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パナソニック オートモーティブシステムズ、IVI事業についての説明会 レクサス「NX」とマツダ「CX-60」の採用事例も初紹介
2024年3月22日 20:55
- 2024年3月22日 開催
パナソニック オートモーティブシステムズ(PAS)は3月22日、同社の中核事業と位置づけるIVI事業について説明会を開催。「価値創出、共創活動」「大規模ソフトウェア開発」「グローバル生産・供給体制」の3点に事業競争力があることを強調してみせた。
パナソニック オートモーティブシステムズ インフォテインメントシステムズ事業部IVIシステムズビジネスユニット長の中村知樹氏は、「PASは開発における競争力があると自負している。カーメーカーとの戦略的パートナーシップにより、IVI事業を拡大していきたい」と前置きし、「クルマを進化させる価値の源泉が、ハードウェアからソフトウェアに移行している。今後は電子化や電動化のさらなる進展により、ソフトウェアを中心としたSDV(Software Defined Vehicle)の潮流が重要になる。ソフトウェアを速いサイクルで進化させることが求められる。また、車載アーキテクチャーはソフトウェアを進化させやすいようにECUの統合化が進んでいる。機能ごとに搭載されていたECUが、ドメインごとにECUが統合化され、さらに統合HPC(high Performance computer)に進化する。これによりシステムが複雑化し、大規模化するが、それに対応するには製品開発プラットフォームや高度な開発力に加えてグローバルITプレーヤーやシリコンベンダー、カーメーカーとの連携が重要になる。PASはこれらの点での優位性を保ちながら事業を進めていきたい」と述べた。
PASでは、IVI(In-vehicle infotainment=車載情報通信)にオーディオシステム、ディスプレイ表示、スマホ連携、ナビ機能を搭載し、車両情報と連携した統合システムと定義。「車室内におけるインフォメーションとエンタテイメントを重ね合わせ、司る車載機器」としている。
2017年にトヨタ自動車向け車載オーディオを開発したのが、同社IVI事業のスタートだという。世界初となる車両OS「AGL(Automotive Grade Linux)」を開発。Linuxに加えてAndroidによる汎用OSを活用し、これをベースとしたIVI機器の提供と、大規模ソフトウェア開発を推進し、トヨタ自動車に続き本田技研工業向け、マツダ向けにもIVI事業を拡大してきた。
中村氏は「車載機器が民生用機器の機能を取り入れるというトレンドの中で、汎用OSを採用し、スマホやAV機器との連携を推進してきた。パナソニックグループが持つコンシューマ向け機器の開発ノウハウや知見、技術、人材を生かしながら、製品化してきた」と振り返る。
自動車産業ではCASE(コネクティッド、オートノマス、シェアリング、エレクトリック)という言葉が用いられているが、PASではPACE(パーソナライズ、オートノマス、コネクティッド、エレクトリフィケーション)に焦点を当てて事業を推進。「クルマの価値が車内空間や移動体験に移行する中で、パーソナライズのニーズは着実に高まっている。クルマの価値基準がソフトウェアにシフトし、アップデートでの対応も広がる」などと述べた。
なお、IVI市場におけるパナソニックグループの世界シェアは22%となり、2位のポジションにあるという。また、ディスプレイオーディオのシェアは28%で世界1位だという。
IVI事業の3つの強みのうち、1つめとなる「価値創出、共創活動」では、グループシナジー、グローバル体制の強みを訴求。「AV、モバイル機器、ホームなどの幅広い分野で事業を展開しており、人と暮らしに寄り添ったノウハウ、知見を持っている。これをIVI事業に展開している点が強みである。また、日米中欧アジアの5極に拠点を構えているグローバルフットプリントを生かし、各地域のカーメーカーやIT企業とパートナーシップを結び、地域のトレンドを押さえて価値が提供できる。カーメーカーが持つクルマに関する知見も共有し、実現したい価値を具現化するための手段を提供することができる。戦略的パートナーシップにより、クルマの価値を向上させていきたい」と述べた。
2つめの「大規模ソフトウェア開発」では、大規模化によって開発する拠点や人が多岐に渡ること、膨大な評価が必要になること、さまざまな課題を解決しなければQCD(クオリティ、コスト、デリバリー)に大きな影響を与え、開発が破綻する可能性があることなどの課題を指摘。「大規模ソフトウェア開発を成立するための取り組みをノウハウとして蓄積することが事業競争力の源泉になっている。高品質、高速にインテグレーションサイクルを駆動し、ソフトウェアをリリースする仕組みを構築するとともに、AI活用やクラウドネイティブな開発環境の確立も推進している」などと説明した。
