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ホンダ、2025年3月期決算 売上収益6.2%増の21兆6887億円、営業利益12.2%減の1兆2134億円、当期利益24.5%減の8358億円で増収減益

2025年5月13日 開催
2025年度3月期の通期決算について説明する本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏

 本田技研工業は5月13日、2025年度3月期 通期(2024年4月1日~2025年3月31日)の決算説明会をYouTube LIVEでオンライン配信した。

 2025年度3月期 通期の連結売上収益は前年同期(20兆4288億円)から6.2%増となる21兆6887億円、営業利益は前年同期(1兆3819億円)から12.2%減の1兆2134億円、営業利益率は5.6%、税引前利益は前年同期(1兆6423億円)から19.8%減の1兆3176億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前年同期(1兆1071億円)から24.5%減の8358億円となった。

 なお、2輪事業単体での販売台数、営業利益、営業利益率はそれぞれ過去最高を更新している。

ホンダの2025年度3月期の通期決算

 また、グループ販売台数は、4輪車が前年同期(410万9000台)から9.6%減の371万6000台、2輪車が前年同期(1881万9000台)から9.3%増の2057万2000台、パワープロダクツ事業が前年同期(381万2000台)から2.9%減の370万台という結果になっている。

2輪、4輪、パワープロダクツの事業別販売台数

営業利益に一過性費用の1276億円を減益要因として計上

本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役副社長 貝原典也氏

 説明会では、本田技研工業 取締役 代表執行役副社長 貝原典也氏が決算内容について説明した。

 今期の決算では、4輪車の主要生産拠点における製品販売分について、製品保証引当金の測定方法を製品を販売した時点で包括的に測定する方法に変更した影響を受け、一過性費用として1276億円を減益要因として計上。しかし、これ以降は品質関連費用の発生に伴う収益変動の影響を抑制することが可能になると解説した。

 また、主に中国における販売台数の減少により、持分法による投資損益は99.1%減の9億円となっている。

 販売台数については、2輪事業では主にアジア市場での好調によって販売が増加。4輪事業は中国を中心としたアジア市場での販売が減少した。パワープロダクツ事業は主に欧州における販売が減少要因となっている。

営業利益の増減要因。一過性費用である「製品保証引当金の測定方法見直し」の影響である1276億円を除外すると、営業利益は対前年比で3.0%減となる
事業別の売上収益と営業利益。2輪事業はそれぞれ過去最高を更新している
2輪事業における営業利益の増減要因
4輪事業における営業利益の増減要因

2026年3月期の通期見通しは売上収益20兆3000億円、営業利益5000億円、当期利益2500億円

2026年3月期の通期見通しは売上収益20兆3000億円、営業利益5000億円、親会社の所有者に帰属する当期利益2500億円と発表

 2026年3月期の通期見通しでは、グループ販売台数で4輪車を9万6000台減の362万台、2輪車を72万8000台増の2130万台、パワープロダクツ事業を3万台減の367万台と計画。

 この販売計画を背景に、連結売上収益は6.4%減の20兆3000億円、営業利益は58.8%減の5000億円、営業利益率は2.5%、税引前利益は62.8%減の4900億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は70.1%減の2500億円としている。期中の平均為替レートは対米ドルで135円を想定している。

2026年3月期の事業別販売見通し

 また、2026年3月期の通期見通しでは、米国における関税の影響について引き続き精査していくとしつつ、現時点での分析として「4輪完成車」の3000億円、「4輪部品、原材料」の2200億円、「その他」の1300億円を合算した6500億円を減益要因として計上している。

2026年3月期 通期見通しにおける営業利益の増減要因
株主還元では配当方針を変更。2026年3月期からDOE(調整後親会社所有者帰属持分配当率)を導入

5月20日に「ビジネスアップデート」を発表

2輪・4輪事業の取り組みについて

 また、決算説明会内では今後の事業展開について、本田技研工業 取締役 代表執行役社長 三部敏宏氏が説明を行なった。

 まず、安定した収益基盤を支える2輪・4輪事業の取り組みについて三部社長は解説。2輪事業では、ホンダは2000万台以上の車両をグローバルで販売するトップメーカーであり、プラットフォームやパワートレーンの共用化と圧倒的な販売台数を束ねることで他社を凌駕する低コスト体質を構築して利益拡大を実現。4輪事業ではHEV(ハイブリッドカー)で採用するハイブリッドシステムの原価低減、商品性向上などを行なって、現行モデルは従来型と比較して収益性を1.5倍まで増加。北米を中心にグローバルで販売台数を拡大している。2020年代後半にはHEVの次世代モデルを市場投入する予定としており、さらなる性能向上、コスト低減を進化させていく計画だとした。

