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日産、リーフの“e-パワートレーン”を受け継いだ新型商用EV「e-NV200」発表会

約8万2000km以上走るとガソリン車と逆転する低ランニングコストでビジネスをサポート

新型EVのe-NV200を挟み、日産自動車 副社長 チーフ プラニング オフィサーのアンディ・パーマー氏(写真左)と同副社長の片桐隆夫氏(写真右)の2人がフォトセッション
2014年6月9日開催

バン:388万440円~407万8080円

ワゴン:462万4560円~478万6560円

 日産自動車は6月9日、新型商用EV(電気自動車)「e-NV200(イー・エヌブイ・ニーマルマル)」の発表会を開催した。価格はバンタイプが388万440円~407万8080円、ワゴンタイプが462万4560円~478万6560円で10月に発売の予定。グレード体系などの詳細は関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140609_652089.html)を参照いただきたい。

パワートレーンをガソリンエンジンからモーターに置き換え、電気で走るクリーンな車両に生まれ変わったe-NV200。フォトセッション後にパーマー副社長が充電コネクターを急速充電ポートに接続するデモを披露
e-NV200 ワゴン Gの5人乗り。ボディーサイズは4560×1755×1850mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2725mm。リチウムイオンバッテリーをフロア下に搭載したことで増えた車両重量に対応するため、ワイドトレッド化して全車3ナンバーサイズになっている

小型商用車こそEVの得意分野

日産自動車 副社長 チーフ プラニング オフィサー アンディ・パーマー氏

 日産グローバル本社ギャラリーを会場に行われた発表会では、日産自動車 副社長 チーフ プラニング オフィサーのアンディ・パーマー氏が最初に登壇。屋内会場のステージに、排出ガスのないクリーンな走りで登場したe-NV200の前でスピーチを行った。

 パーマー氏はまず、持続可能な“ゼロエミッション社会”の実現に向けて2010年12月に100%電気自動車のリーフを発売。現在では世界で11万9000台のリーフがユーザーの手に渡り、2013年の世界の電気自動車市場で49%のシェアを占めていることを紹介。日産が市場のリーダーであるとアピールした。また、2050年には世界人口の7割が都市生活者となり、急増する自動車需要も2050年に世界で2億台まで増加するという試算があり、これは地球と人類には支えきれない数で、自動車業界は“カイゼンテクノロジー”を超えるゼロエミッションを必要としているという持論を披露。市街地を走る宅配バンやタクシーはその代表例になり、リーフの電動部品と高い積載量を誇るe-NV200が、ユーザーのビジネスに新しい価値を提供すると語った。

パーマー氏は「人類には交通手段となるモビリティが必要ですが、地球環境ではCO2の大幅な削減が必要です。北京や東京、ロンドン、ニューヨークなどの都市で生活する人はきれいな空気を求めていますが、走る喜びにも妥協しません。日産自動車だけがそんなすべての期待に応えることができるのです。これからのバン、これからのタクシーの姿であるe-NV200をご覧ください」とコメント

 日本国内での販売展開は、日産自動車 副社長 片桐隆夫氏が紹介。EVを購入したユーザーが安心して使えるよう、全国の日産販売店のうち、普通充電器はほぼ全店舗となる約2100店舗、急速充電器は半数近くとなる約990店舗に設置。普通充電器は全国で平均8km四方、東京都や神奈川県では平均3km四方に1個所以上の充電器が設置されている状況になっているという。さらに、日産を含めた国内自動車メーカー4社でインフラ整備を推進する新会社を設立(関連記事)しており、充電ネットワークが広がっていることを説明した。

 また、日産ではNV350キャラバン、NV200バネット、NV100クリッパー、ADシリーズと小型商用車を幅広く用意しており、この自社の強みである小型商用車セグメントにEVのe-NV200を追加することでラインアップを強化。より幅広いユーザーニーズに応えられるようになると強調。とくに小型商用車の分野こそ、走行距離など車両の運用方法がある程度限定され、EVが得意とする分野であると解説し、ランニングコストが圧倒的に低く、トータルで見ればユーザーにメリットを提供することが可能であり「商用車でのEVのポテンシャルは十分に高いと考えている」と解説している。

日産自動車 副社長 片桐隆夫氏
「最近では事業所に普通充電器を設置し、社員にEVでの通勤を奨励する企業も増えてきています。今回、e-NV200をラインアップに追加することにより“通勤にはリーフ、社用車にはe-NV200”というEVの新しい活用方法を提案したいと考えています」と語る片桐副社長

 e-NV200の詳しい商品性は日産自動車 日本商品企画室 リージョナルプロダクトマネージャーの東美津江氏が解説。このクルマがNV200バネットが持つ大きく実用的な荷室、良好なドライビングポジションや操作性、視認性といった基本要件を備えつつ、EVであるリーフのスムーズで力強い加速、静粛性、乗り心地のよさ、優れた経済性といったメリットの両方を持っていると説明。「日産初の商用EVとして、人、物、電気を運ぶ非常に実用性に優れたクルマです」とアピールしている。

