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新東名建設中の区間で自動運転時代に向けた路車協調実証実験の現場公開

2024年6月20日 公開

新東名 新秦野IC(インターチェンジ)~新御殿場ICの一部区間で実施される路車協調実証実験の現場を公開

 NEXCO中日本(中日本高速道路)は6月20日、新東名(E1A 新東名高速道路)の建設中区間をフィールドに、2024年5月13日から実施している高速道路の自動運転時代に向けた国内初の路車協調実証実験を報道関係者に公開した。

 実験区間はE1A 新東名 新秦野IC(インターチェンジ)~新御殿場ICの一部区間で、一般区間の約2.8km、トンネル区間の約3.1kmで実施。実証実験のフィールドは、舗装やレーンマーク、防護柵など、完成形で整備された。

小山PAスマートIC方面の写真、富士スピードウェイの施設がちらりと見える
新御殿場インターチェンジ方面の写真

 実施期間は2024年5月13日から7月末ごろまでの約3か月間を予定しており、全10の企業や団体が参加。NEXCO中日本が提示した7つのユースケースに、参加企業・団体から提案のあった3つの提案ユースケースを加えた10のユースケースについて計23件の実証実験を行なう。

 参加企業としては、交通総合研究所を代表にいすゞ自動車、オリエンタルコンサルタンツ、京セラ、住友電気工業、先進モビリティ、トヨタ自動車、豊田通商、日野自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスが「ユースケース1」「ユースケース2」「提案ユースケース1」に参加。ソフトバンクを代表に、本田技研工業、本田技術研究所が「提案ユースケース3」に参加。そのほかにも沖電気工業、KDDI、名古屋電機工業、日本電気、富士通、古河電気工業、三菱重工機械システム、三菱電機といった企業が参画している。

 実証実験では、NEXCO中日本が一般区間で100m〜600mごとに9本、トンネルで500mごとに5本のアンテナ用の支柱を設置。参加企業・団体は、各社の実験内容に沿って、任意の場所を選んで支柱に実験用のアンテナ等を設置している。

NEXCO中日本がアンテナ用の支柱を設置して、参画企業が実験に必要な機材を設置する

 今回公開されたのは、静岡県内にある一般区間の実証実験で、「ユースケース1」「ユースケース4」と2つのユースケースのデモ走行が実施された。

 ユースケース1で、クルマのセンサーにより検知した前方の障害情報を即時に後続車に通知するとともに、道路側の監視カメラでその事象を確認し、確定情報(落下物・事故など)として後続車へ通知する実験を実施している。デモ走行では、交通総合研究所 佐藤哲也氏の説明のもと、先頭車両が故障して走行車線に停止し、故障情報を発信。高速道路脇に設置されたアンテナを介して、自動運転で走行する後続のトラックがその情報を受信して車線変更や減速して故障車を自動で回避するようすが公開された。

交通総合研究所 佐藤哲也氏
自動運転で走行するトラックが先行車両の情報を受信して、車線変更や減速して故障車を自動で回避する

また、ユースケース4として、KDDI 樫原俊太郎氏の説明のもと、自動運転機能の故障などにより停止した車両を、遠隔操作により路肩に誘導する実験が公開された。

KDDI株式会社 樫原俊太郎氏
自動運転での走行ができなくなった車両を遠隔操作で移動させる実験
中日本高速道路株式会社 経営企画部 部長の前川利聡氏

 今回の実証実験について、NEXCO中日本 経営企画部 部長の前川利聡氏は「より安全、安心、快適な高速道路空間を提供したいと、そういう思いの中で自動運転について取り組みを進めてきたところです。道路の側で何ができるかと考えた時に、やはり道路からの情報とクルマからの情報、こういったものを連携、それから補完させることによって安全、安心、快適な走行支援を行なうといった、路車協調というのは非常に大事なものだと考えています」と路車協調の必要性を強調するとともに、「わが社として何ができるかと考えた時に、新東名の建設事業を進めている中で、この建設事業の新道内の空間をうまく使えないのかという思いでいた時に、2021年12月に実証実験という形で公募を行ないました。そういった中で10の企業、団体の皆さまに参画していただくことになりました」と、参画企業からのニーズもあったことを説明した。

中日本高速道路株式会社 高速道路高度化企画室 室長 杉井淳一氏

 また、建設中の新東名 新秦野IC~新御殿場ICについて、NEXCO中日本 高速道路高度化企画室 室長 杉井淳一氏は「新東名高速道路は、現在、海老名南JCTから豊田東JCTまでの間が事業化されております。その中で、新秦野ICから新御殿場IC、この区間のみが現在建設中で、その他の区間につきましてはすでに開通済みです。建設中のこの区間につきましては、特に神奈川県内の高松トンネル、こちらのトンネルが非常に脆弱な地山で、有水も発生しておりまして、現在掘削中ですがかなり難航している状態です。従いまして、現在、2027年度開通を目標に工事を進めています」と工事の進捗について報告。

 実証実験が実施される静岡県内の区間について、杉井氏は「この静岡県内の区間というのは比較的順調に工事が進んでまいりました。目の前にございますように、構造物がおおむね完成している区間もあります。このような中で、2020年度ごろからこの空間を自動運転で何か有効に活用できないかというプロジェクトが弊社の中で始まりました」と説明した。

 この実証実験は、国土交通省、国土技術政策総合研究所、NEXCO東日本、NEXCO西日本、NEXCO総研と連携して実施するもので、実験の結果を踏まえて、高速道路における将来の路車間通信の仕様などが検討される。また、今後、新東名の駿河湾沼津SA(サービスエリア)~浜松SA間の約100kmで2024年度末から実証実験が計画されている自動運転車用レーンの実証に活かしていく予定としている。

【お詫びと訂正】記事初出時のトンネル名に誤りがありました、お詫びして訂正させていただきます。