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「アジアクロスカントリーラリー2024」が間もなく開幕! チーム三菱ラリーアートから出場の「トライトン」とモータースポーツの歴史を振り返る

2024年8月11日~17日(現地時間) 開催

AXCR2024の参戦仕様にカラーリングされた三菱トライトン

 三菱自動車工業が技術支援するチーム三菱ラリーアートは、8月11日~17日(現地時間)にタイで開催される「アジアクロスカントリーラリー(AXCR)2024」に参戦します。参戦マシンとなる「トライトン」は2023年にフルモデルチェンジし、2024年2月より日本にも導入されたタイで生産される三菱自動車の世界戦略車です。このトライトンは初代モデルの一部グレードが一時日本で販売されただけでしたので、日本メーカーのクルマでありながらわが国ではあまりなじみがありませんでした。そこで今回実現した最新モデルの日本導入とAXCR参戦を機に、歴代トライトンとモータースポーツの歴史を簡単に振り返ってみます。

 トライトンは国によっては「L200」と呼ばれる1tクラスのピックアップトラックで、L200は1978年にデビューします。日本名は「フォルテ」。その後1980~1990年代には「ストラーダ」という名称で販売されていました。当時はパジェロなどクロカン4WDが大ブームの時代でしたので、そんなカテゴリーの1台として覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。2005年に登場するモデルから現在と同じトライトンというネーミングに変更されます。今回AXCRに参戦するモデルはトライトンとしては3代目、L200としては6代目にあたります。

三菱L200(2013年ジュネーブモーターショー)

 トライトンが生産されるタイでピックアップトラックは商用トラックとしてはもちろん、若者にも人気のスポーティモデルとしての側面もあり、実際に首都バンコクに限らずタイの各地でドレスアップしたトライトンが見られます。タイではトライトンに限らずさまざまなメーカーのピックアップトラックが走っていますが、中でも初代トライトンは商用車感が極めて薄く遊び心たっぷりの柔らかいデザインが印象的で、タイのどの街へ行っても見かけるほどで、その人気が伺えたものです。柔らかさを感じる特徴的なデザインといえば同社の「i」「i-MiEV」もこのころのモデルでした。

ボンネットのダクトやオーバーフェンダー、アルミホイールにフォグランプでラリーカーのように仕立てられたトライトン。こういうチューニングやドレスアップをしたトライトンをタイの街ではよく見かけたものです

 話をモータースポーツに移します。トライトンが登場した2005年は、三菱自動車がワークスでのWRC活動休止を表明した年です。ダカールラリーへのワークス参戦はその後も継続されたものの、こちらも2009年で幕を閉じてしまいます。もちろんモータースポーツは自動車メーカーの全てではありませんが、これまでモータースポーツへのチャレンジを続けてきた三菱自動車の当時の状況がうかがえるようです。そんな時代に生まれ、1tトラックという商用車でありながら乗用車的デザインをもつトライトンは約150か国に出荷される、まさに三菱自動車のグローバル戦略における中核モデルとしての位置付けであったことは想像に難くありません。

 WRCやダカールラリーなどの世界的な大会からワークスマシンが撤退した三菱自動車でしたが、もちろん三菱車で活動を続けるチームやプライベーターは数多くいました。ランサーエボリューションXなどもそんな時代の1台ですが、東南アジアにおいてはトライトンもその一翼を担う1台でした。今回、新型トライトンで参戦するAXCRにも多くのトライトンがチャレンジしてきましたので、AXCRを戦ってきた歴代モデルを写真で紹介します。

初代トライトン(2005~2014)

初代トライトン(AXCR2009)

 L200としては4代目となるこのモデルで初めてトライトンという名称で発売されます。写真は2009年のAXCRですが、登場時よりモータースポーツ車両としての人気が高く、タイの街中でもAXCRの参戦車両でも非常に数多くのトライトンを見かけたものです。AXCRにおいてライバルはいすゞ「D-MAX」とトヨタ「ハイラックスVigo」。いずれも日本未導入モデルですが、タイでは日本人の知らない日本メーカーのマシン同士が競い合っていたのです。

初代トライトンはタイの街中でもラリーの会場でもとてもポピュラーなモデルでした(AXCR2010)

2代目トライトン 前期(2014~2018)

2代目トライトンの前期型は街中では見かけるものの、AXCRでの参戦台数はわずか(AXCR2015)

