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GM、キャデラック初の新型バッテリEV「リリック」日本初公開 新型バッテリEV「オプティック」も参考展示

2025年3月7日 開催
1100万円
キャデラックの新型「リリック」発表会の最後に実施された登壇者のフォトセッション。左からゼネラルモーターズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 若松格氏、GMアジア・パシフィック プレジデント&マネージングディレクター ヘクター・ヴィラレアル氏、グローバル・キャデラック バイス・プレジデント ジョン・ロス氏

 ゼネラルモーターズ・ジャパンは3月7日、キャデラックブランド初の新型BEV(バッテリ電気自動車)「リリック」(LYRIQ)を日本初公開した。3月8日から販売を開始するリリックは全車右ハンドル仕様で価格は1100万円。デリバリー開始は5月以降を予定している。

“電動ラグジュアリーSUV”と位置付けられるリリックは、出力を選択できるドライビングモーター、供給を統合したパワーエレクトロニクスとバッテリセルを組み合わせる独自のモジュラーシステムなどで構成される、まったく新しい「アルティウム」と呼ばれるバッテリ・プラットフォームを採用。

 走行用バッテリを前後タイヤ間のフロア下に収めた低重心構造によって走行時の安定性を高め、ボディ剛性を強化。前後重量配分も50:50を実現して、車体の前後に備える計2個のドライビングモーターはシステムトータルで最高出力384kW(約522PS)、最大トルク610Nmを発生する。バッテリ容量は95.7kWhでWLTPモードの一充電航続距離は510km。

新型BEV(バッテリ電気自動車)「リリック」。ボディカラーは「ステラーブラック メタリック」
ボディサイズは4995×1985×1640mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3085mm、車両重量は2650kg

 外観では、キャデラックモデルを象徴する縦長のLEDヘッドライトと水平方向に光が流れる「スワイピングLEDウインカー」などで構成するヘリテージを強調したフロントマスクの中央に、クリアタイプの「キャデラッククレスト」を装着して新世代のBEVであることをアピール。リアでは1967年式の「エルドラド」をモチーフとしたテールランプを採用して120年以上に渡るキャデラックブランドの歴史を表現している。

リリックのフロントマスク
フロントグリルを模した「ブラッククリスタルシールド」の中央にクリアタイプの「キャデラッククレスト」を装着
9個のLEDユニットを組み合わせた「スリムラインLED バーティカル ヘッドランプ」
水平方向に光が流れる「スワイピングLEDウインカー」
1967年式の「エルドラド」をモチーフとしたテールランプなどを採用するリアビュー
特徴ある形状のリアコンビネーションランプを備える
リアのキャデラッククレストはリアハッチオープナーとしての機能も備える
600Nm以上の最大トルクを持ち、電動4WDシステムであることを示す「トルクバッジ」をリアハッチ右側に配置
コンチネンタル製の「Premium Contact 6」を採用。タイヤサイズは前後275/45R21 107V
助手席側のフロントフェンダー後方に充電用リッドを配置。急速充電はチャデモ方式に対応する
フラッシュサーフェスデザインのカラードドアハンドルは向かって車両前方側がせり出すスタイル
ボンネットを開けた下にはコンバーターや補機類用バッテリなどを搭載

 インテリアでは、ドライバー前方からセンターコンソールまでシームレスに連続する湾曲型の33インチアドバンスドカラーLEDディスプレイを採用。宙に浮いているかのようなデザインが与えられたセンターコンソールにはローレット加工を施したロータリーコントローラーを設置して操作性と上質感を高め、ドアパネルには業界初というレーザーエッチング加工のバックライトによってきらめくような光の演出を生み出す「KOMOREBI(こもれび)」を設定。キャビン全体に温かみのある空間演出を行なう。

 動物由来ではないサスティナブル素材の「インタラックス」を表皮に使う標準シートでは、クッションに高密度フォームを採用してロングドライブでの快適性を高めたほか、フロントシートにはヒーター&ベンチレーション、リアシートにはシートヒーターを標準装備。さらに乗員のエアコン操作に応じて、必要な場合はバッテリシステムで発生する余剰な熱を車内に送り込んで活用する「ヒートポンプシステム」を備え、寒さが厳しい冬のシーズンでも効率性を維持できる設計としている。

