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パナソニック、2023年度第2四半期連結業績 好調だった車載電池事業が一転して実質的な赤字に
2023年10月31日 14:02
- 2023年10月30日 発表
パナソニックホールディングスは10月30日、2023年度第2四半期(2023年7月~9月)連結業績を発表した。好調だった車載電池事業が、一転して実質的な赤字に転落した。
車載電池事業を担当するエナジーの2023年度第2四半期の売上高は前年同期比1%減の2384億円、調整後営業利益が96億円増の235億円となった。そのうち、車載電池の売上高は前年同期比4%増の1597億円、調整後営業利益は118億円増の170億円と増収増益となったが、米IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)の補助金の影響を除くと、調整後営業利益は44億円の赤字となった。
この理由について、パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「IRA法のうち、セクション30Dと呼ぶ自動車購入者に対する補助の取り決めにより、その対象とならない8万ドルを超える高価格帯の電気自動車の需要が想定以上に鈍化した。テスラでは、この補助金制度にはあまり敏感ではない人たちが購入すると予想していたようだが、高価格帯の自動車の販売そのものが思わしくない」とコメント。
また、「国内工場においては、第1四半期まではテスラの需要に応え、一定規模の生産を実施してきた。だが、需要動向の変化を受け、在庫水準の適正化を図るべく、第2四半期から生産調整を実施し、ラインを止めた。第1四半期との比較で約6割の減産になっている。この影響により、国内工場の収支が大幅に悪化した。その一方で、将来の成長に向けた先行費用は予定通り計上しており、和歌山工場では2170セルの新製品開発と、4680セルの量産に向けて開発を加速している。これも減益に影響した」と述べた。
パナソニックエナジーでは、国内において1865セルの車載電池を生産。テスラの高級モデルである「モデルS」向けに供給をしている。同モデルは8万ドルを超える価格設定となっており、補助金の対象とならないため販売台数が急激に鈍化したという。第1四半期まではテスラから強いデマンドがあり、それにあわせて生産体制を構築していたが、需要の鈍化にあわせていっきに減産。在庫の適正化を図ったという。
また、国内工場で生産した車載電池は船便で輸送し、米国の生産拠点であるPENA(Panasonic Energy Corporation of North America)に運び込むという長期のリードタイムを持つ。「第1四半期に生産し、積層している在庫は購入してもらいながら、日本での新たな生産を大幅に削減した」という。
その一方でPENAでは、36GWhの年間生産能力を37GWhに増強。米国内では堅調な生産を続けているという。「補助金対象となる車両の販売は好調である。テスラでも車両価格を8万ドル以内に抑えたり、さまざまな機能を無料で搭載したりするなどの手を打っている。しかし、少しの需要回復は期待できるが、今後も高いデマンドは見込んでいない。在庫は正常化したが、1865セルの国内生産についてはフルラインで回すことはないと考えている。第3四半期以降は在庫の適正化を前提に、生産量を低くくしながらも生産と販売をリンクした形で活動を行なっていく。国内の収支悪化に歯止めをかけるとともに、北米では旺盛な需要に対応し、収益拡大を目指す。また、基地局などの車載以外の用途への対応も検討していく」とした。
さらに、中長期的には国内顧客や商品基盤の拡充に取り組む考えも示した。「マツダやスバルへの採用のほか、さまざまなお客さまと話をしているところである。国内工場はテスラ向けの1865の生産だけであったが、テスラ一辺倒ではなく、また1865のみにこだわらず、お客さまの裾野を広げ、国内工場でも拡張を図っていく」と述べた。
なお、エナジーの2023年度上期(2023年4月~9月)の売上高は前年同期比1%増の4768億円、調整後営業利益が233億円増の537億円となった。また、2023年度通期見通しを下方修正し、売上高は7月公表値から1500億円減少の前年比9%減の8800億円、調整後営業利益は200億円減少の同754億円増の1150億円とした。
パナソニックグループ全体の2023年度上期(2023年4月~9月)連結業績は、売上高は前年同期比1.4%増の4兆1119億円、営業利益は28.8%増の1928億円、調整後営業利益は31.8%増の1923億円、税引前利益は34.6%増の2243億円、当期純利益は168.7%増の2883億円となった。
ここでもIRAの影響がある。IRAではクルマの購入者向けのセクション30Dによる補助金だけでなく、米国で生産しているEV向け電池などの販売に対する税控除を行なうセクション45Xがある。パナソニックエナジーはこれに該当しているが、依然として細則が未定であるため、受け取る補助金見合いや、顧客との有効活用分を決算に計上している。この結果、第2四半期では調整後営業利益において、IRAの影響を除くとわずかに減益になったという。
IRA補助金の現金化手段として、「法人税の還付」「直接給付」「第三者への権利売却」があり、2023年度は「直接給付」の選択を想定しているほか、北米事業の強化や拡大に向けた顧客との有効活用も想定して、補助金総額の半分を調整後営業利益に計上している。
第2四半期は売上高で251億円をマイナス計上したほか、調整後営業利益では補助金見合いとして465億円から顧客との有効活用分をマイナスして214億円、当期純利益では、これに繰延税金資産計上による影響として62億円を合計した276億円を計上している。
一方、オートモーティブの売上高は前年同期比20%増の7082億円、調整後営業利益は143億円となった。自動車生産の回復がプラスに働いたほか、車載コックピットおよび車載エレクトロニクスともに、部材高騰分の価格改定やコストダウンを進め、増収増益になったという。
また、オートモーティブの2023年度通期見通しを上方修正。売上高は7月公表値に比べて900億円増の1兆4600億円、調整後営業利益は150億円増の330億円とした。為替のプラス影響に加えて、自動車生産の回復に伴う増販益などが上方修正の要因になっている。