 具体的なポイントとしては、「ビジネスの発展と環境対応を両立させるゼロエミッション」「“パワープラグ”でいつでもどこでも電力供給する“走る蓄電池”」「快適な運転性と広い室内が生み出すストレスフリー」「圧倒的なランニングコストによるコスト削減」の4点を挙げ、ターゲットカスタマーは「まずは企業や自治体で、さまざまな用途でEVに非常に高い興味を持っており、すでに実証実験や実証運行を実施。ドライバーのみなさんからは発進、巡航、加速とどのシーンでも非常にレスポンスがよいと高評価をいただいています」と語っている。

「ランニングコストは使い方や前提条件などにも左右されますが、約8万2000km以上走るとガソリン車よりe-NV200のほうがお得になります。月間走行距離では1370km程度で5年、980km程度で7年が損益分岐点になります」と解説する東リージョナルプロダクトマネージャー
日産自動車 日本商品企画室 リージョナルプロダクトマネージャー 東美津江氏

「パワープラグ」を使った新たなビジネス&レジャーの形を提案

 発表会場には、車両のパワースイッチがOFFの状態でも利用できるe-NV200独自の装備「パワープラグ(バン GX/ワゴン Gに標準装備)」の便利な使い方を提案する3種類の展示車が用意されていた。

さまざまな場所でコーヒーメーカーやジューサーを使ってドリンクを提供する「モバイルカフェ」
バルーン投光機を光らせ、ノートPCで報告書の作成などが可能な「移動工事事務所」
発電機などを用意しなくてもキャンプ場で電化製品が好きなだけ使える
バン GXのフロントマスク
バン VXは前後バンパーが無塗装になる
NV200バネットとは異なるデザインのヘッドライト。ブーメラン形状の「シグネチャーポジションランプ」はワゴン(写真)がLED式、バンがバルブ式を採用
リアコンビネーションランプは同形状だが、内部に高輝度LEDを採用
フロントバンパーにビルトインするフォグランプは、ワゴン全車とバン GX 5人乗りに標準装備。そのほかのグレードはディーラーオプションとなる
リーフと同じくフロントノーズに充電リッドを設置。2つ用意されている充電ポートのうち、左側が急速充電、右側が普通充電となる
タイヤサイズは全車185/65 R15 92H XL。ワゴンはアルミホイールを標準装備
バンは全車スチールホイールにフルホイールカバーを装着する
リアサスペンションはNV200バネットと同じリーフリジッド式だが、重くなった車重に対応するためトレッドを拡大。ブッシュ特性も変更して安定性を高めている
車名バッヂをリアハッチ左側に装着
バンの最大積載量は500kg~600kg。5人乗り仕様で定員乗車時には300kgとなる
ドアミラーやドアハンドルはバンが無塗装、ワゴンがボディー同色となる
「スライドサイドウインドウ」はワゴンに標準装備。バン GXの2人乗り/5人乗りにメーカーオプション
ワゴン G 5人乗りのインパネ。ブルー照明のデジタルシングルメーターは上側に車速とパワーメーター、下側にリチウムイオンバッテリーのバッテリー残量や航続可能距離などを表示
専用デザインのセンタークラスターパネル。リーフと同じ「EV専用カーウイングスナビゲーションシステム」をワゴンに標準装備、バンは全車ディーラーオプション
「仕事で使うユーザーは、ガソリン仕様のNV200バネットとe-NV200を日ごとに使い分ける可能性があるため」と、シフトノブは敢えてNV200バネットと同じものを採用。走行モードは通常の「D」に加え、積極的に回生発電する「B」が用意されている
右側のパワースイッチに並んで、加速力などを穏やかにして航続距離を伸ばす「ECO」モードのスイッチを用意。走行モードの2種類と、ノーマル/ECOを組み合わせて4タイプの走行パターンが設定されている
ステアリングコラム下側のスイッチ類。電動ドアミラーの調整スイッチの下にあるのは、左側がパワープラグの起動スイッチ。右側はタイマー充電をキャンセルしてすぐに充電をスタートさせる即充電スイッチ
左がボンネットフードオープナー、右が充電リッドオープナー
バン GX 5人乗りのペダルレイアウト
運転席と助手席の間に設置されたリッド付センターコンソールボックス。後方はセカンドシート用のカップホルダーとなっている
ステアリングヒーターと運転席&助手席PTC素子ヒーターは全車標準装備
パワープラグの装着車は、インパネのセンターコンソール下側と助手席下側後方の2個所のAC100Vコンセントを設置。最大負荷は1500W
ワゴン G 5人乗りのフロントシート。シート表皮はスエード調トリコット
ワゴン G 5人乗りのリアシート。3人分のヘッドレストを備える
ワゴンのシートではブルーのステッチを使い、一部がハニカムパターンとなる
バン GX 5人乗りのフロントシート。シート表皮はトリコット
バン GX 5人乗りのリアシート。中央席のシートベルトは2点式
シートは2アクションで前方に倒れる
スクエアで使い勝手の高いラゲッジスペース。バン VXは鋼板フロアとなる
バンのセカンドシートは一体可倒、ワゴンのセカンドシートは6:4分割可倒
オプションの「マルチラゲッジネット(1万2960円)」はルーフ部分以外にも、ウエストライン、フロア固定、ラゲッジの前後分割など4パターンを設定する
バン用の「ウィンドウガードバー」は左右セットで1万3577円
e-NV200はリーフの「e-パワートレーン」を流用しており、“LEAF to Home”の名称で知られるVtoH(Vehicle to Home)システム「EVパワーステーション」にも対応

(編集部:佐久間 秀)