インタビュー

熱田護のF1インタビュー ホンダ・レーシング渡辺社長に聞くF1再参戦の経緯と今後 「F1の2026レギュレーションはHRCバージョンのためにある」

HRC(ホンダ・レーシング)の渡辺康治社長

 ホンダ・レーシングの渡辺康治社長が、6月30日~7月2日に開催されたオーストリアGPに来場。

 そこで単独インタビューの機会をいただけたので、F1再参戦への経緯や今後について聞いてみました。


──改めて、僕を含めて一般のF1ファンやホンダファンに、撤退発表をしてからモナコのときに発表されたアストンマーティンとともにF1を戦うという発表に対して、何がホンダの中に起こったのかということを時間軸を含めてもう一度説明をお願いします。

渡辺社長:まずホンダがF1をやめるという話は、2020年の夏に決めて10月に発表しました。その時点で、レッドブルが競争力を持って継続できるように対応しましょうということで、2025年までエンジン供給します、ホンダが勝手にやめたのだから迷惑をかけてはならない、ということでした。

 それと、もう1つのもう1回やりたいという話は、2023年の春の話です。F1のPUを製造者登録したときには、ホンダとしてやるという話は全くないと言われていました。ですから、2022年の時点では、やめるということ一択でしたが、製造者登録をして要素研究を始めてみると、やはりもう一度出てみたいとHRCとして変化していったということです。

──その製造者登録をFIAに出した後に複数のチームから問い合わせがあったわけですが、その中でPU使用料をある程度チーム側に負担してもらうということがあったということを含めて、アストンマーティンとの話がまとまったほかに、何か参戦にあたって決め手になったことがあったのでしょうか?

渡辺社長:そうですね、2026年からのレギュレーションというのは、将来のわれわれにとっても電動化や3Dモビリティなどへのコア技術になり得るし、カーボンニュートラル燃料にしても、2輪・4輪、ジェットという多彩な商品ラインアップをそろえているわれわれの中でも、すぐには電動には置き換わらない、もしくは多くの時間がかかるということにしても、2026年のレギュレーションは取り組む方向性が合致するということです。そこがホンダ内部でコンセンサスが徐々に取れていったということになります。

──アストンマーティンF1チームと契約した理由は? また、将来複数チームに供給する可能性は?

渡辺社長:ホンダとして結果を出すことに集中したいので、最初はアストンマーティンだけの供給としました。エンジニアの方からも“勝つ”という結果をまず出したいということです。その先には複数チーム供給という可能性はあります。

──育成プログラムのHRSについておうかがいしたいと思います。アストンマーティンと組む以上、2席しかないシートに日本人ドライバーを乗せるというのは現実的ではないと僕は思いますが、どう考えていますか?

渡辺社長:あり得ないとは思いませんが、難しいとは思います。ただ、勝てるドライバーであればいいので、そういう日本人ドライバーを育てればいいということです。

──僕は、もともと2輪のカメラマンをしていたんです。そこで、最近のMotoGPのレースを見ていると散々な結果になっているのですが、モータースポーツの最高峰カテゴリー両方に参加しているホンダにとって、また、その統括をしている渡辺社長にとって、現状をどう見ていますか?

渡辺社長:ホンダは2輪では世界No.1のメーカーです。モータースポーツをこよなく愛するメーカーとして、われわれのプライドとして、確実に以前のポジションに戻らなければいけないと思っています。これは絶対やります。

 現状何がいけないのかということに関しては、ライバルがわれわれを上まわる開発をしてきたということですから、それを凌駕する開発体制を構築していくしかないと思っています。ライバルのやってきていることを分析し、見極めながら、われわれの体制をしっかり作ります。ただ、やはり元のポジションに戻るまでに時間がかかるとは思っていますし、いろいろなことが起きるだろうと考えています。

──レース活動と一般市販車についての結びつきはどのように考えていますか? 大金を投じてレース活動をしているわけですから、マーケティングにつなげるためにも、HRCというロゴのついた市販車を作るべきだと思うし、ファンもそれを待っているのではないかと思います。

渡辺社長:言われる通りだと思います、今HRCバージョンというのを考えていて、実際に動いているのです。でも、われわれは肩に力が入ってしまうんです。例えば、ホイールを変えただけで、HRCのバッヂを貼った“フィット HRCバージョン”などというクルマは出せないわけですよ。世界のHRCが出すのであれば、真面目なクルマでなければなりません! そこでハードルが上がっていきますよね。

 先ほどから話しているF1の2026レギュレーションは、これこそHRCバージョンのためにあるんですよ! 現状ですと、レースをやっているのにそのイメージのクルマがないじゃないのかと怒られているので、今後はF1の開発技術を使った商品を提供していくためにHRCがあるのだということなどを根本的に変えていきたいと思っています。ぜひ、期待していただきたいと思っています。

──ありがとうございました。


 世界最高峰の2輪・4輪に参戦しているホンダだからこそ、やれることを期待して待ちたいと思います。第4期F1では全く生かせていませんでしたからね。2026年からの第5期F1はそういう面でも楽しみにしていてよさそうです!