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NEXCO東日本、外環道 三郷南IC~高谷JCTの工事現場見学会を実施

2017年度完成予定。完成後は湾岸線と常磐道を約15分で接続

R&C工法で世界最大級という4連2層構造を採用した京成本線交差部の現場
2014年6月4日開催

 NEXCO東日本(東日本高速道路)は6月4日、2017年度の開通に向けて工事を進めている「東京外かく環状道路(外環)」の千葉県区間と呼ばれる三郷南IC(インターチェンジ)~高谷JCT(ジャンクション)間の工事進捗状況を紹介する報道機関向け見学会を実施した。

「東京外かく環状道路(外環)」はCar Watchでたびたび紹介している「3環状」の1つ。2014年4月25日現在の整備率は61%とのこと

 東京外かく環状道路は、「首都圏中央連絡自動車道(圏央道)」「首都高速中央環状線(中央環状線)」と合わせて「3環状」と呼ばれる一大道路事業。首都圏から他地域に向けて放射状に伸びる各自動車道と相互に連携させ、交通環境を大きく整備する「3環状9放射ネットワーク構想」として各地で道路工事の用地取得と建設が進められている。すでに北側に位置する関越自動車道・大泉JCTから東北自動車道・川口JCTを経て、常磐自動車道・三郷JCTの先にある三郷南ICまでが開通している。

 千葉県区間での事業計画は、初期計画が1969年に決定されたものの、当初の自動車専用道路を高架上に作る案に反対が出て、1996年に自動車専用道路を半地下構造にして道路両側に環境施設帯を設けるという現行方針にシフト。2015年度の完成に向けて事業が進められてきたが、用地取得などの遅れを受けて開通目標を2017年度に見直している。

 整備区間はすでに開通している三郷南ICから、京葉道路・市川IC脇に新設される京葉JCTを経て、首都高速湾岸線と東関東自動車道・市川JCTを結ぶ道路となっており、開通すると湾岸線から常磐道までが現在の約40分から15分に短縮され、湾岸線から東北道までの所要時間も約30分になると予測している。

事業計画の推移。1996年に高架から半地下に方針転換した
埼玉県と東京都の区間では高速道路に高架構造を採用。高架、半地下のどちらでも、道路の両サイドに緑地帯などを用意して環境に配慮している
高速道路と国道を同時に整備するため、NEXCO東日本と国土交通省が作業を分担。ルートはさまざまな幹線道路や鉄道などと交差している

京葉JCT

 今回の見学会は千葉県区間の南側に位置する京葉JCTを新設する工事現場からスタートした。千葉県区間は道路のほとんどといえる部分を「掘割スリット構造」という半地下で構成することが大きな特徴となっているが、それと同時に環状道路であるという基本コンセプトにより、既存の高速道路や国道、電車や地下鉄といった社会インフラとバッティングしやすいという弱点を抱えている。これにより、千葉県区間では既存の交通に影響を与えないよう、さまざまな特殊工法が用いられているという。

 最初の見学場所となった京葉JCT予定地では、京葉道路とこれをオーバーパスする国道298号はそのままにJCTを成立させるため、新しい高速道路やランプウェイなどはすべて地下を通す計画となっている。

地下空間にランプウェイのトンネルを複雑にレイアウトする京葉JCT

 地上の道路を利用しつつ地下で工事を行うため、京葉道路と国道の両方に一時的な切り替え道路を作って交通を迂回させ、その間に地下に函体を構築するという手順を踏んでいる。とくに京葉道路では、2009年12月から4年間という歳月をかけて工事を完成させたとのこと。また、今後予定されているランプウェイの工事では、複数のトンネルを組み合わせる複雑な計画となっている。

京葉道路の下に通る高速道路の函体
地下で工事を行うため、京葉道路は2009年12月から一時的に北側に迂回。2012年7月には上り車線が復旧し、2013年の12月25日に切り替え工事が完了している
高速道路、国道、京葉JCTなどが地下に建設される県道6号も大きく迂回。工事は現在も続けられている
県道6号の迂回が難しい場所では、深い位置にトンネルを掘ってランプウェイを構築。地中で工事する場合の浮力の関係から、先に上にDランプを「ハーモニカ工法」で作り、その下にAランプのトンネルを「シールドトンネル」で掘る。Dランプを支持するモルタル杭などをシールドトンネルで切削して進む計画となっている

