ニュース

週末のF1 日本GPに向け角田裕毅選手が記者会見「いろいろなチャレンジ、プレッシャーが入り交じる最高の場所を楽しんでいきたい」

2025年4月2日 開催
「Oracle Red Bull Racing」の角田裕毅選手

 4月4日~6日に鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催されるF1日本グランプリを盛り上げるデモランイベント「Red Bull Showrun×Powered by Honda」が4月2日に東京・お台場で行なわれ、「Oracle Red Bull Racing」のドライバーとしてF1マシン「レッドブル・レーシング RB7」「ホンダ RA272」のショーランを担当した角田裕毅選手が記者会見を行なった。

 なお、Red Bull Showrun×Powered by Hondaでは、角田選手と同じくOracle Red Bull Racingのマックス・フェルスタッペン選手が「レッドブル・レーシング RB16B」、「Visa Cash App Racing Bulls」のリアム・ローソン選手が「レッドブル・レーシング RB7(Racing Bulls仕様)」とホンダ RA272、アイザク・ハジャー選手がレッドブル・レーシング RB7(Racing Bulls仕様)のステアリングを握り、ショーランを披露。

 このほかにも、2026年のグローバル販売に向けて本田技研工業が開発を進めている新型バッテリEV「Honda 0 SUV」プロトタイプ車両に角田選手とフェルスタッペン選手、今秋発売予定のホンダ「プレリュード」プロトタイプ車両にローソン選手とハジャー選手がそれぞれ乗車してパレードランを行なった。

「壁を乗り越えた実感を味わうことを楽しんでもらいたい」

角田選手

 司会者にうながされ、角田選手が自ら次戦の第3戦・日本GPからOracle Red Bull Racingに移籍してレースに挑むことを発表してスタートした記者会見は、分刻みの多忙なスケジュールが用意されている角田選手から効率的に話が聞けるよう、専用サイトで事前に集められた記者からの質問を司会者が代読するスタイルで実施された。

――Red Bull Racingに移籍して初めてのショーラン、しかも東京の公道を走るという特別な機会となりましたが、Red Bull Showrun×Powered by Hondaに参加した感想を聞かせてください。

角田選手:そうですね、今日は幸いにも雨予報だったのに晴れて、晴れの中でショーランができました。残念ながら当初予定されていたRA272に乗ることは叶いませんでしたが、RB7をレッドブルレーシングカラーの状態で皆さんの前でお披露目できて、さらに東京でF1に乗るという、僕からしたら本当に子供のころ描いていた夢物語のようでした。そしてホンダとレッドブルレーシングがコラボするラストイヤーという状況でショーランをできたことは、日本人としても非常に光栄ですし、これからのモータースポーツ界にとってよいスタートになればと思います。

――レッドブルレーシングに昇格するオファーを、いつ、どのような形で聞いたのでしょうか。また、受ける、受けないという返事をする必要があるのか分かりませんが、考える時間はどれぐらいあったのでしょうか。

角田選手:具体的なプロセスについては控えさせていただきたいのですが、最初に電話が来たのはチーム代表のクリスチャン・ホーナーさんで、「その可能性がある」ということで、ちょうど僕がレーシングブルズのシミュレーターを使うため英国に行く予定だったところでした。そこで中国GPのあとにどこにいる予定なのか、(チーム移籍という)そういうことになるかもしれないから準備しておいてほしいという言葉を聞きました。

 そこで、シミュレーターを使う予定は当初は1日だったでのすが、英国に滞在する期間を1~2日伸ばして、そのあいだにクリスチャン・ホーナーさんと対面して正式に「これからレッドブルレーシングで走ってもらう」という言葉を聞きました。僕としては、トップチームからオファーが来ることは人生でもなかなかないことだと思うので、そこはすぐに「参戦します」という返事を伝えました。

――今季の好調の要因として、ご自身で感じている成長している部分はどのようなものでしょうか。

角田選手:去年もとくにわるくはなかったのですが、去年から少しずつ練習やトレーニングでステップアップしていったなかで、僕が目標としているドライブに近付けるようにしていて、(2024年に)来年から若いドライバーたちが来る可能性があるよと言われていました。そうなった場合にチームで一番経験があるのが5年目の僕で、クルマを開発する部分にかなりフィードバックが求められることも多くなって、チームの信頼というか、リーダーとしてのポジションを確立したいと考えて、フィードバックにもいっそう力を入れました。

 それはクルマに乗っているときの自分の態度というか、わるいレース展開になったときに、本当のリーダーだったり、僕が考えるあるべきリーダーはそんなときこそチームを活気づけられるよう、これからに向けて「今回はわるかったけど次に向けてクルマを開発して将来的に強くなろう」と鼓舞していけるようなリーダーになりたかったので、そういった部分でのマインドセットで少し違いというか、クルマに乗っているときのアプローチの違いが、今年の体制になって落ちついてレースができたこと。そして、レースウィークを通じてプラクティス1からレースにかけてチームと多くのコミュニケーションを取れたことが大きな要因かなと感じます。

――今、日本国内には角田選手に憧れを感じてカートやジュニアフォーミュラで活動している若い人が男女問わずたくさんいると思いますが、彼らに夢を実現するために必要なことや、何かメッセージなどがあればお聞かせください。

