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F1 日本グランプリ目前の角田裕毅選手に話を聞いた 新チームで戦う新シーズンの調子は“ポジティブ”

Visa Cash App RB Formula One Team 角田裕毅選手

 4月5日~7日に開催される「2024 FIA F1世界選手権シリーズ MSC CRUISES 日本グランプリレース」(F1日本グランプリ)を目前に控え、Visa Cash App RB Formula One TeamからF1に参戦する角田裕毅選手のメディアラウンドテーブルが開催された。

 新チームとなった2024年、角田選手は第1戦のバーレーンを14位、第2戦のサウジアラビアを15位、第3戦のオーストラリアを7位で終え、次戦は上がり調子で挑むホームグランプリの鈴鹿サーキット。日本グランプリへの意気込みや、新チームとなってから変わったこと、これまでの3レースの振り返りなど、角田選手に話を聞いた。

角田裕毅選手
ホンダウエルカムプラザ青山に転じされていたVisa Cash App RB F1 Teamの「Visa Cash App RB Formula One Team VCARB 01」ショーカー

春開催の鈴鹿の印象は?

──序盤戦を終えて、ここまでの戦いを振り返っていかがですか。

角田選手:ここまでの戦いを振り返って、チームとしてすごくコンスタントにどのサーキットでもパフォーマンスを発揮できているっていうのはすごくポジティブです。特に去年の同じ時期だとコースによって特性が合う・合わないみたいなのが多くて、ポイントを取れるレースと取れないレースがはっきりしていた部分もあったのですが、今回は今のところ3戦を終えて毎回ずっとトップ10を争っているので、そこはすごくチームとしてポジティブだなと思います。それだからといって僕のモチベーションが変わるわけでもないのですが、その分さらに集中して、予選ではいいパフォーマンスをコンスタントに築けているので、今のところはすごくいいシーズンではないかなと思います。

──日本グランプリは2024年から春の開催になりましたが、何か異なる点があるでしょうか。

角田選手:2024年の日本グランプリはいつもと違って4月ということで、ちょっと今までと違った鈴鹿グランプリが見られるんじゃないかなと思いますし、いつも通りワクワクしてます。かと言って、日本グランプリだからすごく興奮してるとかというと別にそうではなくて、いつもと変わらず、24レースあるうちの毎年同じ国でレースするぐらいのリラックスしたメンタル面でもあるので、そこは僕的にはいいスイートスポットにいるんじゃないかと思います。

 もちろん、やっぱり日本グランプリで日本人のファンの皆さんの前で走るのはすごく楽しみですし、過去2年で味わった歓声の前で走るのは日本人としてすごく特別で、光栄で、誇らしいことなので、その皆さんの前で今年こそはトップテンに入って、決勝のリザルトで活躍を見せていけたらなと思います。

──2025年以降も日本グランプリは春になりそうですけれども、角田選手としては、まだどうなるか分からないシーズンの序盤と、これまでの日本グランプリのようなチャンピオン争いやドライバーの契約などを抱えている時期と、ドライバー目線だとどちらがいいですか。

角田選手:春の鈴鹿は桜が見えていいですよね、たぶん。桜の中で走る鈴鹿。10月は特に枯れ葉が多かったのかな。紅葉のシーズンだったら紅葉が見られたのですが。春だとたぶん路面温度もいいですし、F1は路面が冷たいとタイヤがもっとグリップして、タイヤがいい性能を発揮するので、もっとタイムが伸びるんじゃないかなと思うし、その分、鈴鹿をもっと楽しめるかなと思います。

 正直、プレッシャーっていうのはそこまで変わんないですかね。2023年もそのぐらいに(契約を)更新したと思うので。今は逆にまだシーズン序盤で早めなので、そういったところはまだ考えてないですし。そういった場面でいうとそこまで変わらないですね。