 ホンダの企業価値向上に向けた施策では、前年に行なった2025年3月期決算説明会で発表した取り組みについて、「過去」から積み重ねてきた資本の適正化として自己株式の取得を計画。上限1兆1000億円/11億株の計画のうち、これまでに53.6%の進捗率を達成して一定程度のめどが立ったと説明。

「現在」では、前年度から自動車産業を取り巻く環境は劇的な変化を続けており、これまで以上に柔軟な対応が必要であるとの考えを示した。これまで課題となってきている4輪事業の収益性については、北米を中心にHEVの販売台数増加で収益性を改善しており、これに2輪事業と販売金融事業といった強固な事業基盤を合わせて収益力を確保していく。

「未来」については、BEV市場の成長が当初の想定以上に鈍化していることを受け、カナダでの包括的バリューチェーン構築のプロジェクトについてタイミングの見直しを実施。大型投資の延期を決定している。電動化戦略の軌道修正については、5月20日に開催を予定する「ビジネスアップデート」で詳細を発表すると予告している。

ホンダの企業価値向上に向けた施策

 最後に三部社長は「このように事業環境は不透明な状況が続きますが、ホンダは市場環境に応じた柔軟な戦略見直しを行なうことで、レジリエンスの高い事業ポートフォリオで安定した経営を継続し、企業価値向上につなげてまいります」とコメントした。

質疑応答

質問に回答する三部社長

 発表会後半に行なわれた質疑応答では、米国で実施される関税への対策について質問され、三部社長が「関税の影響としては6500億円を計上していますが、完成車製造は部品を含めて複雑に関税が決められています。完成車についてはカナダから米国、メキシコから米国、日本から米国という部分それぞれで関税を考慮して計算した結果です。部品の部分で言うとUSMC域内の部品については原産地証明を含めて精査が不十分で、今回は25%の関税として織り込んでいることを含めての6500億円です」。

「また、2輪車でも影響が多少ありまして、306億円が入っています。パワープロダクツでは243億円です。このへんを全部加味しての6500億円で、われわれはこれをボトムとして見るとこれぐらいということで、これから関税影響は刻々と変わっていきますし、都度の変化が大きいと考えていますので、4輪部品にはすでに追加関税の対象外とできる部分もありますが、今回は精査の途中と言うことで25%としています。精査が済んでいけば関税を回避できる部品もかなり出てくると思いますので、これから(通期見通しで公表した営業利益の)5000億円にどれだけ上積みしていけるかということになるかと思います。ということで、発表した5000億円の営業利益はかなり硬めに見た数字としてとらえていただければと思います」。

「具体的な対応としては、3月までにはカナダやメキシコからの輸出を促進して米国側の在庫を積み上げていくことを行なっています。短期的な社内努力として経費削減などを徹底して行なうこと、それに加えて完成車のアロケーションを最適化していくことです。『シビック』の5ドアHEVを、寄居で生産している車両を、部品もあるので6月~7月ぐらいまでは日本で生産して、それ以降は米国のインディアナ工場に移していったり、カナダのHCM工場で生産している米国向け『CR-V』を米国のELP(イーストリバティ工場)に集約していくなど、現在でもできる生産アロケーションの最適化をやっていく。さらに販売店やサプライヤーさんといったステークホルダーとの協創活動をつうじて関税影響のミニマム化に取り組んでいくということになります」。

「販売価格については他社の動向を見ながら、実施タイミングとか改定幅、対象モデルなどを考えながら慎重に判断していきたいと思っております。また、中期的な判断としては、関税措置がかなり長引くという場合には、米国内における生産能力の増強するということでいろいろなスタディをすでに始めております。まずは設備投資をしない増強として、現在米国の工場で行なっている2シフトを3シフトに変えていくとか、土日の稼働なども含めてまだ増産の余地はございます。その先には設備投資を考えるということになりますが、いずれの場合も雇用の確保、それからサプライチェーンに対する影響も非常に大きいので、いろいろな動向を見ながら適切なタイミングを見計らいながら慎重に判断していくということで関税影響に対応していきたいと考えています」と回答した。

本田技研工業株式会社 2025年3月期 決算説明会(時間分秒)