角田選手:そうですね、正直なところレースは難しいですし、F1ドライバーになるというのは、僕も本当にかけ離れすぎていて、F1のことをずっと意識しながらやってきたというわけではなくて、でも、僕は競争心が旺盛な男の子だった、今もそうですけど、今やっているレースのカテゴリーで一番になることだけをずっと考えていたので、今やっていることに全力を注いでいけばどんどん道を切り拓いていくことができると思います。

 もちろん、いろいろな壁にぶつかることになると思いますけど、壁にぶつかってそれを乗り越えて、乗り越えた実感を味わうことを楽しんでもらいたいと思います。それはレースに限らず、いろいろな分野に共通すると思いますので、長い先のこと、将来のことを考えるよりは今のことに猪突猛進して、いろいろミスしながら学んでいければいいかなと思っています。

壁を乗り越えた実感を味わうことを楽しんでもらいたい。今のことに猪突猛進して、いろいろミスしながら学んでいければいいと後輩たちにアドバイスする角田選手

――すでにシミュレーターではRB21に乗ったとも聞きますが、改めてRB21の印象を教えてください。

角田選手:RB21をシミュレーターで走らせたときには、(ほかの)ドライバーが言っている難しさというものを少し感じた部分もあります。まだシミュレーター上では、めちゃめちゃ難しいクルマというより、セットアップの方向性が全然違うなと感じました。乗っていてレッドブルレーシングとレーシングブルズのマシンは挙動が少し違いますし、そういった意味では、セットアップで僕が今まで考えて使ってきたものを少し変えなくちゃいけないかなという部分もありました。

 シミュレーターを使った2日間でたくさんのセットアップを試せて、自分に合うだろうなというセットアップをある程度導き出せたので、あとは実際に鈴鹿で乗って試すだけですが、今のところシミュレーターでめちゃめちゃ苦労したということはなかったですね。

――RB21は角田選手の好みにも合うのではないでしょうか。どのような部分に強みがありそうなマシンだと捉えていますか?

角田選手:僕の好みに合っているのかどうか分かりませんが、僕としては速いマシンを作りたい。どういったクルマを僕が作りたいのかというか、そのコースに合う一番速いセットアップを導き出せればいいかなと思います。それがめちゃめちゃ曲がるクルマなら曲がるクルマに合わせるだけですし、曲がらないというかクルマの後ろを強くして、曲がりにくいけどその挙動に合わせなくちゃいけない。レース戦略でリアタイヤをもたせるために前を少し弱くなくちゃいけない状態でもそれに合わせるだけなので、セットアップはもちろん自分の方向性次第ながらも、一番重要なのはそれなのかなと。フォーミュラワンは1周をどうやって速く走るかという競技なので、それを究極に導き出していきたいと思います。

 昔からレッドブルは曲がりやすいクルマが多いと言われていて、それに合わせた部分があったので、そこからレーシングブルズのマシンに乗るようになって、前で曲がりにくいクルマになったときにそっちに合わせることに苦労することもあったのですが、それに今では慣れて、僕の中ではそちらが主流になっているところでまたレッドブルの曲がるクルマになるので、それにどう合わせられるかが重要なのかなと思いますが、昔の経験があるのでそこまで大きな心配はしていないですね。

会場には多くの記者が集まって質疑応答を見守った

――ドライバーとしてこうあるべきと肝に銘じていることは何かありますか?

角田選手:あまりないですけど、チャレンジしてチャージして、楽しむドライブ、ですかね。ミスを恐れずアグレッシブに走る、そういったドライバーです。

――F1ドライバーとして5シーズン目ですが、ほかのドライバーと比較して「ここは負けない!」という自身の強みはどういったところでしょうか。

角田選手:ブレーキングです。もちろんコーナーにもよるのですが、ブレーキングが一番の強みかなと思います。

――今回の昇格で日本人ドライバーによる初優勝に1歩近付いたと感じていますか?

角田選手:あんまり考えたことがなかったです。マシンのカラーリングが変わって、そのクルマでパフォーマンスを発揮できると確証を持っているわけではないですし、ただ、トップチームでパフォーマンスのあるクルマなので、それを最大限に出せたときにそのチャンスが巡ってくるかなと思うので、まずはFP1の限られた時間でどれだけ鈴鹿でクルマについて理解して、じょじょにじょじょにクルマのパフォーマンスを発揮させることができるかが重要だと思うので、もちろん、鈴鹿での日本GPに向けては(予選)Q3進出とトップ10を目指していきたいですが、それ以上に表彰台を目指すということは、あまり頭にはないですがそうなったらうれしいです。

――先だってのホンダのイベントで「プレッシャーをいっぱいかけてほしい」と言っていましたが、今、プレッシャーはかかっていますか?

角田選手:いや、まだ全然かかってないです。まぁ、でも無理してかけなくてもいいですよ? 本当にこれ以上ないシチュエーションだと思うので、レッドブルレーシングのマシンに乗った以上はレッドブルのプレッシャーもありますし、さらにホームグランプリで、コンビ最終年だからホンダさんとしてもホームグランプリで活躍したいでしょうし、昨年の成績もあるし、いろいろなチャレンジ、プレッシャーが入り交じる最高の場所だと思います。こんな経験、これからの人生にあるかないかだと思うので、それを楽しんでいきたいと思っています。

プレッシャーはまだ全然かかってないと笑顔を見せる角田選手。ブレーキングに加え、常に楽しもうという姿勢も角田選手の強みだと感じさせた