試乗記

三菱自動車の新型「トライトン」試乗 新世代ピックアップトラックの乗り心地の良さに終始感心

新型「トライトン」にオンロード&オフロード試乗

SUV並みの快適性とハンドリング性能

 かつては日本でも働くクルマとして支持を得て、のちにファッションアイテム的な人気者にもなったことのあるピックアップトラック。しかしそれは20世紀の話で、21世紀になると燃費を気にするエコカーブームがやってきて、大排気量で重く大きく燃費のわるいピックアップトラックには強い逆風が吹き、絶滅状態となってしまった。

 しかし世界的に見てみると、40年以上にわたり最も売れてるクルマがピックアップトラックとなっている北米をはじめ、アセアンや中東、アフリカなどの国々での需要も増えているという。そして日本でも、空前のアウトドアブームを追い風に2017年にトヨタ「ハイラックス」が復活してからというもの、ジープ「グラディエーター」など輸入ブランドの参入もあり、じわじわと人気が高まりつつある。

 そんな日本のピックアップトラック市場にドドーンと再参入を果たしたのが、1978年に初代が誕生し、累計販売台数が560万台以上となっている三菱自動車「トライトン」。現在も世界150か国で年間20万台以上が販売されているというが、とくに南米・チリでは7年連続でこのトライトンが最も売れているクルマだという。

 その人気を支えてきたのが、やはりダカールラリーを筆頭とする過酷なモータースポーツで鍛えた4WD性能をはじめ、三菱自動車として譲れないタフな走破性、高い堅牢性、耐久性とメンテナンスのしやすさ。道なき道を進んでいく姿は、もっともトライトンのイメージに合う。ただし、新型トライトンはそうした性能をさらに高めつつ、SUV並みの快適性とハンドリング性能を磨き上げ、新世代のピックアップトラックに仕上げてきたというのが大きなトピックだ。そのため今回の試乗では、本当にSUVと同じような感覚で乗れるのか、郊外の一般道でのインプレッションや使い勝手をメインにお伝えしたいと思う。

 BEAST MODE(勇猛果敢)がコンセプトのエクステリアデザインは、遠くからでも堂々たる存在感があり、どんな道でもかかってこいと言わんばかりの自信に満ち溢れる迫力に惹きつけられた。どこから見ても商用車っぽさはなく、「愛車」と胸を張れる乗用車としての上質感がしっかりあると感じる。サイドから見ても、カーゴベッドの部分までがキャビンと遜色のない質感をキープしており、上級グレードの「GSR」はMITSUBISHIのロゴが刻印されたシルバープレートなどの装飾入り。それが省かれるベースグレードの「GLS」でも、シンプルなところがかえってワイルドさを強調していてカッコいい。グッドデザインアワード2023を受賞しているのも納得だ。

新型トライトンは標準グレードの「GLS」(498万800円)、上級グレードの「GSR」(540万1000円)の2モデルをラインアップ。GSRのボディサイズは5360×1930×1815mm(全長×全幅×全高)で、ホイールベースは3130mmと大柄な体躯となるが、最小回転半径は6.2mと取り回しのよさも考えて設計されている
GSRはブラックの18インチアルミホイール(GLSはグレーメタリックカラー)を標準装備し、タイヤサイズは265/60R18。新型トライトンのアプローチアングルは29度、ランプブレークアングルは23.4度、ディパーチャーアングルは22.8度

 Aピラー内側に大きなグリップがあり、ドア開口部下にも幅広のステップがしっかりと備わるため、運転席に乗り込むのは想像したよりもスマートに決まる。インテリアは直線基調のインパネからドアライナー、シートやステアリングにお揃いのステッチが施され、仕立てのよさを感じさせながら、スイッチ類を整然と集約させたセンターパネルなど機能美を感じさせる部分もあり、これから冒険へと出かけるためのコクピットといった雰囲気だ。

