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ステランティス、DS・ジープ・フィアット・アルファ ロメオの新型EV4台を日本導入 「ICEも忘れていません」と打越晋社長
2024年4月25日 07:00
- 2024年4月23日 実施
ステランティスジャパンは4月23日、今後の商品・販売戦略に関するラウンドテーブルを開催。代表取締役社長の打越晋氏がQ1(第1四半期)の振り返りを行なうとともに、Q2(第2四半期)の商品、販売戦略について紹介した。
Q2の取り組みとしては、4月10日からキャンペーンを開始した「GO! EV LIFE」を中心とし、1年をかけて新型EV(電気自動車)のDS「eDS 3」、ジープ「アベンジャー」、フィアット「600e」、アルファ ロメオ「ジュニア」を順次導入していくとした。
Q2は「GO! EV LIFE」キャンペーンと新型「ラングラー」がトピック
Q1についての振り返りでは、「非常に厳しい第1四半期だった」と述べつつも、フィアットやアバルトに関しては「2023年並み、あるいは2023年以上の台数を獲得できた」と言い、EVだけではなく、ガソリンモデルも含めたチンクエチェント(500)のファンに支えられた結果だと考えているとした。
また、ステランティスの強みだというバラエティ豊かなモデルラインアップにおいて、さらに個々の顧客の趣味に合ったモデルを提案していくため、今後も特別仕様車は継続的に導入していくという考えを示した。
Q2は4月10日から「GO! EV LIFE」というEVやPHEV(プラグインハイブリッド)といった電動化モデルを対象としたキャンペーンを実施。このキャンペーンは、ステランティスジャパンが取り扱うアルファ ロメオ、フィアット、アバルト、ジープ、プジョー、シトロエン、DSの各ブランド計18の電動化モデルを購入すると、二子玉川 蔦屋家電のコンシェルジュによるセレクトアイテム25~26万円相当分か、購入サポート20~30万円をプレゼントするというもの。
4月26日~29日には二子玉川 蔦屋家電で、アルファ ロメオ「トナーレ プラグインハイブリッド Q4 ヴェローチェ」、フィアット「500e」、アバルト「500e」、プジョー「e-2008」を展示するほか、アバルト 500e、ジープ「レネゲード 4xe」、プジョー「e-208」、DS「DS 4 E-TENSE」に試乗できるイベントが開催される。
打越社長いわく、このキャンペーンは「単にEVを売るのではなく、EVにお乗りいただくお客さまがどういうふうに使って、どういうふうに楽しんでいただくかというものを考えて展開しています」とのこと。前回は第1弾としてEVでも旅行ができるということを示すために、自宅から目的地までをステランティス側でプロデュースするというキャンペーンを行ない、これが「非常にご好評いただき、目標に近い電動化車両を販売できました」ということから、「今度は日常生活で自分を楽しみたいというこだわりを持っていらっしゃる方々に対して、われわれの個性的な電動化車両を買うと同時に、蔦屋家電さんのセレクトアイテムで生活をアップグレードできないか」という提案を行なうために、キャンペーンを実施するとした。
なお、4月10日のキャンペーン開始から2週間で対象車両の受注台数が45%伸長し、直近1週間ではステランティス全体の受注の約1割が対象車両となっているとした。
さらに、打越社長はゴールデンウィーク明けには新型「ラングラー」の発表が控えていると述べ、「異常なまでの円安の中でもチャレンジングな“そこまでやるの”と言っていただけるような価格でご提案できる」と力を込めて紹介した。
EVを中心に「e-CMP」の“フェーズ2”モデル導入
Q3以降は、eDS 3を皮切りに、夏ごろにはアベンジャー、600e、ジュニアといったEVを約2か月ごとに順次導入すると表明。生産や認証、物流などの問題で全てが2024年中に導入できない可能性があるとしつつ、EVモデル専用に開発されたプラットフォーム「e-CMP」に次世代の電池を搭載した“フェーズ2”のモデルとなるEVを導入し、下期の大きな流れにしていきたいとした。
加えて、ステランティスが展開する4つのグローバルプラットフォーム「STLAスモール」「STLAミディアム」「STLAラージ」「STLAフレーム」のうち、STLAミディアムを活用した車両を次の「3008」「5008」から導入すると明かした。さらに今後は、STLAラージの「DS 9」やアルファ ロメオ「ステルヴィオ」なども日本に導入されるとのこと。
このSTLAプラットフォームはEV向けとして効率よく作られているだけでなく、MHEV(マイルドハイブリッド)やICE(内燃機関)も搭載可能で、全長や全幅も変更でき、それぞれのブランドに沿った“味付け”ができるというフレキシブルなプラットフォームになっているという。
