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鈴鹿8耐参戦の0号車「チームスズキCNチャレンジ」 CO2排出量を約50%削減する熱処理廃止鉄製ブレーキディスク装着
2024年7月22日 17:13
鈴鹿8耐のチームスズキCNチャレンジ
鈴鹿サーキットで7月19日~21日に開催された鈴鹿8耐「2024 FIM世界耐久選手権"コカ·コーラ" 鈴鹿8時間耐久ロードレース 第45回大会」。スズキは同大会の実験的クラスとして設定される「エクスペリメンタルクラス」に、0号車「チームスズキCNチャレンジ」で参戦。決勝レースで総合8位完走を果たした。
参戦車両は、GSX-R1000R ヨシムラSERT MOTUL EWC仕様をベースとしたCN(カーボンニュートラル)仕様で、協力企業により、サステナブル燃料をはじめ、タイヤやオイルなどにサステナブルアイテムを採用した。
決勝日の7月21日、イベント広場のスズキブースでは、モータージャーナリストのREI氏による司会のもと、サステナブルアイテムを提供するモチュールR&D R&Dサイエンティスト 末光正典氏、ブリヂストン 次世代配合開発部門 次世代配合開発第2部 白石文洋氏、サンスター技研 MC事業部 技術営業部 設計開発グループ 品川佳範氏、JHI 営業部・部長 山本晃弘氏、トラス 代表取締役 新田正直氏、エリーパワー 代表取締役社長 河上清源氏が登壇するトークショーが展開された。
その中で興味深かったのが、ブレーキディスクの熱処理工程を廃止することで製造時のCO2排出量を約50%削減できることが、サンスター技研の品川氏から報告されたこと。0号車 チームスズキCNチャレンジの参戦マシンには、サンスター技研が提供する熱処理廃止鉄製ブレーキディスクと専用ブレーキパッドが採用された。
一般的にブレーキディスクというのは、熱処理をすることによって固く、そして強くしているというが、サンスター技研の品川氏からは「今回、熱処理をやめるといったドラスティックな取り組みをする中において、材料も1から見直し、製造プロセスを見直し、あとはわれわれの協力メーカーさんを巻き込みながら、ブレーキパッドも一緒に開発したところが取り組みとして大きなチャレンジだったかなと思っています。今回、熱処理を廃止するといったところの取り組みが、なんとわれわれのディスク製造プロセスにおける50%が熱処理であるということで、半分のCO2を減らせるというのが1つの成果となりました」と話した。
そのブレーキ性能について、品川氏は「狙った特性で言うと、最初は台上試験ではまったく違う特性が出ている中で、今回クラックを抑制するということで採用しているゴルフボールのディンプルのような形状の穴の大きさであるとか、配置などでも味付けを変え、あとはパッドの味付けというところからも従来と変わらないような物をまずやっていこうということで、それは達成できたと思いますし、ライダーからも“意外と普通だね”と言っていただけたのは最高の褒め言葉だったかな」との感想を話した。
トークショーではそのほかにも、モチュールからはオーガニック原料をベースオイルに使用したオイルを提供していること。ブリヂストンからは使用済みタイヤから得られる分解油から生成したカーボンブラックを採用する「再生資源・再生可能資源比率を向上したタイヤ」を提供していること。JHIからは航空機製造メーカーより調達した使用期限切れ3K平織りクロスプリプレグの乾留品を使用することで、新品と比較して10分の1のCO2排出量低減と、アップサイクルに貢献するリサイクルカーボンを使用したパーツを提供していること。トラスからはカーボン製品と比較して-85%のCO2削減が可能なビーコンプの天然亜麻製品を使用したウイングレット・フロントフェンダー/リアフェンダーを提供していること。エリーパワーからは希少資源を使用しないバッテリといったハード面のみならず、ピット裏のチーム控室で使用する電力など、チーム運営にかかる電力マネージメントで、CO2削減に貢献していることが紹介された。
トークショーを進行した、モータージャーナリストのREI氏からは、今回のチャレンジが継続的な取り組みとなることや参戦クラスの盛り上がりへの期待感が語られ、トークショーが締めくくられた。