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ホンダ、過去最高の営業利益1兆3819億7700万円、当期利益1兆1071億7400万円を記録した2023年度通期決算説明会

2024年5月10日 開催

2023年度通期の決算について説明する本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏

 本田技研工業は5月10日、2023年度通期(2023年4月1日~2024年3月31日)の決算説明会をYouTube LIVEでオンライン配信した。

 2023年度通期の連結売上収益は前年同期(16兆9077億2500万円)から20.8%増となる20兆4288億200万円、営業利益は前年同期(7807億6900万円)から77.0%増の1兆3819億7700万円、営業利益率は6.8%、税引前利益は前年同期(8795億6500万円)から86.7%増の1兆6423億8400万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年同期(6514億1600万円)から70.0%増の1兆1071億7400万円となった。営業利益、税引き前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益はそれぞれ過去最高の数字となっている。

 また、グループ販売台数は、4輪車が前年同期(368万7000台)から11.4%増の410万9000台、2輪車が前年同期(1875万7000台)から0.3%増の1881万9000台、パワープロダクツ事業が前年同期(564万5000台)から32.5%減の381万2000台という結果になっている。

ホンダの2023年度通期決算
2輪、4輪、パワープロダクツの事業別販売台数

 説明会では本田技研工業 取締役 代表執行役副社長 青山真二氏が決算内容について説明した。

 4輪事業では中国市場で販売台数が減少したものの、米国市場での堅調な需要によってグローバルでの販売台数を増加。2輪事業ではベトナムでの景気減速の影響を受けたものの、インドやブラジルでの増販が下支えとなり、販売台数は前年とほぼ同等を維持している。

本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役副社長 青山真二氏
主要市場における4輪、2輪の販売状況
対前年度で見た税引き前利益の増減要因
事業別の売上収益と営業利益

2024年度は営業利益380億円増の1兆4200億円、当期利益1071億円減の1兆円との見通し

2024年度の業績見通し

 2024年度の業績見通しでは、2輪事業でアジア諸国での販売増により98万1000台増の1980万台、4輪事業では日本、北米での販売増により1万1000台増の412万台、パワープロダクツ事業では欧州での販売減によって15万2000台減の366万台を計画。

 これにより、連結業績では営業利益を380億円増の1兆4200億円の増益としているが、対米ドルの為替レートが5円円高になるとの想定もあり、売上収益を1288億円減の20兆3000億円、税引前利益を1423億円減の1兆5000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益を1071億円減の1兆円の見通しとしている。

 株主還元策では、2023年度の年間配当金を68円/株。2024年度予想は中間配当34円/株、期末配当34円/株の計68円/株としている。このほか、同日開催の取締役会で3000億円を上限とする自己株式取得について議決しているという。

2024年度の販売台数見通し
2024年度業績見通しにおける税引前利益の増減要因
設備投資、減価償却費、研究開発支出の見通し
配当金と自己株式取得について

2020年代後半をめどにハイブリッドシステムのさらなる性能向上、コスト進化を図る

2023年度通期決算のポイント

 また、今回は本田技研工業 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏がホンダの社長として初めて決算説明会に参加。決算のサマリーについて説明し、合わせて今後の収益基盤確立に向けた取り組みなどについて紹介した。

 三部社長は2023年度の実績として、過去最高となる1兆3819億円の営業利益を達成し、2024年度はこれをさらに超える1兆4200億円の営業利益を実現し、営業利益率は現計画で掲げている7.0%を1年前倒しで達成することを目指すとアピール。

 収益基盤を確立する取り組みとしては、2輪事業では圧倒的な基盤を持っているアジア市場に加え、先進国市場での大型車販売を拡大し、南米各国で商品ラインアップ拡充を図って事業体質を強化。“グローバルでバランスよく稼げる体質”を構築している。

 収益性が課題とされてきた4輪事業では、基幹車種である「CR-V」「シビック」「アコード」といったモデルにおけるパーツ共用率の拡大、ハイブリッドシステムのコスト削減、商品性の向上といった取り組みを進め、事業体質を着実に改善。ハイブリッドシステムについては2020年代後半をめどに、さらなる性能向上、コスト進化を進めていく計画と述べた。

収益基盤確立の取り組み

 企業価値向上に向けた取り組みでは、現在1倍以下に留まっているPBR(株価純資産倍率)について、「資本の積み上がりによる資本効率の低下」「4輪事業の収益性」「電動化不透明感による将来不安」という3点が要因になっていると分析。資本効率については積極的な株主還元による資本の適正化を行ない、収益基盤の確立と継続、電動化戦略の明確化などの対応を進めていくと述べた。電動化戦略については5月16日に実施予定の「ビジネスアップデート」発表で詳細を説明するとしている。

 これらの施策と各ステークホルダーとの継続的な対話を進めることにより、早期にPBR1倍超え達成を目指していくと三部社長は強調した。

企業価値を向上させていく戦略

質疑応答

質疑応答で回答する三部社長

 発表会後半で実施された質疑応答では、前年度から2253億円増で1兆円超えを計画する研究開発支出の使い道について質問され、三部社長と本田技研工業 執行役 最高財務責任者 藤村英司氏の2人が回答。

 三部社長は「全体の位置付けとしては、以前からもお伝えしているように電動化や知能化に向けてかなりの開発が必要ということで、2030年までに5兆円を投入する計画をすでに説明しております。その中で、5月16日のビジネスアップデートでも詳細を説明しますが、これまでのところでわれわれの戦略を少し変えており、例えば電動化で必要になる電池を、(旭化成との協業により)カナダで生産する説明をしています」。

「これからは垂直統合型に移行していかなければトータルでの電動ビジネスが成り立たないという状況です。そこに向けた投資、開発も含め、これからはかなり手の内化するということで研究開発支出が増えるということです。ソフトウェアについても、コアになる部分はホンダがやらなければならないということで、研究開発の内容もかなり自前の部分を増やそうということで費用が増加しております」とコメント。

本田技研工業株式会社 執行役 最高財務責任者 藤村英司氏

 藤村氏は「研究開発費については過去最高ということで、この1兆円の中にはこれから関わってくる電動化の機種開発費もありますが、電動化に向けたそもそもの基礎的な部分で、われわれはDRと呼んでいる、各機能をいかに進化させていくかという部分で、機種開発の一歩手前でどんな技術を織り込んでいくかを煮詰めるところも入っています」。

「同時に、これからの数年では、2027年モデルに関してハイブリッド技術を中心とするICE(内燃機関)モデルについてもかなり注力していく所存です。ICEモデルについては2030年でも60%が残るということで、しっかりと稼いでいくという意味で資源を配分していく。両方にお金を使っていくというところが、ここ1~3年ぐらい重要になってくる領域になってきます。研究開発費はなるべく高いレベルで、成長に向けて果敢に使っていくといったステージを迎えます」。

「金額の根拠になるのは、今回出しているR&D調整後営業キャッシュフローというもので、2023年度については3兆円で、2022年度は2兆円なので1兆円のプラスを捻出しております。これはひとえにこれまでかけてきたICEの収益性アップが“稼ぐ力”に表われて、1兆円増やした部分になり、2024年度についても1兆円を使いますが、R&D調整後営業キャッシュフローについては2023年度同様の3兆円クラスを稼ぎつつまかなってまいります。こうした部分でのフリーキャッシュフローの強さ、稼ぐ力の強さをベースとして、将来投資にもお金を振り向けていき、株主還元にも引き続いて強化を図っていく。そのような財務戦略でおります」と説明している。

本田技研工業 2023年度 決算説明会(1時間23分9秒)