 また、アルティウムプラットフォームの採用でボディ剛性が強化されたリリックは、ボディの各所に吸音材や制振材を設定することで車内の優れた静粛性も実現。フロントと再度の二重ガラス採用に加え、リアガラスは5mm厚の強化ガラスとしている。これに加え、車両の四隅に配置した3軸加速度センサーでタイヤで発生する振動を検出し、キャビン内に設置したマイクで検知したノイズの情報と合わせて不快な侵入音を打ち消す次世代のアクティブノイズキャンセレーションも採用している。

33インチアドバンスドカラーLEDディスプレイを採用するリリックのインパネ
デジタルルームミラーの「リアカメラミラー」を採用
アクセルペダルはオルガン式となる
フローティングデザインのセンターコンソールにローレット加工を施したロータリーコントローラーを設置
バックライトによってきらめくような光の演出を生み出す「KOMOREBI(こもれび)」をドアパネルに設定する
「パノラミック パワー サンルーフ」(電動サンシェード付)は25万円高のオプション装備
“動物由来ではない”アニマルフリーの合成皮革「インタラックス」を採用する標準シート。インテリアカラーは「スカイクールグレー サントリーニブルーアクセント」
ラゲッジスペース容量は通常時が793L
ラゲッジスペース側面にリアシートの背もたれを前倒しする電磁スイッチを設定。リッド付きのシガーソケットも備える
60:40分割可倒式のリアシートを前に倒すと最大1722Lのラゲッジスペース容量が出現する

2026年発売予定の新型バッテリEV「オプティック」も参考展示

グローバル・キャデラック バイス・プレジデント ジョン・ロス氏

 東京都港区の東京ポートシティ竹芝で開催されたリリックの発表会では、グローバル・キャデラック バイス・プレジデント ジョン・ロス氏、GMアジア・パシフィック プレジデント&マネージングディレクター ヘクター・ヴィラレアル氏、ゼネラルモーターズ・ジャパン 代表取締役社長 若松格氏の3人が登壇。新発売されるリリックの製品紹介に加え、日本マーケットにおけるBEV導入戦略などについても解説された。

 最初にプレゼンテーションを行なったロス氏は、キャデラックはイノベーションありきの会社で、積み重ねてきた長い歴史の中で自動車業界におけるラグジュアリーの基準を塗り替えてきた。自分たちはそんな伝統を守りながら、野心的な目標を掲げ、大胆でエキサイティング、前向きで洗練されたブランドにしたいと考えて日々仕事に取り組んでいるとキャデラックブランドについて解説。

 2023年から米国で販売がスタートしたリリックは既存のラグジュアリーBEVのライバルを超える人気を獲得し、2024年に米国BEV売り上げでNo.1になったとアピール。すでに売り上げ全体の27%がBEVから得られていると説明し、スウェーデン、フランス、ドイツ、オーストラリアと販売する国を拡大して、3月8日からは日本でもリリックの販売が開始される。このほかにもキャデラックでは「オプティック」「エスカレード IQ」「ヴィスティック」といったBEVの新型車をラインアップして、ラグジュアリーSUVセグメントのすべてにBEVを用意しているとした。

 また、「真のグローバルなラグジュアリーブランド」になるためには右ハンドル仕様車のラインアップ強化が欠かせないとの見解を示し、ポートフォリオとラインアップを充実させていくことを日本だけでなくグローバルに向けたコミットメントだと述べた。

ゼネラルモーターズ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 若松格氏

 続いてプレゼンテーションを行なった若松社長は、「私たちのグローバルな成長は、お客さまに乗りたい、所有したいと思っていただけるような優れた電気自動車のラインアップを提供することから始まります。それを新しいリリック、オプティック、ヴィスティックが実現します。キャデラックのBEVラインアップは、なんと言っても美しいデザイン、そして緻密なクラフトマンシップ、豪華なインテリア、そして驚異的な走行性能を特徴としています。また、充実したカスタマーエクスペリエンスを提供することで、キャデラックのお客さまの皆さまと良好な関係を強めながら、そこに新しいお客さまをご招待していくことに取り組んでいきます」。

