ニュース

SUPER GT開幕直前公式テスト 2024年は新予選方式やCIVIC TYPE R-GT導入でエキサイティングなシーズンの展開に期待

2024年3月23日~24日 実施

午前中の公式テストセッション1でトップタイムをマークした、2023年のGT500クラスチャンピオン車両の36号車 au TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太組)

持ち込みタイヤセットが4セットになった2024シーズンのSUPER GT

 日本でもっとも観客動員数が多く人気のある四輪レースシリーズ「SUPER GT」。4月13日~4月14日に岡山県の岡山国際サーキットで行なわれる開幕戦に向けて、3月23日~3月24日に静岡県の富士スピードウェイで公式テストが行なわれ、各チームが最終テストに臨んだ。

 2024シーズンのSUPER GTは、2023年と同じ全8戦で国内6つのサーキットを転戦して行なわれ、レースは距離と時間の違いで「300km」「3時間」「350km」という3つのフォーマットが用意されている。第1戦(岡山国際サーキット)、第6戦(スポーツランドSUGO)、第8戦(モビリティリゾートもてぎ)が300km、第2戦(富士スピードウェイ)、第3戦(鈴鹿サーキット)、第7戦(オートポリス)が3時間、そして第4戦(富士スピードウェイ)、第5戦(鈴鹿サーキット)が350kmで開催される。

 また、イベントが2回開催される鈴鹿サーキットと富士スピードウェイでは、それぞれ3時間と350kmと異なるフォーマットで開催されるように配慮されており、2回とも見に行っても違う展開のレースが楽しめる。

今シーズンのレーススケジュール

 2023年は300kmと450kmの2種類だったのが、2024年になってレースフォーマットが増えたのは、SUPER GTが目標としている、できるだけカーボンニュートラルを実現したレースシリーズを作っていく「SUPER GT Green Project 2030」という取り組みの一環。1つのタイヤセットで走る距離を伸ばすとともに、できるだけタイヤセットを減らしていくことで、無駄なタイヤ消費を減らして、環境に配慮したレースシリーズになるということを実現するためだ。

 実際にSUPER GTでは今シーズンレースの週末を通じてドライタイヤは4セット(1セットは4本なので合計16本)、ウエットタイヤは5セット(合計20本)のみを持ち込める(SUPER GTのルールでは土曜日午前の公式練習前にタイヤへのマーキングが行なわれ、そのマーキングされたタイヤセットが持ち込まれたタイヤという扱いになる)。

 全てのセッションが晴れて「WET宣言(=ウエットタイヤの使用許可)」が出されなかった場合には、土曜日午前中の公式練習で1セット利用し、午後の予選でもう1セット、そして決勝レースはそのタイヤでスタートし、残り2セットはレース中のタイヤ交換で使用される。なお、決勝レースで何回ピットストップしないといけないかは今後決定される予定で、今後おいおい明らかになるだろうが、第2戦、第3戦、第4戦、第5戦、第7戦という350kmか3時間のレースでは第3ドライバーの登録が認められており、これらのレースでは2回のピットストップが義務づけられる可能性が高い。その意味では開幕戦、第6戦、第8戦の300kmレースでは1回のピットストップで済んでしまうため、新品のタイヤセットが1セット残ることになる。予選では1セットのみしか利用できないため、練習走行で利用するか、それとも変則的なピットストップで利用するか、あるいは急な温度変更に合わせて予想される天候とは逆の天候に合わせたタイヤにするのか、各チームの作戦にも注目が集まりそうだ。

 予選の戦い方も注目ポイントの1つだ。今シーズンのSUPER GTの予選は、従来通りQ1、Q2で行なわれるのは同じだが、ノックアウト方式ではなく、2人のドライバーがそれぞれQ1、Q2を走り、合算タイムで予選順位が決まる。従来はQ1をBドライバーが走り、Q2はAドライバーが走ってより上位を目指すなどのやり方が一般的だったが、これからはQ1のドライバーもQ2のドライバーも速くなければ予選で上位に来られなくなる。その意味で、従来よりもAドライバーも、Bドライバーも高いレベルにあるチームが予選で上位に来ることになる、例年以上に2人のドライバーのレベルがそろっているチームが有利になる可能性が高い。

GT500には新しくHonda CIVIC TYPE R-GTが参戦。初年度チャンピオンなるか!?

ホンダのHonda CIVIC TYPE R-GT

 SUPER GTにはGT500、GT300という2つのクラスがあり、速度域が違う車両が混走していることが大きな特徴となっている。もともとGT500は500馬力、GT300は300馬力という意味合いでつけられたクラス名だが、現在はそうした意味はなくなっており、“GT500がより速いクラス”という程度の意味の数字になっている。

ダンロップタイヤを履くHonda CIVIC TYPE R-GT
ブリヂストンタイヤを履くHonda CIVIC TYPE R-GT

 GT500は、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業という日本を代表する三大自動車メーカーによるワークスカーが参戦するクラスとなっている。車両はSUPER GTがドイツのDTMと共同で導入した規定に基づいて作られており、DTMがFIA GT3ベースの車両に移行してからはSUPER GT独自のレーシングカーとなっている。このGT500の車両は、共通のカーボンモノコック、直列4気筒2.0リッター直噴ターボエンジンが利用されており、外観はスケーリングと呼ばれる手法で、各メーカーのベース車両を元に拡大ないしは縮小することで、各メーカーの車両イメージを投影したスタイルとなっている。