 シートは大きめサイズでたっぷりとしたクッションがあり、座り心地のよさを感じる。トラックというとハンドルを抱え込むような姿勢になるかと想像したが、乗用車として違和感はなく、視界がスッキリと広がっている。ボンネットの先端まで確認できるため、全長5.3mオーバー、全幅1.9mオーバーという大きさはあまり意識せずに走り出すことができた。ちなみに全高はGSRで1.8m超えと、Lクラスミニバン並みになる。

プロフェッショナルユースを意識し、乗員を保護するためにソフトパットを要所に採用し、実用性の高さを確保。モニターやメーター、コントラストをつけたスイッチ類は視認性にこだわり、セレクター、ダイヤル、スイッチ類は手袋をしたままでも確実に操作ができるよう程よい節度感を実現した
4WDシステムは走行中にダイヤル式のセレクターで簡単に4WDモードを変更することができ、前40%、後60%に駆動力を配分し、トラクション性能とコーナリング性能を両立するトルク感応式LSDを備えた三菱自動車独自のスーパーセレクト4WD-IIを採用。ドライブモードはすべての4WDモードに設定されている「NORMAL」モードをはじめ、2Hには経済性を重視した「ECO」、4Hに「GRAVEL(未舗装路)」と「SNOW(氷雪路)」、4HLcにトラクション性能を引き出す「MUD(泥濘)」と「SAND(砂地)」、4LLcには「ROCK(岩場)」モードが設定される
電子機器の充電用としてインストルメントパネルとセンターコンソールにタイプAとタイプCのUSBを用意。インストルメントパネルセンター下部にはスマートフォンのワイヤレスチャージャーも装備
フロントシートは腰まわりをしっかりサポートし、肩付近は動きやすく開放的な形状としてドライバーの疲労を軽減。また、アップライトな乗車姿勢とすることで室内からの視認性を向上させつつ、フロントピラーを立ててドア開口部を広げるとともにサイドステップの幅を広げるなど、乗降性も向上させている

 スタートボタンで始動する新型の2.4リッターディーゼルターボエンジンは、さすがにオンロード系のSUVディーゼルモデルと比べると、音も振動も大きめに室内に伝わってくるものの、トラックというイメージからすればかなり静かで穏やか。アイドリング中はもちろん、走行中も後席との会話が邪魔されることはない。アクセルペダルを軽く踏み込めば、約2.1tの重さと巨体とは思えないスムーズさで走り出し、アイシン製のスポーツモード付き6速ATで途切れのないパワフルな加速フィールが味わえる。

新開発の直列4気筒DOHC 2.4リッタークリーンディーゼルターボ「4N16」型エンジン。回転数と負荷に応じて2つのタービンを協調させる2ステージターボシステムを採用しており、最高出力は150kW(204PS)/3500rpm、最大トルクは470Nm(47.9kgfm)/1500-2750rpm。WLTCモード燃費は11.3km/L

 試乗したのはタイトなカーブが続く郊外路だったが、そこでまず感心したのはステアリングフィールだ。今回、油圧からラック&ピニオンに変更されて新設計となったパワーステアリングは、低速では軽く扱いやすさを重視し、速度が上がれば相応の落ち着きと手応えが感じられるようになっているという。カーブを抜けたり路地でUターンするような場面でも、昔のようにヨイショと腕力を使うようなことは一切なく、スイスイと回せるのでモタモタしない。さらに、この巨体では車庫入れやUターンで何度も切り返す必要があるのではないかと思っていたが、三菱自動車独自の4WD技術は取り回しの良さも叶えているため、1回ではとても無理かと思ったUターンがクリアできて驚いたほどだ。

 その4WD技術というのが、パジェロで培った「スーパーセレクト4WD-II」。2H(2WD/後輪駆動)、4H(フルタイム4WD)、4HLc(直結4WD/センターデフロック)、4LLc(ローギヤ直結4WD/センターデフロック)をダイヤルで切り替えるのだが、とくに4Hの際にセンターデフをフリーにできるのがオリジナル。それによってタイトコーナーで急にブレーキがかかるような現象が起こることがなく、必要以上に大回りをしなくてもよいため、市街地での取り回しに苦労しないという利点がある。

