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SUPER GT坂東正明代表会見、2024年のレースは「300km」「450km」「300マイル」「3時間」の4つのフォーマットで実施することを明らかに

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT 第8戦もてぎが、モビリティリゾートもてぎにおいて11月4日~5日の2日間にわたって開催されている。通常は日曜日の決勝レース前に行なわれるSUPER GTのプロモーターであるGTA(GTアソシエイション)定例記者会見だが、最終戦もてぎはスケジュールもあり土曜日の予選前に行なわれた。

 GTA 代表取締役 坂東正明氏は「2024年のレースは300km、450km、300マイル、時間の4つのフォーマットで行なう計画。時間レースは3時間レースだ」と述べ、現在は300kmと450kmレースという2つのフォーマットで行なわれているSUPER GTのレースを、2024年は300km、450km、300マイル、3時間という4つのフォーマットでやっていきたいと説明した。

11月6日にもてぎで、合成燃料50%のカーボンニュートラル燃料「GTA R50」を利用したGT300のテストを実施

──それでは冒頭に坂東代表から談話を。

坂東代表:快晴の中で予選を迎えられ、明日(日曜日)の天気も大丈夫だと聞いている。3連休でみなさんあちこちにお出かけされていると思うが、ぜひレースの方もたくさんのお客さまにお越しいただければと願っている。今年1年は環境問題に適合していくための1年となった、その集大成が今週末のレースになる。両クラスともチャンピオンがかかっており、午前中の公式練習でもそうしたチャンピオンを争っているチームがいい走りをして盛り上げてくれていた。引き続き関係者一同で努力してお客さまによいレースをお目にかけることができたらと願っている。

──今シーズンを振り返ると、CNF(カーボンニュートラルフューエル)の導入、オートポリスでの450kmレースの導入など新しい要素の導入があった。また、その一方で第3戦や第6戦などで大きな事故もあり、今後の課題が浮き彫りになった年でもあった。そうした23年シーズンの総括をお願いしたい。

坂東代表:今年は環境をテーマとして、できるところから手をつけていく、その1年目の取り組みの年となった。すべてが正解かどうかは分からないが、GTAとして独自の手法で取り組んできた。CNFに関しては2年のベンチテストを経て、各車両に実地テストを行なって、GT500では開幕戦から全車両CNFで走らせることができた。

 GTA R100とわれわれが呼んでいるCNFを入れて、ベンチテストから希釈や揮発性の問題などが確認された、それを1つ1つ解消して、実際のレースで化石燃料を一切使わない合成燃料を導入することができた。ただ、GT300に関しては希釈に関しての課題があり、(筆者注:プライベートチームである300でエンジントラブルなどが起こってはいけないので)導入を延期することに決めた。

 GT300のCNFに関しては、来週の月曜日にいくつかのチームにここ(モビリティリゾートもてぎ)に残ってもらい、GTA R50とわれわれが呼んでいるGT300用の50%の合成燃料のCNFを利用してもらう計画になっている。このテストで問題がなければ、来季に関してはGTA R50をレースでも導入していきたい。

 レースの距離数を450kmにしたのは、長持ちするタイヤを実現していくという狙いのためだ。同時に持ち込み本数を1セット減らすことで、それを実現できると考えた。例えば、予選で使ったタイヤを1スティント目に使うと、残りはハードでいくということになるが、300kmだと、すべてがソフトでも走りきれる範囲になってしまう。そこを450kmにすることで、より長持ちするタイヤを導入する動機付けになると考えた。今年オートポリスで450kmのレースを導入したのは、そのテスト的な意味もある。

 来季に関しては、300km、450km、300マイル(約483km)、時間という4つのフォーマットの組み合わせでやっていく計画だ。また、さらにタイヤをもう1セット減らしていく。タイヤメーカーともそこは協力して、SDGsのことも考慮に入れながら、より長く距離を走れるレースにしていきたい。そうしたことをやりながら、GTAが目標として掲げている「グリーンプロジェクト」(50%のCO2排出削減)を実現していきたい。