ブリヂストンタイヤを履くNISSAN Z GT500
ヨコハマタイヤを履くTOYOTA GR Supra GT500

 トヨタの「TOYOTA GR Supra GT500」、日産の「NISSAN Z GT500」は2023年と同様の車両だが、ホンダはベース車両を「NSX Type S」から「シビック TYPE R」に変更し「Honda CIVIC TYPE R-GT」という新しい車両で参戦する。トヨタと日産が「GRスープラ」「フェアレディZ」とスポーツカーをベースにしているのに対して、ホンダは“TYPE R”というスポーツグレードではあるものの、普通のセダンとして販売されているシビックで参戦するというのも今シーズンの1つの話題と言ってよい。

 また、SUPER GTでは新型車両が登場した年には、その新型車両がチャンピオンになるというジンクスがあり、直近では2022年にNISSAN Z GT500が登場初年度にチャンピオンになっている。その逆に2020年にGR Supra GT500はチャンピオンが獲れず、翌年にチャンピオンになっている。その意味でCIVIC TYPE R-GTがどちらになるのか、その点も要注目だ。

バラエティに富んだGT300。2024年も多数のメーカー、車種が参戦する

SUBARUの61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(GT300)

 GT300に関しては、SUPER GTの独自規定車両である市販車をベースに大幅に改良したGT300、GTAが販売する基本パーツを利用したGT300 MC(MC:マザーシャシー)、そしてFIAが規定している自動車メーカーがレース専用に作っている車両(FIA GT3)という3種類の車両が走っており、BoP(Blance of Performance:積まれる重りの量を変えたり、エンジンの出力を絞ったりして性能を均衡させること)により性能を調整して、異なる種類のレーシングカーでも面白いレースができるようにしている。

日産の56号車 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(FIA GT3)
ランボルギーニの87号車 JLOC ランボルギーニ GT3(FIA GT3)
アストンマーティンの777号車 D'station Vantage GT3(FIA GT3)
ホンダの18号車 UPGARAGE NSX GT3(FIA GT3)
トヨタの5号車 マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号(GT300 MC)
レクサスの50号車 ANEST IWATA Racing RC F GT3(GT300)
BMWの7号車 Studie BMW M4(FIA GT3)
トヨタの30号車 apr GR86 GT(GT300)
トヨタの25号車 HOPPY Schatz GR Supra GT(GT300)
メルセデス・ベンツの23号車 アールキューズ AMG GT3(FIA GT3)
フェラーリの6号車 Velorex Ferrari 296 GT3(FIA GT3)
レクサスの31号車 apr LC500h GT(GT300)

 こうしたルールにしているため、GT300には実に多くのメーカーの車両が参戦。スバル、トヨタ(レクサス)、日産、ホンダなどの国産メーカーだけでなく、アウディ、アストンマーティン、BMW、フェラーリ、メルセデス・ベンツ、ランボルギーニなどの車両も参戦しており、バラエティに富んでいることが特徴だ。

 また、SUPER GTのもう1つの大きな特徴は、タイヤメーカー同士の競争が行なわれていることだ。現在世界中のレースでは、ワンメーク供給というのが一般的。例えばF1で言えばピレリ、WECのHypercar/LMDhクラスではミシュラン、インディカーならファイアストン(ブリヂストンの米国子会社)など、1つのメーカーが独占的に供給し、タイヤメーカー同士が競争している例はほとんどない。しかし、世界中の主流なシリーズ戦の中で、SUPER GTは唯一タイヤメーカー同士の競争が行なわれており、GT500にはダンロップ、ブリヂストン、横浜ゴムが参戦し、GT300に関してはダンロップ、ブリヂストン、ミシュラン、横浜ゴムの4社が参戦して競争を行なっている。

 今シーズン、ミシュランがGT500の参戦休止を決定しており、ダンロップ、ブリヂストン、横浜ゴムの3社体制になっており、2023年までミシュランのタイヤを使っていた日産の2車(3号車、23号車)は、2024年からブリヂストンにスイッチ。体制が変更されたことでシリーズの行方にどんな影響を与えるのかにも注目が集まるところだ。

GT500は16号車 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT、GT300は88号車 JLOCランボルギーニが模擬ポールを獲得

模擬予選で「模擬ポール」を獲得した16号車 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT (大津弘樹/佐藤蓮組)

 3月23日に富士スピードウェイで行なわれたSUPER GTの公式テスト初日では、朝からあいにくの雨となり、各チームともに貴重なウエットタイヤのテストセッションとして活用することになった。

 午前中の公式テストセッション1はGT300車両のクラッシュで赤旗中断になったまま終了したが、GT500は2023年のチャンピオン車である36号車 au TOM'S GR Supra(坪井翔/山下健太組)、GT300は9号車 PACIFIC VSOP NAC AMG(阪口良平/冨林勇佑組)がそれぞれトップタイムをマークした。

GT300の模擬ポールを獲得した88号車 JLOCランボルギーニ(小暮卓史/元嶋佑弥組)

 午後には新しい予選ルールを適用した模擬予選が行なわれた。今回はウエット路面での模擬予選となり、新しい予選ルールでのWET宣言が出された場合の運用の状況が確認された。結局この模擬予選で、GT500はQ1とQ2の合算でトップになった16号車 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT (大津弘樹/佐藤蓮組)が、GT300はWET宣言のためQ2のタイムで最速をマークした88号車 JLOCランボルギーニ(小暮卓史/元嶋佑弥組)が、それぞれ模擬ポールを獲得した。