──2024年のレースを見ているとトップの5チームとの差が結構あり、トップ5と下5チームという感じに見えるのですが、角田選手はどう感じていますか。

角田選手:予選では結構タイトなんですけど、決勝だとどうしてもまだクルマのパフォーマンス差が大きいのかなっていう。トップ5……メルセデス、フェラーリ、レッドブル、アストンマーティン、マクラーレンはやっぱりペースが1段階上なので、レースになると少し厳しい部分もあって、9位、10位、特に10位を取るのはさらに2023年より難しく感じます。ただ、その分予選がタイトなので、オーストラリアで見せたように、少しでもいいラップを築けばいいスタートができて、その分チャンスが高くなるので、そういったのを続けていけたらなと思います。それでもトップ5は本当に速いので、これからもちろんアップデートもたくさんすると思いますし、その中で追いついていってトップ6と言われるぐらいのチームになれればなとに思います。

──鈴鹿は毎回かなり意気込みがすごいと感じていたのですが、先ほどのコメントを聞くとすごく落ち着いていると思いました。そのあたり、過去2年の日本グランプリとは違っていますでしょうか。

角田選手:やっぱり最初の年はすごく期待していたというか、最初の鈴鹿グランプリは2022年で、その4~5年前ぐらいに実際にサーキットへ1人の観客として見に行っていたので、自分が実際走るってなったときはすごく特別な思いで、期待もすごく高かったです。2023年ももちろん興奮してはいたんですけど、2024年は結構落ち着いていますね。今はメディアの皆さんとお話したりとか、そういった日々を送っているので、サーキットに入って実際に走り出すまでは特に今までと変わらないですし、そこでサーキットを走り始めたからといって、「お、日本グランプリだ。なんかプレッシャーを感じる」みたいな、そんなことはないかなと。逆に楽しみですね、本当に。鈴鹿っていうサーキットがレイアウト的に好きですし。さらに、予選のときに関してはQ1、Q2、Q3に入っていくときに観客の皆さんが拍手していくあの光景を前に走るのはやっぱり特別ですね。

──日本グランプリ3回目はそのほかのグランプリと同じような、気持ちとしては1つのグランプリとして臨みたいとおっしゃっていましたが、過去の2回の経験上なるべくコクピットに座ったら平常心で走ろうという気持ちを持ってきているのか、それとも過去2回もやっているので、今年は自然な感じでそのほかのグランプリと同じような感じで臨めているっていう気持ちを素直に今おっしゃってるのか、どちらですか。

角田選手:本当に自然で、今までと……バーレーンのときと、オーストラリアのときと変わらないですね。自然と落ち着いていられますし、どっちにしろサーキットでできることは自分が最大限力を発揮することで、やることは変わらないので。別にそこで日本グランプリだからといって、特別今までと違うアプローチをするわけでもないですし。そのぐらいですかね。でも本当にサーキット自体、走るのはすごく楽しいです。天候は不安ですけどね。よければいいなと思います。

──開幕2戦はなかなかポイントを取れそうで取れないというレースで、メルボルンでようやくそれができたわけですけど、メルボルンでできたっていうのは、チームのどういうところが成長したと考えていますか。

角田選手:チーム代表のローランや新しい人がかなり入ってきたわけですけど、最初の2戦は今までと変わらない状態をキープしながら、ローランの目でどこが足りていないかとか、今までのチームから前に進むのはどこを補強しなくちゃいけないのかっていうのを見ながらやっていて、ローランの目で補強すべきところがある程度分かってきた中で、少しずつチームとしてオーストラリアで変えた部分もありました。

 そして、人と人とのコミュニケーションの仕方も、やっぱり新しい人はまだ完全にリラックスして話せないと思いますが、そういった部分もありながら、オペレーション自体もすごくスムーズにいくようになって。メルボルンはスタート位置がよかったこともあって、ストラテジー的には結構はっきりしていた部分もありました。特に10番手と11番手までだと、ちょっと前のクルマがピットインしたらとか、ピットする前に入ったりとか、そういうのを考えなくちゃいけないんですけど、7番手だとやっぱりある程度トップ5の中で走ってるので、自然にペースもよくなりますし、その分中盤勢の最初のスティントではギャップを広げて、その分ストラテジーもどんどんクリアになっていくので、そこは結構ストラテジー的には簡単だったのかな。簡単に走れたことも自分的にはうれしいですし、それをちゃんと最後まで発揮できたチームもそこは成長だったのかなって思います。

