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パナソニック、2023年度第3四半期連結業績 オートモーティブは自動車生産の回復で好調ぶりを示す

2024年2月2日 発表

2023年度第3四半期(2023年10月~12月)連結業績を発表したパナソニックホールディングス株式会社 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏

 パナソニックホールディングスは2月2日、2023年度第3四半期(2023年10月~12月)連結業績を発表した。発表によると、車載電池などを担当する「エナジー」の売上高は前年同期比8%減の2288億円、調整後営業利益が300億円増の306億円となった。米国IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)の影響を除くと、売上高は前年同期比1%減の2546億円、調整後営業利益が80億円増の86億円となった。また、車内コクピットシステムなどを担当する「オートモーティブ」の売上高は前年同期比17%増の4047億円、調整後営業利益が106億円増の221億円となった。

 パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「エナジーは車載電池において、北米工場での需要増と生産性向上の取り組みによって好調な実績を上げたが、国内工場の減産や減販により減収となった。また、産業・民生においては、生成AI市場の拡大に伴い、データセンター向け蓄電システムが売上げを牽引して増収になった。さらに固定費の増加はあったものの、原材料価格変動と売価反映のバランスの良化がプラスに働いたことが影響して増益になった」と述べた。

 また、オートモーティブについては「顧客の自動車生産が回復したことによって増収となった。オートモーティブは第3四半期累計で年間公表値を超えている」としたほか、「固定費の増加に加えて、部材価格の高騰の影響は残ったが、増販益や部材高騰分の価格改定、合理化などによって増益になっている」と好調ぶりを示した。

「エナジー」の売上高
「オートモーティブ」の売上高

 2023年度通期(2023年4月~2024年3月)見通しも修正。エナジーでは売上高を前回公表値から260億円増額の前年同期比7%減の9060億円(IRA影響を除くと1兆50億円)に上方修正した。内訳をみると、車載電池は北米工場での増販によって売上高を上方修正したが、国内工場において北米高級車向け減産見合いに対する価格アップや稼働補償などの顧客への補填請求が想定を下まわり、「求償未達」が発生したことや、過去の製造不具合品の処理費用の増加によって利益は下方修正した。

 梅田氏は「求償未達は主にスタートアップ企業を対象にしたものであり、IRAの適用にならない8万ドル以上の高級車の売れ行きが影響している。稼働損の求償が想定していたよりも低くなっている」と説明。また、「不具合については過去に生産した電池で、能力面で落ちるものがあり、品質の引き当てを行なった。すでに恒久対策が取られており、発火したり発煙したりすることはない」とした。

 一方で、車載電池とともにエナジーを構成する産業・民生においては、データセンター向けの蓄電システムの増販が見込まれるため、売上高および利益の見通しを上方修正したとしており、梅田氏は「第3四半期から生成AI系のビジネスが顕著になってきている」と述べた。

 現在、パナソニックグループでは2022年度末時点で約50GWhとなっている車載電池の生産能力を、2030年度にはグローバルで200GWhにまで引き上げる計画を打ち出しており、梅田氏は「目標は打ち出してはいるが、2030年度までになんとしてでも200GWhにまで引き上げるという考えはない。顧客の需要に合わせながら投資を行なっていくことになる」とする。現在、米国カンザス州に車載電池の新工場を建設中で、2023年2月に建屋工事に着工しており、2024年度中には2170セルの量産開始を目指している。「カンザス州の工場は、2024年度末から2025年度にかけて売上げを大きく牽引することになる」と期待を寄せる。

 また、大容量の4680セルの事業化に向けては、競争力をさらに高める高容量化技術を導入。2024年度上期には和歌山工場で量産を開始する計画を明らかにしている。

車載電池の国内工場の取り組みについて

 さらに、FTA(自由貿易協定)国におけるサプライチェーンの強靭化に向けて、車載電池の負極に使用する黒鉛の開発において、カナダのNouveau Monde Graphiteとオフテイク契約締結に向けて合意。現在、協議を進めていることや、同じく負極に利用するシリコン材については、2023年7月に英ネクシオンと提携したのに加えて、2023年12月には米シラ・ナノテクノロジーズと高エネルギー密度化に寄与する負極用シリコン材調達に関する売買契約を締結したことを発表している。

 さらに車載電池の販路拡大として、マツダやスバルと車載用円筒形リチウムイオン電池の供給に関する中長期的なパートナーシップを構築。2020年代後半に投入するバッテリEVへの搭載を視野に、契約締結に向けた協議を行なっているところだ。開発、生産、販売といった観点で、投資や協業の拡大を進めていることを強調した。

 一方オートモーティブでは、2023年度の通期見通しを、売上高、調整後営業利益ともに上方修正した。売上高は300億円増額の前年同期比15%増の1兆4900億円、調整後営業利益は100億円増額の前年同期比288億円増の430億円としており、梅田氏は「オートモーティブでは自動車生産が緩やかな回復基調にある。また、人件費の高騰影響は継続しているものの、価格改定や増販益などが貢献して、売上高、利益ともに上方修正した」と説明した。

 なお、パナソニックグループでは2024年3月末を目標に、パナソニックオートモーティブシステムズの株式の一部を、資産運用会社であるApollo Global Managementのグループ会社が取得する方向で協議を開始したことを発表しているが、「日々さまざまなことを協議しており、この交渉は確実に進捗している。だが、このパートナーシップは2023年度の通期見通しの中には織り込んでいない。また、審査やクロージングなどのスケジュールを考えると、2024年度も連結対象会社として残ることになる。ここで得た資金は成長領域に投資する」などと述べた。

パナソニックオートモーティブシステムズの株式の一部をApollo Global Managementのグループ会社が取得する方向で協議を開始

 今回の決算でも、米国IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)が大きく影響している。IRAはバイデン政権が打ち出した過度なインフレの抑制とエネルギー政策を推進する法律であり、バッテリEV向け電池などの販売に対する税控除を行なう「Section 45X」と、バッテリEV購入者に対する税控除で行なう「Section 30D」で構成される。

 パナソニックグループの業績には「Section 45X」が影響し、ネバダ工場の生産および販売分はIRAの施行直後の2022年12月末から対象に、建設中のカンザス新工場も2024年度の生産および販売開始後から対象となる見込みだ。これにより、ネバダ工場では年間約13億ドル、カンザス新工場では年間約10億ドルの補助金が見込まれている。

ネバダ工場では年間約13億ドル、カンザス新工場では年間約10億ドルの補助金が見込まれる

 2023年12月になって「Section 45X」の細則案がようやく発表されたが、当初発表の内容の一部追加に留まっており、同社では受け取る補助金見合いや、顧客との有効活用分を計上。IRA補助金の現金化手段には、「法人税の還付」「直接給付」「第三者への権利売却」の3つの方法があるが、2023年度は「直接給付」の選択を想定するとともに、北米事業の強化や拡大に向けた顧客との有効活用も想定し、補助金総額の半分を調整後営業利益に計上している。

 今回の発表によると、IRAに関しては第3四半期において売上高で258億円減、調整後営業利益220億円増、当期純利益で284億円増の影響があったという。

米国IRA補助金の業績影響について

 一方で、2024年11月5日に行なわれる米大統領選挙の行方次第では、将来的にIRAの実行に影響が出る可能性を指摘する声もある。梅田グループCFOは、「カンザス工場の建設および稼働は、IRAが決定する前に意思決定をしたものであり、その計画の上でコスト競争力を作り込んでいるところである。また、ネバダ工場も生産性が上がっている。IRAの影響は付加的なものとして考えていく」との姿勢を示した。