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ホンダアクセス「Modulo30周年記念トークショー」、土屋圭市氏らがシビック用テールゲートスポイラー開発秘話を語る

2024年9月29日 開催

Moduloブランド誕生30周年を記念したイベントが開催された

2008年に開発アドバイザーとして土屋圭市氏が参画

 ホンダアクセスは9月29日、東京港区にあるホンダウエルカムプラザ青山にて、「Modulo 30th Anniversary スペシャルトークショー」を開催した。会場は入場無料で100人を超す大勢のファンが訪れた。

 MCを務めたのは、モータースポーツアナウンサーのピエール北川氏とカーライフジャーナリストのまるも亜希子氏で、ゲストにModulo開発アドバイザーである土屋圭市氏、ホンダアクセスOB 元Modulo開発統括の福田正剛氏、ホンダアクセス CIVICテールゲートスポイラー開発者の山崎純平氏の3名を迎えてトークショーを実施。

モータースポーツアナウンサーのピエール北川氏(左)と、カーライフジャーナリストのまるも亜希子氏(右)がMCを務めた

 Moduloブランドは、1994年に純正ホイールブランドとして誕生。1995年の車両法の規制緩和によって、チューニングやドレスアップなど、カスタマイズパーツの需要が急増し、Moduloもホイールだけでなく、エアロパーツやサスペンションとカテゴリーを拡大させ、2013年にはコンプリートカー「Modulo X」を開発するにいたった。

 2008年ごろからホンダアクセスと関わりをもち、Moduloの開発に携わり始めた当時を振り返った土屋氏は、「TRDとかNISMOみたいに存在感のあるものを作りたいなっていうのが始まりですよ。ホンダ研究所が作ったサーキット専用のNSX TYPE Rに対して、しなやかで乗り心地のいい足で同じタイムを出すのを目標にやってきた。そこがホンダアクセスとの共通点です。また、当時は各メーカーの開発者はクセが強くて、乗った瞬間にどの開発者が関わっているか分かるぐらいだった。開発者の顔が見えた」とコメント。

2008年ごろからModulo開発アドバイザーを務めている土屋圭市氏
ホンダアクセスOB 元Modulo開発統括 福田正剛氏

 また福田氏は、「土屋さんの1年後くらいに当時の上司吉田さんに声をかけられて入ったのですが、実は当時Moduloって知らなくて、土屋さんもいて、なんかヤバい部署に来ちゃったなって思いました」と会場の笑いを誘った。

 いたずらにダウンフォースを高めるのではなく、操る楽しさをしっかりと残した前後バランスにこだわったというS2000やNSXを完成させたのが1999年。S2000はオープン状態とクローズ状態で差が大きなるようなエアロではいけないと、フロントアンダースポイラーとトランクスポイラーを開発したという。

S3000 Modulo仕様(1999年)
NSX Modulo仕様(1999年)

 2008年に発売した「Sports Modulo シビックTYPE R」は、土屋氏が初めて開発に関わった車両。土屋氏は、「当時このシビックでスーパー耐久に参戦することになったんですが、まわりはスリックタイヤを履いたレーシングカーなのに、しなやかな足と市販タイヤで戦えっていうんですよ。もうめちゃくちゃでしょ? でもね、十勝24時間レースでちゃんと勝ったんです。ホンダ研究所の作ったレーシングカーと同等のタイムを、しなやかな足で出すことに成功したのがこのシビックなんですよ」と振り返った。

土屋氏が最初に開発に携わった「Sports Modulo シビックTYPE R」。今でもこのシビックを大事に乗っているユーザーから、「足まわりを出して欲しい」などのリクエストがあるという

 ホンダアクセスの開発姿勢に対して土屋氏は、「数字に頼らない人たちが多いなっていうのが僕の一発目の感じ方ですね。よく机上の空論で完成みたいにいう人もいますが、机の上で全部数字が出ていてすごくいいクルマですっていったらF1は全部優勝しちゃいますよ。世界中の頭のいいスタッフや優れたデザイナーが集まっても、よ~いドンしてみたら、1位と15位がいるわけで、そのくらい走ってみないと分からない世界だよね。で、ホンダアクセスの開発陣はしつこいぐらいよく走る。少しは休憩入れようよっていいたくなるくらいね」とコメント。