 また、ランサーエボリューションで培ったAYC(アクティブヨーコントロール)も継承しており、思い描いた通りのラインでカーブを抜けていけるのが爽快。これはカーブや滑りやすい路面などで、実際に発生しているヨーと理想的なヨーが乖離しているとクルマが判断し、ブレーキの制御で理想のヨーに近づけて意のままのハンドリングを実現するという技術だ。今回はぬかるんで滑りやすくなっているオフロードも走行したが、まったく不安を感じなかった。これなら雨の日や雪道などでも、安心して走行できるのではないだろうか。

 このほか、急坂でヒルディセントコントロールを試した際には、ブレーキペダルから足を離してもゆっくりと下っていくことができる安心感も体感。重量のあるクルマは自分のペダル操作だけだとスピードが出過ぎたり、挙動が不安定になったりする心配があるが、ショッピングモールの立体駐車場の坂などでも有効とのことで、日常使いでも頼もしい一面を感じることができた。

乗り心地の良さの要はラダーフレームの進化

 そして、一般道で終始感心していたのは、乗り心地の良さ。新型トライトンは新開発のラダーフレームをはじめ、サスペンション、エンジンなど完全刷新しているが、とくにラダーフレームの進化がすべての要になっているという。取り付けポイントの剛性を上げたサスペンションも新開発。フロントのダブルウィッシュボーンはストロークを拡大して接地性を上げ、リアのリーフスプリング式サスペンションは先代まで5枚あったリーフを3枚にし、その形状には耐久性と快適性を両立するノウハウを詰め込んだ。

 走り出した直後から、空荷のカーゴベッドが跳ねるようなヒョコヒョコとする挙動がまったくないことに驚き、いつしかカーゴベッドの存在を忘れるくらいの快適さを感じていた。乗り心地としてはピックアップトラックというよりSUVの域を達成している。後席の背もたれが直立ではなくリクライニングしており、足下のスペースにもゆとりがあるため、ファミリーで使っても文句は出ないのではないだろうか。

 室内の収納ポケットやドリンクホルダー、USBが使いやすいのも従来のピックアップトラックにはなかったところ。とくにドリンクホルダーは、600mLのペットボトルを置いて運転してみたが、ハンドル操作を邪魔しない位置なのが嬉しい。オフロードなどで忙しくハンドルを回すときに、腕に引っかかる位置にドリンクホルダーが設置されているSUVもあるので、さすが三菱自動車は分かってるなと思った。

 600mLペットボトルが4本収納可能な大容量のフロアコンソールボックスがあったり、室内全体に素早くエアコンの風を送るリアサーキュレーターがあったり、大型のサングラスホルダーがあるところなど、冒険に出かけるための装備もぬかりない。

 そして肝心のカーゴベッドの使い勝手はもちろん、さまざまな工夫が凝らされていた。フロアが低めで、リアバンパーコーナーは乗り込む際に足をかけやすい面積を確保。開いたテールゲートは耐荷重が200kgなので、大人2~3人でベンチがわりにできるのが楽しい。GSRにはカップ置き場も作られているから、景色のいいところでコーヒーでも飲みたくなる。

 また、カーゴベッドをカスタマイズして自分らしく使うのがピックアップトラックの醍醐味でもあるが、そのためのカーゴアイテムのカタログは眺めているだけでもワクワクしてくる。カバーやキャノピーがメインだが、電動トノカバーまであってビックリ。車内Wi-Fiなどコネクテッド機能も備え、使い方までもが新世代になっているのが新型トライトンだ。

カーゴベッドは大型化することでベッドライナー装着状態でもユーロパレット積載にも対応したほか、従来モデルに比べて荷台高を45mm低い820mmとした

 アメリカでは、フットボール観戦の駐車場に停めたピックアップトラックのカーゴベッドにテーブルを広げ、BBQをしながら試合開始までを楽しむ人が多いと聞く。この新型トライトンの登場によって、日本でももっと自由な発想でピックアップトラックを使いこなす人が出てくるのではないかと、期待せずにはいられない出来栄えだった。

まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラスなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSDとスズキ・ジムニー。

Photo:高橋 学