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チーム三菱ラリーアート、「アジアクロスカントリーラリー2024」の参戦体制発表 トライトン4台のうち1台に社内ドライバー起用
2024年7月4日 13:30
- 2024年7月4日 発表
トライトンのトレッド拡大、リアサスはコイルスプリング化
三菱自動車工業が技術支援するチーム三菱ラリーアートは7月4日、8月11日~17日(現地時間)にタイ南部~中部で開催されるアジアクロスカントリーラリー(AXCR)2024に新型「トライトン」4台で参戦すると発表。この発表に先立ち、オートランド千葉(千葉県千葉市若葉区)においてAXCR2024参戦体制発表会を開催した。
AXCRは1996年に初開催され、2024年に29回目を迎える。アジア各国をめぐる、アセアンで最大規模となるFIA公認のクロスカントリーラリー。
2023年に開催されたAXCRでは、チーム三菱ラリーアートはフルモデルチェンジしたばかりのトライトン3台体制で参戦し、チャヤポン・ヨーター選手(タイ)が総合3位に入賞するとともに、2台以上のエントリーですべての車両が完走し、うち上位2台の合計タイムで順位が争われる「チーム賞」を獲得するなど好成績を残したが、2022年に続いての総合優勝を果たすことはできなかった。
この結果を受け、2年ぶりの総合優勝を目指すべく高速ステージで大排気量の競合車に対抗できるよう動力性能を向上させるとともに、トルク容量の大きい競技用トランスミッション(6速シーケンシャル)を新採用し、耐久性と操作性を向上。また、トレッドを拡大するとともにリアサスペンションをリーフスプリング式からコイルスプリングを用いた4リンクリジッド式に変更することで荒れた路面からの大きな衝撃を吸収し、凹凸の激しい路面での追従性を高めることで悪路走破性を大幅に高めたという。
外観に関しては湧き出した溶岩のエネルギーをモチーフにしたレッド/ブラックの2023年のカラーリングに対し、エネルギッシュなレッドはそのままに巻き上がるダストをデジタライズしたグラフィックを車体前方から中央に配し、さらに湧き出した溶岩が固まって強固な岩盤となった様子をイメージしたガンメタリックを車体後方に配置。「トライトン」AXCR参戦車両の力強い躍動感と耐久信頼性を表現した。
一方、チーム体制については大きな動きがあり、2023年の3台体制から4台体制に変更。総監督である増岡浩氏を筆頭に、2023年に総合3位を獲得した若手ドライバーであるチャヤポン・ヨーター選手(コドライバー:ピーラポン・ソムバットウォン選手)、パリ・ダカールラリー経験者であるサクチャイ・ハーントラクーン選手(コドライバー:ジュンポン・ドゥアンティップ選手)のタイ人チーム、そして2023年に続いての田口勝彦選手(コドライバー:保井隆宏選手)の日本人コンビに加え、新たに三菱自動車の社内テストドライバーを務める小出一登選手(コドライバー:千葉栄二選手)が参戦することとなった。
「総合優勝を目指していきたい」と増岡総監督
発表会で登壇した増岡総監督は、「三菱自動車が技術支援するこのアジアクロスカントリラリー、参戦3年目になります。今年はちょっとドライバーラインアップが変わりましたけれども、総合優勝を目指していきたいと思っております」と述べるとともに、参戦車両であるトライトンについて解説。
増岡総監督によると「かなりのポテンシャルアップを図った」とのことで、エンジン出力の向上とともに扱いやすさを追求したという。その内容としては、まずトレッドを片側45mmずつ広げ、悪路の安定性、高速コーナリング性能の向上を図った。それに合わせ、リアサスペンションをリーフスプリングからコイルスプリングに変更して走行安定性を向上しており、「クルマのポテンシャルが上がったので、皆さん期待を持っていただいてよろしいのかなと思っています」と力強く宣言した。
また、AXCRに参戦する意義については「クルマ(トライトン)の耐久性、信頼性、そして走行性能をこのアジアを中心にアピールするととともに、やはりシャシー、サスペンション、エンジンといった各コンポーネンツの技術開発が主な目的です。モータースポーツから得られた技術をもってクルマ作りを進め、お客さまに安全と安心をお届けするというのがわれわれがこのラリーに参戦する目的です」と説明。
一方、ドライバーの体制説明では社内テストドライバーを務める小出選手について、「今年のトピックは社員ドライバーの小出選手です。僕はパリダカ参戦の後、岡崎でテストドライバーの運転教育を進めているのですが、彼(小出選手)はずっとサポートをやってくれています。元々、車両実験部としてランサーエボリューションやコルトといった、どちらかというとスポーツタイプの車両開発のテストドライバーをやってまして、スピードは十分兼ね備えたドライバーです。彼は初参戦になりますけれども、ラリーで得た経験、ノウハウを三菱の市販車にフィードバックしてもらうというところに期待しています。アジアクロスカントリーラリーではかなり硬い路面のところ、悪路を高速で走るので、ダカールラリーよりも場所によってはクルマが受けるダメージがものすごく大きいのです。毎日ボディブローのように車体に効いてくるのです。そういった中で、そのモータースポーツの現場で得た経験をクルマ作りに生かしてもらいたい。そういう願いを込めて今年、チームのサポート役になりますけれども彼に走ってもらいます。こういう三菱の伝統を受け継いでいってもらいたい、そういう期待を込めています」と、ドライバーに起用した意図について語っている。
発表会後、小出選手をいつAXCRのドライバーに起用すると決めたのか、増岡総監督に聞いたところ「2023年のAXCRが始まる前から出したいと思っていて、現地に呼びました」とのこと。この現場で2024年のAXCRに出ることが決まったそうだが、社内でテストドライバーを務め、日ごろから増岡総監督に鍛えられているとはいえ、なんと本格的なラリーへの参戦はしたことがなかったという。そのため3月と5月にタイのローカルラリーに参戦し、ラリーへの適合を図ったというから驚きだ。
そのラリーへの印象について小出選手に聞いたところ、「やっぱり過酷ですね。1番思ったのがコドラがやっぱすごいなってところです。(小出選手のコドライバーを務める)千葉選手はオフロードにすごく長けている。僕はどちらかというとアスファルトの上でしか走っていないので、アスファルトは自信あるのですが、オフロードはほぼ素人みたいなもの。先週もタイにテストで行ってたのですが、ずっと隣で『下手くそ』と言われ続けました(笑)。特有の走らせ方がありますよね、いまそれをどんどん吸収している状況です」と答えてくれた。
と言いつつ、最後に目標を聞いたところ「まずは完走です。(自分のほかにトラントンが)3台いるじゃないですか、1台くらい食えんかっていうのはありますが、ラリーは欲を出すと本当にヤバいので」と、チラリと牙を見せる一面もあったことを報告する。
なお、チーム三菱ラリーアートとして2024年がAXCR参戦3年目となり、2022年はタイからカンボジア、2023年はタイからラオスというルートで開催されたが、2024年はタイ スラタニを出発後、タイ カンチャナブリでゴール(総距離約2000km)をするという、タイ国内で完結するコースが予定されている。