打越氏は「今年、計画通りのEVを中心とした流れは変わりませんが、われわれが持っているカードはEVだけではありません。したがって、その市場に合ったかたちで、EVだけではなかなか難しいということであればMHEVも入れられますし、このクルマはEVだけでいいとなればEVだけというふうに、幅広い自由度があります。もちろん1台や2台ではなかなか難しいところではありますが、ある程度のまとまった台数であればちゃんと導入できるというところがわれわれの強みであると思っています」と、乗用車系で7つのブランドを展開するだけでなく、モデルにおいても幅広い選択肢を用意する戦略であるとした。
なお、EVを中心にしていくとしつつも、ICEモデルも継続。アルファ ロメオ「ジュリア」「ステルヴィオ」はまだ現行車両を販売するとのこと。打越氏は「特にアルファ ロメオに関してはブランドを強化すべく、クアドリフォリオといった“とんがったクルマ”をしっかりといろいろなバージョンを入れて、アルファ ロメオの、ICEの楽しさを皆さんに認知していただく」と話すとともに、ジープのラングラーも当面ICEモデルを継続していくとした。
打越氏は「ICEも忘れていません」と語りつつ「私が2020年ぐらいに欧州にいたときに、内燃機関のエンジンの加工であるとか、そういったことをする1次サプライヤー、2次サプライヤーの方がどんどんお仕事を辞めていたんですよね。それは、もうEV化が来るという流れになっていて、OEMからの発注もそういう方向に行っていたので、内燃機関に使用する加工品などの受注が減っていました。そういった流れをまた逆に戻せるかというと、難しいんじゃないかと思います」。
「エンジンはすごく裾野が広く、いったん縮小してしまうなかなか再度広げられないときに、再びエンジンを……となってくるとどうしても単価が上がってしまうんですよね。なおかつ、ガソリンに戻したからといって燃費基準や排出ガス基準を緩くするわけでもないので、開発もし直さなければならない。そうなってくると、ガソリンエンジンが消えてなくなるとは思いませんが、今までみたいに非常に安いガソリンエンジンというのが果たして本当に作れるのかというのは、少し私は心配というか、クエスチョンを持っています」と考えを語った。
そのほかにも、ディーラーネットワークの拡充も確実に進め、1月にはプジョー、シトロエン、DSを1つにした新しい店舗を東京・晴海にオープン。まだ店舗数が少ないというDSについては、5月に日本最大店舗となるDS岡山がオープン。宇都宮にもDSの準備室を設けているとした。
また、2025年には山陰地方初のジープの店舗が米子にオープンするといい、この米子の店舗はジープとプジョーのまったく系統異なるブランドを取り扱う初めての店舗になるとのこと。
なお、「クルマを売ってばかりではなく、クルマを所有していただいている方に楽しんでいただき、よりブランドを好きになっていただくためにも、継続してオーナーイベントもやっていきます」と打越氏は述べ、アバルトコーヒーブレイクやシトロエンキャンプ、フィアットピクニック、ジープのキャンプイベントなどを今年も開催していくとした。
最後に打越氏は「今までもこれから2030年に向けて6割ぐらいを電動車にしますなどと言ってきましたが、それはまったく計画としては変えていません。ただ一方で、今のEVが欧米で少しトーンダウンしていることについてはあまり驚いていません。そもそもEVというのは、2050年、2070年のカーボンニュートラルに向けて自動車会社としてこういうものを作らなければいけないだろうということで始まりました。そして賛同するお客さまにお乗りいただいて順次拡大をしてきましたが、ここで一段落したのではないかと思っています」。
「今は1回使ってみたり、あるいは特に日本の場合はインフラであったり、中古車の価格であったり、そういった最初に買っていただいて、お乗りいただいた後の次の課題が見えてきている段階だと思っています。これは日本に限らずヨーロッパでもそうですし、北米でもそうではないかと思います。そういう状態であるので、この数年間は、われわれ自動車会社がお客さまの使い方に応じてしっかりとご提案をしていって、それを育てていくというスキームに入っているのではないかと思っています。それをしっかりとすることによって、『電動車って使いやすいんだ』と思うお客さまが増え、なおかつインフラをもう少し拡充していけば、ある時期でまた電動化車両にガラッといくタイミングが出てくるのではないかと思っています」。
「エネルギーの供給インフラも、さまざまな要因からガソリンスタンドの投資採算性が難しくなってくるという問題もあるらしく、ガソリンにガッと戻ることはまずないだろうと。また、2040年や2050年には1gで石油8t分のエネルギーを出すような核融合などの新しいカーボンニュートラルな技術が開発されていって、自動車会社もそれに対してちゃんと準備していけば、間違いなく電動化車両に、強いて言えばEVになっていくのではないかと私は思っています。その過渡期としてわれわれはしっかりとお客さまのニーズにあった商品を提案して、電動で走るということが楽しいんだ、便利なんだということをご理解いただくというのが、今のわれわれの役目かと思っています」と語った。