で、予選中にウェット宣言が出た場合は、GT300ではQ1でのGr.1、Gr.2の振り分けはドライのときと同じだが、タイム合算を行なわずQ2のタイムのみを採用して予選順位を決定する。その場合、順位入れ替え特別ルールは適用されない。GT500に関してはウェット宣言が出ても、ドライと同じでQ1/Q2のタイム合算で予選順位を決定する。
このほかにも、Q1での赤旗原因車両の取り扱いは、従来それ以降の競技続行ができなかったのが、ベストラップ削除となり、セカンドベストでのタイム合算となる。合算タイムが同タイムだった場合はQ2タイムが速い車両を上位とし、仮にQ2タイムも同じだった場合(つまりQ1タイムも同じということだが)にはQ2最速タイムを先に出した方が上位となる。
なお、サーキットのタイミングモニターはQ1に関しては単体のタイムが表示されるが、Q2に関しては合算されたタイムが表示される。SUPER GTのアプリに関しても同様で、開幕戦までに改修が行なわれる予定だとGTAから説明があった。
また、長距離レースでの赤旗終了時にピットイン義務を消化していなかった場合の取り扱いがスポーティングレギュレーションの中で明確化され、75%を超えて赤旗終了した場合には競技結果に対して1周減算になることが明記された。同時に、2023年のスポーツランドSUGOでのGT500車両とGT300車両の事故で課題として指摘された、ピットイン時のウインカーによる合図は付則に記載されることになった。
服部レースダイレクターは「ドライバーの技量が試されるQ2になる、楽しみ」と所感を表明
レース運営を担当するSUPER GT レースダイレクター服部尚貴氏からも、この新しいルールに関する所感が表明された。服部氏は「2023年より1セット少なくなることで、それをどう配分していくかを考えた結果、今回のルールになった。仮に予選で2セット使えるようにすると、公式練習ではタイヤが使えなくなってしまう。SUPER GTはトップカテゴリーではあるが、テストに制約などもあるため、レースウィークの公式練習などはクルマに習熟する大事な機会で、ちゃんと公式練習で走ってもらうため、落とし所はここだろうと提案した。確かにドライバーからも言われているが、Q2では中古タイヤになるのでベストを更新できない可能性が大だ。ただ、自分がドライバーだったときも、ニュータイヤでタイムを出すより、中古タイヤでタイムを出す方が難しかった。ちょっとしたミスがタイヤではカバーされないので、ミスがミスとして出てしまうと思う。その意味で、各チームや監督などがどういう順番で2人のドライバーを乗せたらいいかは悩むところだと思う。例えばGT300はABSが入っているからまだいいが、GT500ではフラットスポットなんて作れないと思う。その意味でチームも今悩んでいるところではないか」と述べ、新しいQ1、Q2のかたちには別の楽しみ方があると指摘した。
さらに、「タイムとしては落ちるかもしれないが、その分ドライバーの技量の差が明確に出ると思う。コアなファンの人はこの公式テストからそこに注目して見ると面白いだろう。レースコントロールとしても正直何が起こるかまだ見えていないところで、この公式テストの状況をきちんとチェックしていき、改善点を洗い出して、お客さまにさらにより予選を見せられるように、調整していきたい」と述べ、レースコントロールからしても、何が起きるか未知数で、だからこそ予選が楽しみだと述べた。