 そして2013年に前後バランスを極め、街乗り速度でも体感できる空力の思想となる「実効空力」を携えたコンプリートカー「Modulo X」シリーズを発売。当時の開発を振り返った福田氏は、「ホンダアクセスでは現場体験を大事にしていて、ドイツのアウトバーンなんかにも実際に行って走らせてみる。開発陣はとにかく挑戦して、仮に失敗しても次は絶対に失敗しないぞと考える」と開発陣の強みを説明。

 また土屋氏は、「普段のステアリングを切ったときの、なんかさっきと違うっていうところを目指してるからおもしろいんだよね。ワンランク上のタイヤを履いてるのかなっていう感覚を作り出すのがこの人たち」とホンダアクセスの開発陣に対する感想を語った。

実効空力の理論と狙い

シビック用テールゲートスポイラーウイングタイプの開発

ホンダアクセスのテールゲートスポイラーを装着した新型シビックRS

 シビック用テールゲートスポイラーの開発責任者の山崎氏について福田氏は、「やはり開発者はクルマの挙動などを感じ取る能力を求められます。実はこのテールゲートスポイラーの開発中に、鷹栖のテストコースで走りの動画収録をすることになり、120km/hを上限に設定している荒れたうねりのあるコースを、土屋さんが150km/hとか160km/hで走るわけです。その隣の平地を追いかけて撮影するクルマの運転を山崎くんに任せたのですが……できない。何とか本番前日に一晩中練習して、ていねいなアクセルワークが身について、無事に撮影できたんです。ホンダアクセスはクルマを鍛えるだけでなく、人も鍛えています」と紹介。

【ホンダアクセス】シビック用テールゲートスポイラー(ウイングタイプ)開発中の映像(2分29秒)

 MCのピエール北川氏から、「シビック用テールゲートスポイラーは、先に発売したシビック TYPE R用のテールゲートスポイラーをベースに制作したので割とイージーだったのでは?」と問われた山崎氏は、「TYPE Rとはバンパーの形状(空力)やエンジンパワーも違うし、前後バランスも異なるため、シビック用となると完全に1から制作する必要がありました。でもTYPE Rのウイングを超えるものを作った」と回答。

ホンダアクセス CIVICテールゲートスポイラー開発者の山崎純平氏

 ウイング下面には、TYPE R用と同じくのこぎりの歯のようなギザギザ「シェブロン」を配置しているが、開発時には上面に配置してみたり、2段重ねにしてみたりと新たな試みも行なったという。また、両端にある3つに特徴があり、翌端板から発生する乱気流を整える効果があり、特許を申請しているという。

 また、シビック用テールゲートスポイラーは、マイナーチェンジ前のシビックにも適合するようにしているので、マイチェン前オーナーも愛車のアップデートが実現できる。

シビック用に何度も形状を作り直して専用品として仕上げている
航空機のエンジンが採用しているシェブロン
両端にある3つのシェブロンは特許を申請している

 ホンダアクセスでは、このシェブロンの効果をいろいろなクルマでも試していて、イベントなどでは、N-BOXの天井に磁石でギザギザの突起を貼り付け、誰でも体感できる試乗会を実施している。実際に車両の屋根に加速度センサーを装着して実験してみたところ、数値でも車両のブレを抑える効果が証明されている。

【ホンダアクセス】“Modulo”実効空力”を生み出すシェブロンの効果(44秒)

 イベントの最後にはジャンケン大会が行なわれ、サイン入り手帳や土屋氏が実際に使っていたHONDA Dogのホイールセンターキャップなどが渡されたほか、会場には過去に手掛けた車両から現行モデルまで、全6台のほかホイールやクレイモデルなども展示されている(展示は9月30日まででS2000とNSXは除く)。

土屋圭市氏がサイン入り手帳を用意
イベントの最後には景品が用意され、ジャンケン大会が行なわれた
イベント最後には来場者と一緒に記念撮影。14時からのイベントだったが、10時前から並んでいるファンもいたという
Sports Modulo シビックTYPE R(2008年)
S660 Modulo X(2020年)
ヴェゼル e:HEV純正アクセサリー装着車「Sports Style」(2024年現行モデル)