「キャデラックは長年に渡り、日本では“ニッチラグジュアリーブランド”として成功を収めてきました。キャデラックの日本における物語は、110年の1915年に初めて輸入販売してから始まりました。キャデラックは常にラグジュアリーとサクセスの象徴であり、初期のころから自動車の革新とデザインのワールドスタンダードを設定してきました。近年は日本においてニッチな左ハンドルのポートフォリオを展開してきましたが、リリックをはじめとする電気自動車ラインアップを投入することで、私たちは日本におけるラグジュアリーBEVにおけるトップブランドの1つになることを目指していきたいと思っています。これらはもちろん右ハンドル仕様車であり、チャデモ急速充電器に対応することが重要だと考え、それらを実現しています」。

「キャデラックではグローバルでBEVの展開や新しいオファーを進めていますが、内燃機関の商品も引き続き販売していきます。とくに重要なのは、お客さまがどのように私たちのクルマを必要とするか、市場がどのように動いていくかといったお客さまを見て、私たちのポートフォリオをどのように展開するか決めていきます」と、キャデラックブランドの成長戦略について解説した。

2026年に発売する3列シートSUV「ヴィスティック」

 このほか、リリックに続く今後のBEVラインアップについて若松社長は紹介。2026年に発売するヴィスティックは3列シートSUVのBEVで、新しいキャデラックの象徴的なデザイン言語を採用し、胸かすくようなパフォーマンス、最新テクノロジーを満載して、一部の米国メディアでは「ベイビー エスカレード」というニックネームでも呼んでいるが、ボディサイズはエスカレードよりひとまわり小さく、一方で強烈な迫力と存在感でキャデラックらしさをアピールするという。

 同じく2026年発売予定のオプティックについては、実車を会場の別フロアで展示。コンパクトラグジュアリーSUVであるオプティックは価格を抑えつつ、キャデラックブランドが持つ価値を忠実に表現。クラス最高レベルの後席空間を備え、革新的で表現豊かな内外装のデザインを特徴とした、次世代の新しいBEV購入者向けとなるエントリーモデルと位置付けた。

 これに加え、同日公開したリリックのハイパフォーマンスモデルとなる「リリック V」も2026年に日本導入。このリリック Vはキャデラックの精神を表現すると同時に、キャデラックの絶え間ないエンジニアリング追求を体現するモデルになると説明された。

参考展示された新型バッテリEV「オプティック」
オプティックは2026年発売予定
コンチネンタル製の「Premium Contact C」を装着。タイヤサイズは前後275/40R21 H XL

 翌3月8日から発売となるリリックについては、「リリックは120年以上続くキャデラックの歴史で初となるBEVで、ブランドの未来を切り拓く極めて重要な商品です。最新のテクノロジー、優雅なクラフトマンシップ、細部に至るまで緻密なデザインなどを兼ね備えたアメリカンラグジュアリーBEVの新たなスタンダードを確立するモデルです。そして日本で発売される最初のキャデラックBEVもこのリリックになります」。

「リリックはミッドサイズのSUVで、すばらしいデザインと巧みに融合された技術を提供します。GM製バッテリを搭載することでこれまでにないラグジュアリーな体験を提供し、新たな基準を設定することを目指しています。このクルマの強みは大きく3つあり、1つめは見るものを魅了する先進的で唯一無二なデザイン、2つめはラグジュアリーBEVとしての圧倒的な静粛性と快適性、3つめは戦略的な競合力とクルマとしての高い実用性を持つ革新性を備えています」と解説した。

リリックの商品性について説明する若松社長

 最後に登壇したヴィラレアル氏は、自身が統括するアジア・パシフィックリージョン設定の大きなメリットとして、市場間でベストプラクティスを共有することができ、これによってユーザーに対してすばらしい体験を提供できると説明。ユーザーの声を聞いて要望をくみ取り、ユーザーの体験から学ぶことでユーザー1人ひとりに個別対応して喜んでもらいたいと述べた。

 お披露目を行なったリリックに続き、2026年からはヴィスティック、オプティックといったBEVをラインアップに追加することで、キャデラックがグローバルブランドとして成長していく道を歩んで日本でのビジネスが成長していくことを確信しているとコメントした。

GMアジア・パシフィック プレジデント&マネージングディレクター ヘクター・ヴィラレアル氏