──予選で8位にいけたというのは角田選手のドライビングがすごく大きかったと思うのですが、開幕前から2024年はクオリティにこだわっているということをずっとおっしゃっていて、そういうアプローチの仕方というか、角田選手の状況の違いみたいなものが予選のパフォーマンスに影響している部分ってありますか。

角田選手:もちろんクオリティを高くしていきたいとは思いつつも、あまり意識はしていません。とにかくFP1からFP3までの積み重ねですね。特にFP1、FP3はセットアップに集中しながら、自分のドライビングもどんどん積み重ねていって。もちろん予選で1番プッシュするので、1番思いっきり走ったときに挙動が変わる、変わらないは、やっぱりFPでプッシュをしなければ同じ挙動が出ないので、自分も同じペースで積み重ねながらクルマの状態を把握して、納得いくようなクルマも仕上げられるように積み重ねています。過去3戦は予選で1番いいクルマを仕上げられているので、そこが1番いいかな。例えば、FP3とかFP2のときの方がよかったなっていうのは今は全然ないです。本当に予選で毎回まとめ上げられて、1番いいクルマに仕上げられているので、その分自信を持っていけますし、クルマを信頼して思いっきり走れるので、そこがいいところかなと思います。

──RBのクルマと鈴鹿との相性はどういうふうに見ていますか。

角田選手:そこまで心配はしていないですね。それこそさっき言ったように、ここ3戦全てのサーキットでいいパフォーマンスを発揮しているので。サウジアラビア、バーレーン、オーストラリアとどれも違う特性のコースでトップテンに毎回近く走れて、鈴鹿も同じような見込めるかと思います。オーストラリアほどかどうかはちょっと正直分からないですけど。でも僕の予想ではサウジアラビアに近いかな。サウジアラビアも高速コーナーが多くて、鈴鹿も高速コーナーが多いので、近いパフォーマンスを発揮できるかと思います。さらに100%のアップデートがあって、さらにそこでパフォーマンスを伸ばせれば、もしかしたらオーストラリアグランプリぐらいのパフォーマンスを出せるかなと思います。

──来週末金曜日、日本人ドライバーの岩佐選手と一緒に走るわけですけど、先輩ドライバーとして初めて公式セッションに臨む岩佐選手にアドバイスがあれば。

角田選手:僕としては結構うらやましいですよね。僕はシニアドライバーのときにFP1で日本グランプリは走れなかったので、そこを体験できるっていうのはうらやましいですし、それを本当に思いっきり楽しんでほしいというのは思います。本当に特別なことなので。彼も走れば分かると思いますし、彼も彼自身で、走ったらもちろん彼のパフォーマンスを思いっきり発揮していくと思うので、楽しむことですかね。

チームも自身も2023年から成長

──ここまですごくいい走り、戦いぶりで3戦を終えてると思うんですけれども、2023年から2024年にかけて、ご自身で「こういうところが成長した」「こういうことをやったからこういうことができた」みたいな変化はありますか。

角田選手:あんまり無線で叫ばなくなったのが1番大きいです。それが結構大きいかなっていうのはあります。叫んでも別に集中が切れるとかそういったことを感じたことはなかったんですけど、そういう自分のキャラクターなのか、走ったときに出るような感じなんですけど、それをできるだけ抑えています。結局チームが知りたいのは、クルマのフィードバックや、クルマがどういう挙動をしているか、そういったフィードバックだったり、タイヤの状況だったりで、それを伝えるのが1番チームにとってプラスなので。