 トライトンとなって最初のフルモデルチェンジは2014年。初代同様の柔らかいフォルムにシャープさも加わり個性は少々薄れた半面、デザインの洗練度が増した2代目。AXCRでは日本のTWO&FOURモータースポーツが導入するものの、残念ながら他チームからの参戦車両はありませんでした。ちなみに2013~2015年は同チームから「アウトランダーPHEV」が参戦しており、岡崎の開発本部から多数の技術者が帯同するなど電動車のオフロード開発テスト的な意味合いの参戦となりました。過酷なラリーレイドをテストの舞台として選ぶところに土系モータースポーツに長年チャレンジしてきた三菱自動車らしさを感じます。

AXCR2015に参戦するアウトランダーPHEV。2013年からの3年間、三菱自動車はAXCRを電動車両の開発の場として参戦します

2代目トライトン 後期(2018~2023)

ダイナミックシールドデザインとなり前期とはかなり違う雰囲気の2代目トライトン。この年、増岡浩氏率いるチーム三菱ラリーアートは初出場、初優勝を遂げます(AXCR2022)

 今に続く三菱自動車のデザインアイデンティティー「ダイナミックシールド」デザインを採用した、外観はまるでフルモデルチェンジのような変わりっぷりの2代目後期型。2022年にはチーム三菱ラリーアートが参戦し初出場、初優勝を遂げます。世界を舞台に戦っていたかつてのラリーアートとは体制は異なるものの、モータースポーツの世界にこの名前が復活したことは多くの三菱ファンに朗報と言えるでしょう。

ベトナムのチームは2019年から後期型で参戦(AXCR2019)
ボディカラーでかなり印象の違う2台の後期型(AXCR2022)

3代目トライトン(2023~現在)

AXCR2023年に登場した3代目トライトンは湧き出した溶岩のエネルギーをモチーフにしたカラーリング

 そして最新鋭のトライトンのデビューは2023年。日本導入も果たしたこの最新モデルは「Power for Adventure」という商品コンセプトを体現した、たくましさを感じるデザインへと変貌します。押し出し感の強い顔つきに圧倒されますが、フォルム全体を見回すと直線基調のデザインは力感とともにシャープさも併せ持っています。2022年にAXCRで勝利したチーム三菱ラリーアートはこの出来たてホヤホヤの最新鋭マシンで臨みましたが、連勝はかないませんでした。

 そして、開幕の迫ったAXCR2024。総監督 増岡浩氏率いるチーム三菱ラリーアートはランエボで長年世界を戦ってきた田口勝彦選手が2023年に続きトライトンのステアリングを握り、コ・ドライバーも引き続き保井隆宏選手が務めます。保井選手は全日本選手権をはじめ国内外のラリーの経験はもとよりAXCRの経験も十分な選手です。

 そして新加入のドライバーとして小出一登選手が初参戦。小出選手は社内テストドライバーを務める三菱自動車の社員。小出選手とともに戦うコ・ドライバーは千葉栄二選手。千葉選手はかつてこのAXCRで故 篠塚建次郎選手のコ・ドライバーを務めた経験もあるベテランです。この2組とタイ人チーム2組の4台体制で2024年のAXCRに臨みます。

終始にこやかなチーム三菱ラリーアート 総監督の増岡浩氏。時折見せる厳しい表情に総合優勝奪還への意気込みも見えます

 ちなみにチーム三菱ラリーアートは、2023年のトライトンと同じカラーリングの2台のデリカD:5をサポートカーとして導入しました。タイで未発売のデリカD:5が過酷なオフロードを走る姿はとても魅力的でした。2024年のトライトンは昨年同様、真っ赤なカラーリングながらグラフィックに大きな変更を施しています。ぜひ新カラーリングのデリカD:5がタイの大地を走る姿も見てみたいものです。

2023年はタイ未発売のデリカD:5がタイの大地でトライトンをサポートしていました

 AXCR2024のフィニッシュは8月17日。ゴールは映画「戦場にかける橋」の舞台でタイの観光名所として知られるカンチャナブリーの街。さて、4台のマシンはトライトンの歴史にどんなページを刻んでくれるのか、今から楽しみです。

初代トライトン(2005~2014)
2代目トライトン 前期(2014~2018)
2代目トライトン 後期(2018~2023)
3代目トライトン(2023~現在)
アジアクロスカントリーラリー2024は8月11日~17日(現地時間)にタイで開催。スタートはもうすぐです!