 タイヤにも40%~45%の再生由来材料の導入なども検討していきたいと考えているが、現時点ではどういう基準でそれを実現していけばいいのかなどを検討している段階だ(筆者注:一口に再生由来材料と言ってもメーカーによって定義が違うのが現状で、レースという公平な基準を決めて戦うときにどのように再生由来材料を定義するのかには課題があることを言っていると考えられる)。そうした中で成功するものもあるし、そうではないものもあると思うが、面白いレースをお客さまに見せるという基本は変えずに実現していきたい。

 安全性に対するものは、ドライバーの「だろう運転」の影響が大きい。プロドライバーなのだから、そのクオリティを上げていかないといかない。みなさんもご存じのとおり、本年にはいくのかのインシデントがあった。車両のクオリティが上がっている中で、速さを抑制すればすべて解決ではないのではないかという議論をしている。

 実際、もっと速くて軽量なF1カーが鈴鹿の130Rで大きな事故をしているかと言えばそうではない。われわれのレースの基本はGT500とGT300が混走していることであって、それを維持しながらどうやって速さを抑制していくのか、またそれ以外にできることは何なのかしっかり議論していく必要がある。

 来季に向けてやれることは、空力を抑制することを検討している。GT500に関してはスキッドブロックも1~2mm程度高くするなどの方向性で検討をしている。ただ、GT300はその方向で抑制していくのは簡単ではない。というのも、GT300には、日本独自のGT300とFIA GT3という2つの規格の車両があるからだ。GT3車両はホモロゲーションで改造などに制限があり、その数字をわれわれ独自で変えることは難しい。マニファクチャラーが製造している車両の車高を変更するのは難しく、例えば測るところ1つをとっても車両ごとに変わってくる。もともとGT3が成り立っているのは、タイヤがワンメイクだからであって、SUPER GTではタイヤをコンペでやっており、GT3全体の規定を変えるなどは簡単ではないのだ。

 去年岡山のレースでやったウエートを積むということが1つの可能性で、チームなどにアンケートをとったりしながら、来季までにそこは決めて行きたい。そのあたりは今後もテクニカル部会や作業部会などでどこが落とし所であるのかを議論していきたい。すでにSROともやりとりをしているが、決まったパーツを使っているGT3では車高に触るのは難しいのではという返答ももらっている。その意味では落とし所はやはりウエートではないかと思う。

──オートポリスの定例会見で、会見後にブリヂストン 取締役 代表執行役 Global CEO 石橋秀一氏と会談があり「よりワイドレンジなタイヤ作りをお願いしたい」というお話しをされていた。ブリヂストンの反応やワイドレンジのタイヤの考え方を教えてほしい。

坂東代表:ワイドレンジというのは、要は温度レンジに入っているかどうかと、摩擦係数がピンポイントにあっているかどうか、そのレンジをもっと広いキャパシティを持たせてほしいという意味だ。長く走れることももちろん大事だが、温度レンジと摩擦係数も重要で、その部分でクオリティを上げてほしいとお願いした。

 石橋CEOとの会談の中でも、現場の方もいらっしゃって、石橋CEOから現場もその方法でやっているのか?と聞いていただけたりしている。

 ただ、そういうことはブリヂストンにだけお願いしている話ではなく、ダンロップにも、横浜ゴムにも同じ考え方で模索してもらっている。例えば横浜ゴムはスーパーフォーミュラでSDGsをうたっているなどしており、同じような取り組みをやっている。その中で来季は1セットを削減し、そうしたSDGs的な方向性の中での競争の在り方をみなで模索していて、GT500がワンメイクになったりしないように競争を作り上げていきましょうということを模索している。

──GT300のCNF 50%のテストがある。どれくらいの燃料を配るのか。また、グリーンプロジェクト2030について、もう少し話せることがあれば教えてほしい。

坂東代表:月曜日には2号車、30号車、31号車、52号車、61号車、65号車の6台がテストに参加する。合成燃料の割合は50%なので、自分の中では大丈夫ではないかと考えている。ただ、年初の段階でもそう思ってやる計画だったが、さまざまな経緯から今年は導入を見送ることになった。燃料に関しては1日分として300Lを用意しているので、十分な量だと考えている。