京成本線交差部

 千葉県区間のなかには、なんと駅の真下という場所も含まれている。京成本線・菅野駅は2013年度の平均乗降数が1日あたり4128人で、付近にある学校の生徒も利用する大切な社会インフラだ。この菅野駅に対する影響を最小限に抑えるため、この場所では非開削工法の「R&C(Roof&Culvert)工法」が採用されている。名前に使われているルーフは「水平箱形ルーフ」を指し、カルバートは「ボックスカルバート」を意味する。工事では、まず菅野駅と交差する予定地の前後を掘って作業スペースを確保し、地盤を保護するために地中連続壁を設置。そこに地上にある駅舎や線路などの加重を支えるために水平箱形ルーフを貫通させ、その下の地中を、作業スペースで組み立てたボックスカルバートを、逆側から牽引ケーブルで引きながら掘り進めていくという工法だ。

京成本線交差部で使われる「R&C工法」の解説資料

 高速道路、国道、連絡路を構成する今回のボックスカルバートは、内部を3枚の壁で4つに仕切った高さ18.4m、横幅43.8m、延長9.35mという函体を4連2層で使用。R&C工法で世界最大級を誇る内容となっている。作業の進捗状況は、水平箱形ルーフの貫通が終了し、この場でボックスカルバートを組み立てる前段階とのこと。眼下の作業スペースに置かれた重機や作業員が小さく見えるほどの広大さだが、これでも予算を抑えるためにボックスカルバート2つを収めるだけに止めているということで、実際に利用されるボックスカルバートがいかに大きなものであるかがうかがえるとともに、その巨大な物体を、地中で引っ張りながら進めるという工事のスケールに驚かされた。

地下を大きく掘り抜いたR&C工法の作業スペース。白い覆いの上に並んでいるのが水平箱形ルーフ。この下に、道路などを納めるボックスカルバートが地中を牽引されて進んでいくことになる
ランプが光って警告する「列車接近警報装置」
この工区では清水建設、京成建設、東急建設の3社が共同で施工を担当している

掘割スリット構造

 当初計画では横幅40mで高速道路を高架構造とする予定だったが、予定地周辺がすでに市街地化されていたことなどから、千葉県区間では地表より低い場所に高速道路を構築する半地下構造を採用。換気と採光のため中央にオープンスペースを設ける「掘割スリット構造」は1回掘った部分を埋め戻すという手間のかかる工事のため、工費はおよそ3倍ほど必要となっているとのこと。

掘割スリット構造の基本的な施工手順
所定の深さまで「パイプクラム」という重機で掘削
コンクリートポンプ車で生コンクリートを流し込んでいるシーン。ここで施工しているコンクリートは作業を行うために必要なもので、路面となる床版の鉄筋コンクリートとは別になるとのこと
周囲の土留めをする「地中連続壁」。これは京葉道路脇で、万が一にも倒れてきたりしないよう、鉄骨を組んで補強している
掘割スリット構造の中央にあるオープンスペース

新葛飾橋

 江戸川を北側に渡った先までが千葉県区間。国道298号の2本の橋の間に建設されている「新葛飾橋」は、橋桁などは完成し、路面となる床版など高架部を構築する最終段階に進んでいる。残る大きな作業は、都道451号を挟んで三郷南IC側に建設されている「東金町高架橋」との接続。すでに送り出し構台も設置されており、交通量が少なくなる深夜に都道451号を交通規制して作業する予定とのことだ。

江戸川を渡る「新葛飾橋」
現地での作業進捗状況などについての解説
「東金町高架橋」も橋脚などの工事が進んでいる
「新葛飾橋」は左右に分かれた国道298号の間に建設されている
工事手順や使われる工法など

生コンクリートプラント

 また、千葉県区間の工事では、現場に生コンクリートを現地調達できるプラントが用意されている。生コンクリートは作られてから使われるまでの時間が短いほど混ぜ込む水の量を減らすことができ、乾燥したときの強度を高められるメリットがあるほか、離れた場所にあるプラントからミキサー車で運んでくるとただでさえ多い工事用車両がさらに増えてしまう。もちろん、このプラントに生コンクリートで使う砂や砂利などを運んでくる必要はあるが、材料を運んできたトラックは、帰り道に工事で掘った土を運び出す役割を担当するので効率が高いと説明された。

工区の一角に建設された専用の生コンクリートプラント。建物は大きく上下に2分割されており、上のフロアで砂や砂利などを保管し、混ぜ合わせて製造した生コンクリートは下のフロアに設定されたドライブスルー式の搬送路から、ミキサー車に充填されて運び出される。また、生コンクリートは使い切れないと固まってしまうので、工事では基本的に少なめの量を最初に用意し、状況を見ながら足りない分を追加発注するのだが、現場にプラントがあるとタイムラグを発生させることなく追加分が手に入るので作業効率も高まるとのこと

(編集部:佐久間 秀)