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SUPER GT第6戦SUGO、坂東代表定例会見 観客が帰った後にレース結果が変わる理由について語る「できるだけ短くしたいと思ってはいるが……」

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

 SUPER GT第6戦SUGOが9月16日~17日の2日間にわたってスポーツランドSUGOで開催されている。9月17日午後には決勝レースが行なわれるが、決勝に先立ちSUPER GTのプロモーターであるGTアソシエイションによる定例会見が実施された。

 GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏は「CNF(カーボンニュートラル燃料)の取り組みは今後も続けていき、来年はGT300に予定どおりR50(50%が合成燃料)を導入していき、将来的には国産のeFuel導入を目指したい。そして、今後はLMDhのようなハイブリッドの仕組みを検討し、タイヤに再生由来素材の導入を検討するなどして、持続的成長が可能なモータースポーツ、SUPER GTを目指したい」と述べ、CNFやeFuelなどの取り組みを今後も加速させていきたいと強調した。

2027年~2028年に二酸化炭素と水素からなるeFuelの導入を目指し、国産化を実現していく

──坂東代表より冒頭の挨拶を

坂東代表:天候もよく、サーキットのETCスマートインターもできるなど環境も整いつつある。ただ、そのスマートインターからサーキット近くの駐車場を先頭に渋滞が発生していた。両方の写真からそこの駐車場に入るところに課題がありそうだということで、サーキット側に改善をお願いした。帰りに関しては渋滞を緩和してスムーズに出ていただけるようにしているようだが、入ってくる方は想定以上だったということだ。ただ、それもこれもたくさんのお客さまに来ていただけているからだ。

 実際、前年比130%になっており、コロナ前の2019年と比べても違和感はなくなっている。SUPER GTの観客が減っているとおっしゃっている方もおられるようだが、それは事実に反しており、決して減っていることはない。モータースポーツも、SUPER GTも元気だよということをもっとアピールして、モータースポーツやSUPER GTが安定した産業になり、そこで働く方々の雇用もきちんと守れるようにしていきたい。

 すでにSUPER GTも後半戦に入り、GT500では多くの車両が2基目のエンジンを投入して、より競争は激しくなっていく。ブリヂストンもミシュランとの最終決戦に向けていろいろやっているようだし、さまざまな競争の方向性を求めて、今後もSUPER GTを発展させていきたいと思う。今回のスポーツランドSUGOのレースは東北唯一のレースということで、楽しみだ。

──FIA F4のアニメ「オーバーテイク」がまもなく放送開始される。アニメということで、モータースポーツのファン以外にも訴求できる部分があるのではないだろうか?

坂東代表:FIA F4は、2015年から8年間やってきて来季から東レカーボンマジックが作るシャシーとトムスのエンジンによる第2世代のマシンになる。ツインリンクもてぎ(当時)でF4という言葉を、(当時)童夢の林みのる氏から言われて、やることを決めた。

 カートなどからステップアップし、今ならスーパーフォーミュラライツやフォーミュラリージョナルなどにステップアップしていきたいカテゴリーとして始めた。そこからGT300やGT500にもステップアップする人ももちろん対象としており、F1のようにフォーミュラの上を目指す人も輩出してきた。来年の車両は40台を生産する計画で、キャパシティ的にはシーズン開幕前までにさらに5台を追加することが可能な体制になっている。

 オーバーテイクに関しては、とても有名な声優さんがやってくれていて、富士ではそうした方をお呼びしてイベントを開催することができた。ここでは、昨日のF4レース前にステージで流させてもらったほか、夕方にはビジョンで流している。今後アニメを起点にして、新しいファンの方がモータースポーツに興味を持っていただけるとうれしいと思う。

 こうしたFIA F4だが、シリーズとして成り立っているのは、日本以外ではイタリアとフランスぐらい。日本でこのシリーズをやっているのは、すでに述べたように若手育成を行ないたいからだ。そのため、レースディレクターには、若手がきちっと育っていけるように、マナーなどは徹底させてほしいとお願いしている。

──CNFについて、GT300は来季からになったことは以前発表された。その後の進捗は?

坂東代表:GT500に関しては今使っているものを来季も継続して使う。GT300に関してはテストしたところ、希釈などの問題が発生したため、50%となるR50というものを来季使うことを検討しているというのは以前お話ししたとおりだ。現在それをテストしており、GT500のCNFをテストしたトヨタ、日産、ホンダのベンチに持って行ってテストしている。そうしたテストで問題がなければ、今後GT300の実車でテストして問題がなければ、来年はそれを使っていきたいと考えている。今は2400Lの燃料を飛行機で運んでいる状態なので、それを今後は(より低コストな)船便などに切り替えていきたい。

──300はプライベートチームなので、エンジンなどにブローバイ問題がでると困るからという認識か?

坂東代表:そのとおりだ。あとは、これまでも検討してきた燃料の価格の問題もある。今季は半分しか使わなかったものに対して、オーガナイザー、自動車メーカー、タイヤメーカーなどから協賛をいただいている分もあるので、そのあたりもどうしていくかはこれから検討していく必要がある。

 同じものをMFJは100%そのまま使っており、そのほかにも東南アジアのバイクシリーズも使っている。GTAとしては最終的にeFuelを目指しており、二酸化炭素と水素を使った燃料で、これを使えばよりカーボンニュートラルに近づけることができる。その国産化されたeFuelを2027年~2028年に向けて導入できるように、燃料メーカーや自動車メーカーと議論をしていく。

今後はハイブリッドや再生由来素材タイヤなどの議論を進めて、持続成長可能なSUPER GTを目指す

株式会社GTアソシエイション 代表取締役 坂東正明氏

──今回各チームに防犯カメラが取り付けられているが、それはGTAが配布したのか?