 その……バーレーンでちょっとやりすぎた部分もあったんで、それが自分の中でどこかのきっかけにもなって、これは本当に変えなくちゃいけないなということで。そこから意識して、過去2戦は自分の中でそういった、自分が熟成してるというか、ドライバーとしてさらにちゃんとトップドライバーに近い、世界チャンピオンとかに近い、熟成しているところを見せなくちゃいけないので。特にこれからチームがどんどんドライバーに注目していくときに、そういったところは結構見られるので、意識しながら走っています。そうすると自然とミスしても、今まで叫んでクールダウンしにくかったのが、それを自分で抑えていくことによって、抑えられた自分もうれしいですし、早くクールになるので、そこで集中力もキープできるっていうのが1番大きいかなと。パフォーマンスには影響しないだろうって今まで思ってたんですけど、過去2戦見るとちょっとは影響してたのかなって感じますね。

──ボタンを押さずに叫んでいるときはないんですか。

角田選手:何回かあります、もちろん(笑)。ただ、それだって1回、2回ぐらいですかね。別に悪口やなんか変なことを言っても、自然とゆっくり、静かに抑えてます。

──戦略のお話がありましたけれども、2024年になっていろいろ人が入れ替わるなどして開幕2戦うまくいかなかったとはいえ、戦略面で成長したと角田選手の中で感じられてますか。

角田選手:最初の2戦はそこまで思わなかったですが、オーストラリアは結構スムーズにいけたので、そこは成長できたかなというふうに思います。でもまだ1回だと分かりにくいですし、もうちょっと見て、成長できたかどうかはチームとしても分かっているので、そこはできるだけ重視して、コンスタントでいいストラテジーを組めるようなプランを立てていきたいなと思っています。

──開幕2戦で言うとRBが戦略を間違ったというよりもハースがうまくやったところもあるのではないかと考えているのですが、ハースが結構いろいろがむしゃらにやってくる感じってどうご覧になってますか。

角田選手:バーレーンは僕らがミスった部分もあって。ミスっていうか、全然ストラテジーがダメで。サウジアラビアとオーストラリアはハースは結構ラッキーだったなったって。特に序盤でセーフティーカーがあって、そのタイミングで(ピットに)入れてポジションアップしてたので、オーストラリアは特にヒュルケンベルグに関してはラッキーだったのかなと思います。

 サウジアラビアのマグヌッセンを犠牲にしてヒュルケンベルグが(ポイントを)取ったのは素晴らしいなと思いますし、ストラテジーとして今ある中のルールの中で最大限したので、あそこはやり方……僕と僕のチームとしてハッピーじゃないですけど、尊敬できるストラテジーだなと。僕もあそこぐらいアグレッシブにいかないと、それこそ今のフィールドだとポイントを取るのはすごく難しいので、それは素晴らしいなと思います。

──小松さんと話していた姿を見かけたのですが、何を話していたのですか。

角田選手:オーストラリアでサウジアラビアのことに関して話していました。お互い勘違いがないように、今の僕が言ったようなことを言いましたし、向こうもマグヌッセンが4輪で抜いたことは知らなかったって言っていたので。

 あとは僕の興味本位で、彼がチーム代表になったときにどういったシチュエーションなのかとか、どういうふうにまとめてるのかとか、どういう心境変化なのかって、普通に僕がメディアみたいな感じでインタビューしてました(笑)。

 彼は楽しいと言ってました、すごく。自分が今までエンジニア部分ができなかった、なかなか自分が変えたいってやってもなかなかできなかったことを、自分が今チーム代表になってやりたいことができるので。ほとんどのチームの人がそれに賛同してやってくれるのはすごく楽しいと言ってました。

──そういう仕事をやりたいと思いますか。

角田選手:たぶん僕はそこまで頭よくないので(笑)。今は運転することが楽しいです。

──メルボルンからはいつ日本に来られたんですか。

角田選手:メルボルンからは3月27日ですね。

──ちょっと日本を楽しめましたか。

角田選手:そうですね。すぐ実家に帰って家族と過ごしました。僕は帰ってくる前に「モツ鍋が食べたい」って言っていて、近くのモツ鍋屋さんに持ってきていただいていたのですが、飛行機のディレイかなんかで家に着いたのは23時半だったんですけれど、その夜23時半にモツ鍋を食べました(笑)。