 ただ、大事なことは、そうしたことをやってどのくらいCO2の排出を削減できたのか定量的にきちんと結果をだしていくことだと考えている。というのも、この燃料を運ぶためにどの程度のCO2が必要になったのか、あるいは生産にどれだけのCO2が必要になり、逆に削減できたのか、そういうことをきちんと数字にしなければいけないと考えている。今後はそうした専任のスタッフを雇うなどのことも考えていかないといけないと思っている。

 我々としては、2030年になっても環境に配慮したレースを行ない、さらにお客さまを集められるレースシリーズになりたいと思っている。そこでどれだけカーボンニュートラルに近づいたのか客観的に示さないといけない。
 タイヤメーカーも、マニファクチャラーも努力をした、次にチームやわれわれは何をしないといけないのか、そうした数字として客観的に効果を最大化していかないといけない。今年の取り組みはその第一歩であり、そうしたことを着実に積み重ねた先に未来があると考えているので、しっかりと取り組みを進めていきたい。

2024年のSUPER GTのレースは300km、450km、300マイル、3時間と4つのフォーマットで行なわれる

坂東正明代表

──シリーズに多大な貢献をしてきたタイヤメーカーのミシュランがこのレースを最後にGT500の活動を休止する。GT500を離れていくミシュランに対してのコメントと将来の復帰への期待をお願いしたい。

坂東代表:ミシュランとはこのシリーズになる前のJTCCの時代からも長い付き合いでやってきている。フランスで開発して生産したタイヤを日本に持ってくるのはコストもかかる大変な活動だ。ミシュランの側でもツーリングカーでバチバチにやっているレースはSUPER GTしかないということを評価してやってくれている。

 しかし、今回の欧州の方向性と、自分たちの方向性などがあり、休止ということに踏み切ったと聞いている。それはそれとして尊重したいが、これまで一緒にやってきていただいたことに感謝し、いつの日かまたSUPER GTとミシュランの方向性が重なったときには、ぜひ戻ってきていただけるような体制を作り上げていきたい。最後に本当に心から「ありがとう」という言葉を申し上げたいと思う。

──来季のレース、300マイルと時間レース。具体的にはどのぐらいの時間を検討しているのか、どの時期のどのレースになるか?

坂東代表:時間レースは3時間のレースになる。あとは皆さんで想像してみてほしい。

──今回のGT500も3メーカーがそれぞれ1台ずつチャンピオン争いに残るなど、非常に激しい競争が繰り広げられている。そうしたSUPER GTを今後も盛り上げていくにあたって、坂東代表のビジョンを教えてほしい。

坂東代表:レースだからいろいろ起きるのは仕方ないのだが、前回のレースではしっかり終えることができた。ただ、そのいろいろ起こるのもレースの一部であって、思ったとおりに行かないのがレースだ。

 だからこそワクワク、ドキドキできるのがレースで、それがお客さまに伝わっていって、興味を持っていただけるというのがレースの一部だ。もちろん、そうしたアクシデントが起こってほしいということではなく、(安全性などに配慮しながら)面白いレースをお客さま目線に立って作り上げることが大事だと思っている。

 自分としてはそれを毎回真剣に考えており、面白いレースとは何なのかを毎回真剣に考えている。それがお客さまに伝わっているのか、それは自分では分からないが、自分としてはそこを真剣に捉えてやっているつもりだ。

 というのも、やっている側が面白いと思っていないものを、お客さまに面白いなんて思っていただけないからだ。だからこそ、そうしたコアの部分を大事にしながら、継続的に改善できるところは改善し、レギュレーションにも手を入れていくということを今後も真剣に取り組んでいきたいと思っている。

──前回のレースではそれまでの何戦かで問題になった再車検で失格ということはなかった。それはやはりチーム側の意識もクオリティを高めようということになったということか?

坂東代表:そのとおりだ。同じことを繰り返すようだが、車検で数字がちょっとでもオーバーすれば、数字は数字として扱わないといけない。レース業界ではかなりきつい言葉になる「失格」と言わざるをえない。(自分もチームを運営していた立場からすれば)失格という言葉を告げるのは本当に可哀想なのだが、でも数字は数字だ。だからこそチームもクオリティを上げないといけないという話をさせていただき、今後もそのことを周知徹底していきたい。