坂東代表:自分の気持ちだ(笑)。冗談はともかく、GTAの方で用意して、テントのところにつける防犯プレートと一緒に配布した。自分個人としてはお客さまの中にわるいやつはいなくて、最初からそういう狙いで来る人なんだろうと考えていて、それを防止したいからだ。もっと動線の管理をしっかりやって、ここは入れる、ここは入れませんということはしっかりやっていくことも大事だが、例えばここではスペースの問題からそれが正直難しい。しかし、それでもできることはあるはずだと考えて、こうした取り組みをやっている。

 そういうことを言うと、チームからはもうお客さまを入れなければいいのではという意見が出てくるが、それには同意しない。われわれのレースにはお客さまが来ていただくことが何よりも必要だというのがわれわれの考え方で、お客さまにパドックに入っていただいてもきちんとやっていけるプロ集団であるべきだと私は考えている。

──ここ何レースかで、誰がわるいということではないと思うが、お客さまが帰られた後で、結果が変わってしまうというレースが続いている。それを避けるために何かできることはあるだろうか?

坂東代表:レース中に上がってくるものは基本的にレース中に処理しているが、レースが終わった後で車検があり、その車検で発覚したモノに関してはそこからの処理になる。その前に表彰式などが行なわれ、お客さまがお帰りになられるというのが同時並行的に行なわれており、それまでに車検を行なって結果を確定させるというのは難しいのが現状だ。

 この間の鈴鹿での第5戦での件(23号車 MOTUL AUTECH Zが2位に入賞したのに再車検でスキッドブロックの厚みが足りないことが判明し失格となった件)に関して言えば、レース後の車検で調べてみて初めて分かったことを、それからチームの関係者を呼んでチームの言い分を聞いてから裁定を下すことになる。そうした規定はFIAの方で定められている手続きになるので、それを変えるというのは難しい。

──そうしたルールがあるのは分かるが、もう少し早く判定するのは難しいのだろうか? 例えばサッカーやラグビーなどでは映像を見直して即座に判定するということをやっている。車検委員会の方もそうした仕組みを導入してみるのはどうか?

坂東代表:裁定が出てから決定するまでにも時間がかかる。その間に場合によってはチーム側の抗議、控訴そうした手続きがあり、チーム側が了承してそこから30分程度が経って正式結果が出るようになっている。

 もちろんそれを短くするということは不可能ではないが、いくら短くしてもそうした手続きには時間がかかる。それがモータースポーツのルールだからだ。抗議や控訴はチームの権利だし、それを制限する訳にもいかない。いずれにせよルールはルールとして尊重しないといけない。もちろんそれをできるだけ短くしたいと思ってはいるが……。

──GT300のチームは1チームが撤退を決定、1チームが活動を休止と、現在2チームが減っているが、来年チームは27台に戻ると考えてよいか?

坂東代表:2チームのうち1チームは撤退、1チームは休止と異なっているがそうした状況にあることは認識しており、来年のエントリーに関しては、GTE(GTエントラント協会)とも話し合っている。いずれにせよ、来年のエントリー締め切りまでには決まると思うが、フルエントリーにしたいと思っていることは事実だ。

 ただし、それ以上増やせるかと言えば、ワイルドカードの枠(海外のチーム用に用意されている枠、SUGOのような小さなサーキット以外のレースで出場できる枠、以前はこの枠を利用してタイのチームなどが参戦していた、2枠が確保されているが本年は使われていない)をどうするのかという議論、予選落ちがでても枠を増やすのかという議論になる。

 その辺りはシード(SUPER GTの場合はチームが過去の結果などによりシード権があり、そのシード権があるチームはガレージの枠に制限がある小さなサーキットでも優先的に出場できる)の仕組みとも絡んで来る話で、そこはルールどおりにやっていく。

 今GT300に関しては4台ほど待っていただいているような状態で、枠が空くようであればご希望をいただいているところとお話しをして、決めて行く形になる。

──最後に代表から

坂東代表:われわれはモータースポーツと環境の取り組みの両立を目指している。LMDhと同じようにハイブリッドの議論は進めていかないといけないし、タイヤメーカーの再生由来素材の配合ということも近い将来には目標を設定して運営できるようにしていく必要がある。そうした取り組みをした上で、2030年になっても音が出るレースを、胸を張ってできるようにしていきたい。今後もチーム、自動車メーカー、GTAなどがきちんと経済的に回り、投資家の皆さんにも興味を持っていただけるようなレースを目指していく。そうしたことで、モータースポーツやSUPER GTが持続的に成長して継続できるようなプラットフォームを作っていきたい。

【記事タイトル変更 9月18日18時30分】記事初出時、「SUPER GT第6戦SUGO、坂東代表定例会見 2027年~2028年には二酸化炭素と水素からなるeFuelの導入を目指す」との記事タイトルとしていましたが、観客が帰った後にレース結果が変わることについて坂東代表が語った部分に言及されることが多く見受けられたため、改題しました。