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パナソニック、2023年度連結業績 「エナジー」の売上高は前年比6%減の9159億円、調整後営業利益は550億円増の946億円

2024年5月9日 発表

パナソニックホールディングス株式会社 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏

 パナソニックホールディングスは5月9日、2023年度(2023年4月~2024年3月)連結業績を発表した。発表によると、車載電池などを担当する「エナジー」の売上高は前年比6%減の9159億円、調整後営業利益が550億円増の946億円となった。なお、米国IRA(Inflation Reduction Act=インフレ抑制法)の影響を除くと、売上高は前年比5%増の1兆173億円、調整後営業利益が318億円減の78億円となった。また、車載電池だけでみると、2023年度の調整後営業利益は前年度の107億円から-187億円の赤字になった。

 パナソニックホールディングス 代表取締役 副社長執行役員 グループCFOの梅田博和氏は、「2023年度はIRA補助金を除くと減益になったことは重く受け止めている。国内工場の減産影響や、将来成長に向けた固定費の増加、車載電池における過去の製造不具合品の対応費用として約210億円を計上したことが影響している。すでに対策は終わっているが、電池の能力が低下する問題が発生していた。一方で、北米工場では生産性が向上し、補助金対象車種の需要も好調であり増販となっている」と説明した。

「エナジー」の売上高は前年比6%減の9159億円、調整後営業利益が550億円増の946億円

 2024年度(2024年4月~2025年3月)の「エナジー」の業績見通しは、売上高が前年比4%減の8770億円、調整後営業利益が164億円増の1110億円とした。なお、IRA影響を除くと売上高は前年比4%減の9780億円、調整後営業利益が162億円増の240億円としており、「既存工場の収支改善や、2023年度に計上した過去の不具合品対応費用の反動などにより増益になる」とするものの、「2024年度は、車載電池において当社が主力とする北米EV市場では需要が拡大するが、EVのアーリーアダプター需要の飽和により、そのペースは鈍化すると見込んでいる。普及価格帯の車種が増加すれば、需要はさらに拡大する見込みである」とした。

 さらに、米カンザス工場と和歌山工場の立ち上げのために、先行費用として約300億円を見込んでいるため、車載電池の調整後営業利益の改善は17億円に留まり、2024年度も-170億円の赤字が続くことになるという。

米カンザス工場と和歌山工場の立ち上げのため、2024年度も-170億円の赤字が続くとの見通し

 カンザス工場は2023年2月から建屋の工事に着工しており、2024年度第4四半期には2170セルの量産を開始する予定だ。また、2025年度には生産ラインを増やして生産能力を高め、2026年度後半には目標としている30GWに近い生産規模を予定しており、「カンザス工場はテスラ向け専用工場ではない。コスト力を磨きながらテスラ以外にも展開していく」と述べるとともに、「カンザス工場で4680セルを生産することは決まっていない。しっかりと2170セルの生産を立ち上げていく」とした。

 4680セルについては、2024年度第2四半期には和歌山工場で量産を開始する予定であり、今後、事業化に向けて競争力をさらに高める高容量化技術を導入するという。「今後も北米の生産性向上やロスコスト削減、国内の固定費の絞り込みを行ないつつ、新工場の順調な立ち上げに向けた取り組みを推進することで、早期の利益改善に努める」としている。

 車載電池については、米国のFTA(自由貿易協定)国でのサプライチェーンの構築に向けて、2024年2月にカナダのNouveau Monde Graphiteへの出資と天然黒鉛の長期供給契約を締結したと発表。豪Novoniとは人造黒鉛の長期供給契約を結び、米テネシー州の拠点から黒鉛の北米現地調達を拡大できるという。

 また、販路拡大では2024年3月にスバルと協業基本契約を締結したほか、マツダと電池供給に向けた合意書を締結。両社がそれぞれに2020年代後半に投入する予定のBEV(バッテリ電気自動車)向けへの供給を視野に、中長期的パートナーシップを構築するという。

 梅田CFOは、今回の会見で車載電池事業を長期的視点で取り組んでいることを改めて強調しており、「EVは5年前にはまったく相手にされなかった。その後熱狂がはじまり、現在は現実的な状況にある」としながら、「いまはEV全体の需要の増減でビジネスを語れなくなってきている。地域別に需要を見ていかなくては事業を見誤ることになる。米国ではIRA補助金があり、重要鉱物や原材料への制約も発生している。パナソニックグループは米国市場を中心としており、IRAのSection 45XとSection30Dの要件をいずれも充足しているため、高いコスト力を持ってビジネスが行なえる」とコメント。

 また、「以前からパナソニックはなぜ中国で車載電池のビジネスをやらないのかと聞かれてきたが、これは戦略的に出ていかないことを決定していたからである。われわれの電池の性能などを評価してもらえる米国でビジネスをやっていく。これからは日本市場においても車載電池のビジネスが始まることになる」と述べた。

成長領域の取り組み(車載電池)
米国IRAに関するアドバンテージ
IRAのSection 45Xの対象となる車載電池工場

 国内で生産し、米国に出荷している1865セル向けの古い生産ラインについては、「除却して成長領域の生産に振り向けることを検討しており、これによって国内の新たな需要に対応していく。自動車メーカーとの話し合いを進めているところである」と述べた。

 一方、車内コックピットシステムなどを担当する「オートモーティブ」の2023年度売上高は前年比15%増の1兆4919億円、調整後営業利益が270億円増の412億円となった。また、2024年度の見通しは売上高は前年比2%減の1兆4600億円、調整後営業利益が18億円増の430億円とした。

オートモーティブの2023年度のセグメント情報

 梅田CFOは「2023年度は自動車生産の緩やかな回復基調により増収となった。また、人件費高騰による固定費増加や、部材高騰の影響が継続しているが、増販益や部材高騰見合いの価格改定、合理化などにより増益となった」とする一方、「2024年度は、グローバルの自動車生産はコロナ前の水準を上まわる見通しであるが、引き続き国内外の情勢の影響などによる自動車生産の変動を注視している。車載コクピットの一部商品モデルの終了に伴う減収を、海外カーメーカー向けの車載充電器を中心にした車載エレクトロニクスでカバーし、実質増収になることを想定している。だが、為替影響によって減収になる見通しである」とした。

 なお、2024年度業績見通しには、パナソニックオートモーティブシステムズの株式譲渡損として、その他損益に500億円を織り込んでいる。パナソニックグループでは、2024年3月にパナソニックオートモーティブシステムズの株式をアポログループに譲渡する契約を結んだことを発表している。株式譲渡後は持分法適用会社に移行することになる。