とくに知識やノウハウの標準化により、DXを活用した可視化を実現し、早期に対応を図る予測型マネジメントを行なう「開発マネジメント」、高品質、高速なインテグレーションサイクルを実現し、開発における自動化環境を整備する「開発環境」、7つの規律によって構成するクオリティマネジメントと、4つの視点で取り組むES(従業員満足度)による「人を活かす仕組み」が重要であると位置づける。
中村氏は「PASではデジタル化を推進する一方で、DXの活用と人との連携を重視した開発マネジメントサイクルを立ち上げている。また、多拠点をつないだチームによる開発体制を構築し、自動リリースや自動評価、自動解析を行なえるようにすることで、統合とリリースのサイクルを高速駆動させている。さらに、最終的にはソフトウェアを作るのは人であり、人を活かすことが重要であると考えており、誰も再現ができるクオリティマネジント(QM)やESの取り組みを重視している」と語った。
QMにおいては「つながりボード」を設置。メンバーが考慮すべき優先順位が明確に示され、緊急度や課題の大きさを色分けすることで、滞留しているタスクやメンバーの状況などが確認できるという。「ほかの人に仕事を助けて欲しい場合には、『お助け』欄にタスクを貼ると、メンバー全員で助け合うことになり、チームによる課題解決が迅速に進められる」という。
また、ESにおいては「お助けボード」を用意。「リスクが顕在化する前に、モヤモヤしている事案を『グレーニュース』として提示し、組織内で早期に課題を察知し、対策の打ち手を決めている」という。
なお、ソフトウェア開発におけるAI活用も進めており、過去に課題が発生した際のデータをもとに進捗状況と照らしあわせて、課題発生を予測。タイムリーに対策が打てるようにしているという。
3つめの「グローバル生産・供給体制」では、日米中欧アジアのそれぞれの地域において自社生産工場を持ち、地域の特性に最適化した供給体制を実現していることを示しながら、車載機器に求められるグローバルで同一品質基準を設定し、行為平準化を達成しているほか、700種類以上の超多品種生産を進めながら高効率に生産し、需要変動への柔軟に対応できるオペレーションを実現。設計の上流工程から製造に至るまでリアルタイムでの状況の可視化と、競争力を高めるモノづくりDXに取り組んでいることも示した。
今回の説明会では、同社のIVIシステムがトヨタが北米および欧州において販売しているレクサス「NX」と、マツダが日本、北米、欧州向けに販売している「CX-60」に搭載していることを初めて公開した。
パナソニック オートモーティブシステムズ インフォテインメントシステムズ事業部IVIシステムビジネスユニット IVI商品開発センター所長の中村欣央氏は、「NXとCX-60ではUIが大きく異なるが、それぞれのカーメーカーとPASが一緒になって考え、仕様に落とし込み、開発はPASが中心になって行なう体制を取っている」と説明。また、「NX向けにはDXを活用したスピーディな品質の作り込みに対して評価をもらっている。開発の際にはソフトウェアを毎日のようにバージョンを上げてリリースしており、手戻りが少ないこと、クルマが求める品質の作り込みを、計画通りに行なうことができた。2021年10月にNXが発売されて以降、市場からも品質が高いという評価を得ている」と胸を張った。
なお、PASではトヨタ、ホンダ、マツダ以外にも、海外向けカーメーカーに対してIVI事業を展開していることも明らかにした。
PASにおいて、IVIシステムズビジネスユニットを含むインフォテイメントシステムズ事業部はそのほかにも、コネクティッドモビリティプロダクツビジネスユニットや、関連会社のパソナニックITSなどで構成している。
PASグループ全体の売上高は2022年度実績で1兆2975億円。そのうち、インフォテイメントシステムズ事業部の売上高は4855億円となり、37%を占める。事業部としてはPASにおいて最大規模を誇る。
中村知樹ビジネスユニット長は、「インフォテイメントシステムズ事業部はパナソニックグループの創業者である松下幸之助による『物をつくる前に人をつくる』の方針を徹底し、実践している事業部である。人材育成に注力し、ES向上といきいきした職場づくりに向けてさまざまな取り組みを行なっている。幹部と社員がカジュアルな座談会を重ねながら、人と人のつながりを強め、ボトムアップの風土を作っている」と述べたほか、「1人ひとりの社員が前向きな気持ちで開発に従事している環境づくりを進めている。人の活性化を促せる仕組みを持っているのが強みになる」と強調した。パナソニックグループにゆかりがある場所を使いながら、幹部が合宿形式で目指したい組織風土実現に向けた取り組みについて、議論していることなども紹介した。
また、同事業部長の田辺孝由樹執行役員は、YouTubeを活用した情報発信にも積極的で、社内外の人材育成に取り組むリーダーに向けた映像を制作し、配信しているという。